FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 1 部
    12 釣漁法
    17 カツオ竿釣操業



    現在、カツオは米式巾着網でも漁獲される。釣手の確保が次第に困難になってきたので、この漁法は約30年前に 導入されたが、あまり普及せず、漁法の主流は依然従来から太平洋岸各地に伝わる活餌を用いた竿釣である。

     これは1997年に気仙沼から近海カツオ船に乗船した際に撮影した写真である。

      活餌の積み込み

     カツオを釣るためには活餌を使わなければならない。質の良い餌を確保するために、経験の豊富な人がその 手配に当たる。上手に手配できるかどうかが、船の稼働率を支配する。

     No.1からNo.9までは、近くの定置網で漁獲し、No.2からNo.7に示す生簀で蓄養しているカタクチイワシを竿釣船に 移す写真である。

     活きたカタクチイワシを傷めないために、バケツで掬い揚げ、リレー式に活魚槽に移される。

    No.1
    [No.1: image12-17-001.jpg]

    No.2
    [No.2: image12-17-003.jpg]

    No.3
    [No.3: image12-17-005.jpg]

    No.4
    [No.4: image12-17-007.jpg]

    No.5
    [No.5: image12-17-009.jpg]

    No.6
    [No.6: image12-17-011.jpg]

    No.7
    [No.7: image12-17-013.jpg]

    No.8
    [No.8: image12-17-015.jpg]

     No.8は活餌槽部(船首楼と船橋の間)を船首楼から船橋に向けて撮影した写真である。この写真の左舷に沿った 部分とNo.15からNo.17に見られるように活餌槽の水温が上がらないように上にはテントが張られる。

     画面右端には餌揚げ用のリフトが写っている。操業中には、見習の乗組員が活餌槽から餌を掬い揚げ、 舷側にいる餌撒き手に届ける。餌の撒き手は、かなり熟練した乗組員が当たる。

    No.9
    [No.9: image12-17-017.jpg]

     餌を積むと一定の時間間隔で水温等が計られ、死んだ魚を捨て餌を与える。

     以前には活餌槽の水は船の前進を利用して循環させていたが、現在では冷却した海水をポンプで循環させ、 赤色の照明で魚を落ち着いた状態で泳がせるように変わった。

    漁船

     カツオ竿釣に従事する漁船を、No.10からNo.12及び操業中の船の写真に示した。 

        舷側に並んでカツオを釣るので、乾舷は低い。 探魚はマスト上端近くの見張台から肉眼で行われ、 乗組員の大部分が船橋の上に並び、海面を見張る。そのために高い位置に有る見張台と船橋の上にテントを張ってある。 船首は前方に突きだし(No.12)、舷側に沿って撒水パイプラインがある(No.15、No.25)。これらが外から見た カツオ竿釣船の特徴である。これらの特徴は以前から変わらない。

     探魚は昼間に限られ、夜間は港と漁場の間の往復か漁場内での移動か、漁場内で漂泊する。夜明け少し前から 全員が起き、日没とともにほぼ全員が寝るのがカツオ竿釣船における乗組員の活動パターンの特徴である。

     できるだけ多くの釣手を確保し乗組ませることが、カツオ竿釣船の特徴である。幹部の乗組員は船橋とその 後方の水線上の船室に居住し、大部分の釣手は機関室の後方水線下の船室に居住する。この居室では、各人の ベッドで通路に面するのは頭の部分であり、談笑できるのは食堂だけである。

     カツオ竿釣船では、外形と活動パターンは以前と大差ないが、内部は近代化されている。

     主機関が中・高速ディゼルに変わり、船橋にある計器類はほとんどが電子化されている。中でもカツオ船 独特なものは、短い波長の電波を使う「鳥見レーダ」である。しかし、このレーダの外見は普通のレーダと 変わりない。カツオの分布は水温と関係が深いことはよく知られているので、人工衛星から受信した水温分布が いつも表示され、コースレコーダには一定の時間間隔で位置の他に水温が表示される。

     

    No.10
    [No.10: image12-17-019.jpg]

    No.11
    [No.11: image12-17-021.jpg]

    No.12
    [No.12: image12-17-023.jpg]

    No.13
    [No.13: image12-17-025.jpg]

    No.13 は船尾から写した写真である。幅が広いことが分かる。ブルワークは低く、それに並んだ黒い点は 撒水ノーズルである。自動釣機が並んでいる(釣竿は外してある)。

    No.14
    [No.14: image12-17-027.jpg]

