FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 1 部
    11 簡単な漁法
    19 サヨリ掬網



     サヨリは特に走光性が強い沿岸性の魚で、ごく表層を泳ぐ。船首付近の高い位置に「ボンボリ」に入れて ローソクを点け、岸近くの静かな海で、闇夜に船をゆっくり漕ぎ、灯に寄ってくるサヨリをタモアミで 掬取る漁法は、山陰地方では古くから知られている。この魚はあまり密度が高くないので、サヨリ掬網は、 サヨリの特性に最も適した漁法とみなせる。

     この漁法は、基本原理をそのまま残し、細部を近代化して、いくつかの漁村では少数ながら、今でも残っている。

    No.1
    [No.1: image11-19-001.jpg]

    No.2
    [No.2: image11-19-003.jpg]

    No.1の左側2隻とNo.2の手前の船はサヨリ掬網漁船である(1995年仙崎)。

     これらの写真が示すように、船首の前の外側にFRP製のドラムカンのような筒を付ける。

     その上約1m前方の高い位置に黒い笠で被った弱い電球(2w程度)をつける。

     船首のできるだけ前(No.3では、抵抗器のすぐ後)に仮の柱を立て、機関室付近にあるマストとの間の 約3m高さに索を渡し、それから網をたらす。この網地は細い網糸で編まれているので、写真では 写っていても分かりにくい。



     No.3
    [No.3: image11-19-005.jpg]

     漁場に着くと、掬い手は長い柄のタモアミを持って船首の張出に入り、そこで操船しながらサヨリを掬う。

     変速は、張出の右にある2つのレバーで行う。船尾にある舵から索を取り、張出の前端にある滑車を通して 舵に結ぶ。この索で操舵をする。

     張出の後ろに抵抗器があり、それによって灯の明るさを調整する。

     海面直下を灯に近づいてくるサヨリを見つけると素早く掬いとる。船の中心線に張った網は、 掬い揚げたサヨリが反対側の海に落ちないようにするためである。

    No.4
    [No.4: image11-19-007.jpg]

     操舵のための索が走っているのを示す。

     No.1に示した2隻の船はかなり古いが、この船は新しい。素潜りの道具を乗せている。操舵室は2段、 ワーピングエンドには挟みドラムを備えている。中央の高い位置には集魚灯があり、漁期に応じて種々の漁業に 従事できることが分かる。

     この船を見る限りでは、サヨリ掬い網は、一本釣と刺網以外には使えないような古い船を用いて老人だけが 行う伝統漁法でない可能性が考えられる。

     No.2に写っているもう1隻の船は棒受網の装備を持つ。しかし、提灯網を行う。これも小規模ながら 存続している伝統的漁法とみなせるだろう。


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