FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 1 部
    14 刺 網
    11 刺 網
    11−16 揚網装置/ネットホーラ




     ネットホーラは、刺網漁業における海上労働の大部分を占める揚網作業において、網の揚げ始めから揚げ 終わりまで、ほぼ一定の速度と力で作動される。簡単な機構の機械で十分であり、その導入は早かった。 それによって乗組員の労働は大幅に軽減され、操業の効率は向上した。

     刺網漁業は種々の規模で行われ、漁法の詳細と海況・気象は各地で異なる。自分の好みに合った機械で なければならないという漁師の気質と作りやすさから、同じ作業をする機械であるが、地方における需要に 応じて全国各地で作られることが多く、形は変化に富む。しかし、ネットホーラはその機能によって次の 3つに大別される。その第1の型は、沈子綱を揚げる機械である。第2の型は、網を開いたまま揚げる機械である。 第3の型は、網を棒のようになったまま揚げる機械である。この型が最も多い。

     第1の型は主に流網用に多く、第2の型は北日本に多い。第2と第3の型のものは、動力で動くドラムを越して 網を揚げる。これらの型では、大きな力で網を揚げられないように見るが、船の動揺や網が海底障害物に かかることによって、網に突如大きな力がかかると、網をスリップさせて、その衝撃を避けられる。 漁獲物が刺さったまま網は棒状になってネットホーラのドラムの上を通るので、漁獲物は傷みやすいように 考えられるが、クルマエビ漁業でもこの型のネットホーラが使われる。

     また、この方式では、次のような利点がある。漁獲物を網から外したり、小さなトラブルのために、 揚網速度を落さなければならないときでも、ネットホーラの回転をそのままにしておき、網を引く力を 加減すれば、揚網速度を変えられる。

     船上において使用する機械は、出港から入港まで手入れをしなくてよく、大きな衝撃を回避して、 漁具に影響を与えないように、また操作が簡単なように考えられている。

     初期の無動力から、動力伝達方式は、シャフト(ロッド)―ベルト方式を経て油圧方式に変わり、 近年では電動型が増えてきた。

     材質は木造から鋳鉄製を経て、軽合金鋳造まで種々のものが見られる。

    No.1
    [No.1: ft_image_14_11_16/image001.jpg]

    No.2
    [No.2: ft_image_14_11_16/image003.jpg]

     No.1とNo.2は、沈子綱を揚げるネットホーラの写真である。いずれも、流網を揚げるのに使われる。 船首楼のすぐ後の左舷がわに設置される。No.2に示す装置では網地を巻き込まないようにガードがついている。

    No.3
    [No.3: ft_image_14_11_16/image005.jpg]

    No.4
    [No.4: ft_image_14_11_16/image007.jpg]

    No.5
    [No.5: ft_image_14_11_16/image009.jpg]

    No.3からNo.5までは、網を広げたままで揚げる型で、北海道における底刺網に用 いられる。船橋の前の右舷がわに設置される。No.19に示すネットホーラもこの型であるが、左舷がわに設置 されている。北洋においてニシンの底刺網漁業に用いられたネットホーラもこの型であった。

    No.6
    [No.6: ft_image_14_11_16/image011.jpg]

    No.7
    [No.7: ft_image_14_11_16/image013.jpg]

    No.8
    [No.8: ft_image_14_11_16/image015.jpg]

    No.9
    [No.9: ft_image_14_11_16/image017.jpg]

    No.10
    [No.10: ft_image_14_11_16/image019.jpg]



    No.11
    [No.11: ft_image_14_11_16/image021.jpg]

    No.12
    [No.12: ft_image_14_11_16/image023.jpg]

    No.13
    [No.13: ft_image_14_11_16/image025.jpg]

    No.14
    [No.14: ft_image_14_11_16/image027.jpg]

    No.15
    [No.15: ft_image_14_11_16/image029.jpg]

    No.16
    [No.16: ft_image_14_11_16/image031.jpg]

    No.6からNo.16までは、棒状になった底刺網をそのまま揚げる型のネットホーラを示す。なお、フォールダ 「整理」の後半と「操業」に示されるネットホーラの大部分はこの型である。日本各地において見られる。 右舷船首付近に設置される。No.10からNo.15に示す石川県におけるものは、船首の先から船外にはみだし、 船体に比べて大きい。No.15に示されるネットホーラのドラムの外径は1mを越える。

     ドラムの型は、No.8とNo.11に示すように、断面がV字型から、No.6、No.7、No.13、No.14に示すように幅の 広いものまで変化している。

     底刺網、特に三重網はからみやすいので、No.7では揚がった網を置く場所にはキャンパスを敷いてある。

    No.17
    [No.17: ft_image_14_11_16/image033.png]

    No.18
    [No.18: ft_image_14_11_16/image035.jpg]

     No.17は’70年代の始めに山口県の日本海側で撮影した。ベルト駆動で、手造りらしい。

     この地方において’50年代に盛んであった冬期の大羽イワシ流網では、この型のネットホーラが使われていたが、 ドラムは大きく、その上に人が立って踏みつけ、揚網速度を調節していた。網は漁獲物が刺さったまま港に 持って帰り、漁港の岸壁は網からイワシを外す人で賑わった。

     No.18は、木製のネットホーラの後に、網を引くための水平に並んだドラムが加わる。自動車の古い部品を使う。

    No.19
    [No.19: ft_image_14_11_16/image037.png]

    No.20
    [No.20: ft_image_14_11_16/image039.jpg]

    No.21
    [No.13: ft_image_14_11_16/image041.jpg]

    No.22
    [No.14: ft_image_14_11_16/image043.jpg]

     No.19からNo.22までは、網を揚げた後で、後方に送るパイプシステムを示す。このシステムは’70年代前半に 各地に広がった。これらの写真に示すものには動力はないが、フォールダ「整理」の後半に示す写真では、 網を船尾方向に引く動力プーリが付加された。左舷がわにあるか右舷がわにあるか等は船によって異なる。

     No.22はNo.21の拡大である。左舷に沿ってある2本の棒は、大きな棒受網を使うために広げるのに用いる。 右舷前端近くにネットホーラのあることから、棒受網漁業と底刺網漁業の兼業船であることが分かる。

     


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