     自動釣機の写真である。自動釣機は約30年前から考えられていた。しかし、その性能は平均の0.7人前にしか 相当しないというのが、乗組員の間で定説になっている。したがって、釣手不足であけておくよりは、 釣機を設置して少しでも漁獲を揚げるというのが、基本的な考え方であり、漁獲が最も少ない船尾と、 ときには舷側中央部に設置される。(どの部分が最も釣れにくいかは、根拠地によって定説が異なる。たとえば、 船尾は船首に次いでよく釣れるという考え方が普及しているが、かならずしもそうでなく、この部分に 自動釣機を設置している船が多い)。以前の釣機(ファイル「カツオ一本釣」No.13)に比べると改良された 跡がみられるが、そででもまだ釣手にはかなわない。人間に及ばないにしても、全面的に人間に置きかえる という考え方が日本ではみられない。

    No.15
    [No.15: image12-17-029.jpg]



     近海カツオ竿釣船は、春先からカツオの回遊に従って根拠地を次第に北に移すが、沿岸の小型船は周年地元を 根拠とする。No.15はその一例である。

     船ははるかに小型であるが、先に記したカツオ竿釣船の特徴はほとんど残っている。

    操業(自船)

     カツオ竿釣の好漁場は、特定の水温とその分布の海域に限られる。したがって、探魚・操業中には僚船に接近する ことが多い。しかし、船間には申し合わせがよく守られ、他船との間でトラブルを起こすことは少ない。

     No.16からNo.20までは、自船の操業写真、No.21からNo.30までは操業中の僚船に接近したときに撮影した写真である。

    No.16
    [No.16: image12-17-031.jpg]

    No.17
    [No.17: image12-17-033.jpg]

    No.18
    [No.18: image12-17-035.jpg]

    No.19
    [No.19: image12-17-037.jpg]

    No.20
    [No.20: image12-17-039.jpg]

     この船は左舷で釣る。どちらの舷で魚を釣るかは船によって異なるが、左舷で釣る船が多い。

    No.16  他の船が付近で操業しているのが写っている。複数の船がこの程度接近して釣ることは珍しくない。

     左から  左舷手前には撒水ノーズルの配列(舷側に並ぶ黒い点の列)とそれから撒水している様子が分かる。 その先の手摺で囲まれたのは、餌の撒き手(一番左の白いヘルメットとカッパの人)が立つスダンドである。 それと続くタンクは活餌を一時貯めておくタンクで、リフト(No.8の右端)で上げられた活餌はパイプ (やや左下がりに写っている白いパイプ)で自動的にこのタンクまで流れる。

     No.17右から  右舷には釣った魚が落ちないように低い網を張ってある。右舷ブルワークトップに並ぶ黒い点は、 釣り手が活餌を一時手元に貯めておく窪みである。右から3人目の釣り手の位置から下に降りるように見える 黒い構造が活餌リフトである。左から4人目が活餌の撒き手で、リフトからこの人との間に活餌を送る パイプが見られる。

    No.18  海水は舷側に沿ったパイプから数メートル先の海面に吹き付けられる。釣り針はその吹き付けられる 付近に上から降ろされる。この様子はNo.26の方が分かり易い。

     釣上げられたカツオは、甲板上に張られたテント(水色)に落ち、その下端に沿う樋を流されて 甲板中央に運ばれ、海水を張った魚蔵(往航中は活餌槽として使われる)に落とされる。

    No.19  ファイバーグラスロッドの釣竿はよく撓む。紺色のカッパを着た乗組員は釣り手の手元の 活餌溜めに餌を配っている。

    No.20 釣れている間、カツオ魚群は船を回っている。

    (他船)

    No.21からNo.30までは、操業中の他船に接近したときに撮影した写真である。

     先の船体構造と操業に関する説明を参照すればわかりやすい。

    No.21
    [No.21: image12-17-041.jpg]

    No.22
    [No.22: image12-17-043.jpg]

    No.23
    [No.23: image12-17-045.jpg]

    No.24
    [No.24: image12-17-047.jpg]

    No.25
    [No.25: image12-17-049.jpg]

    No.26
    [No.26: image12-17-051.jpg]

    No.27
    [No.27: image12-17-053.jpg]

    No.28
    [No.28: image12-17-055.jpg]

    No.29
    [No.29: image12-17-057.jpg]

    No.30
    [No.30: image12-17-059.jpg]

    撒水と操業中の様子はNo.26が分かりやすい。

     連続して釣れている間でも、魚群の行動に合わせて、小刻みに前進をしたり、旋回をする様子が船尾に おこっている波の様子を注意すればわかる。

    その他

     恵比寿様と考えられる像である。

     普通は恵比寿様はタイを腋下に挟んだ像である。しかし、カツオ漁業の根拠地ではカツオにまたがっている。

    No.31
    [No.31: image12-17-061.jpg]

    No.32
    [No.32: image12-17-063.jpg]


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