漁業技術の画像集・FishTech
著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
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第 2 部 15 底曳網 15 明石における底曳網漁船 明石海峡から神戸沖にかけて、船尾に高い櫓を組んだ漁船を見かける。この船は次の2点で特殊である。 その1つは、曳索の巻取り法であり、もう1つは離底曳き―中層トロールでなく、網の重量は海底を曳く グランドロープにもたせ、何らかの方法で網裾を海底から離して曳く―をする可能性である。 同じように船体の割りには大きな櫓を船尾に組んだ底曳網漁船は、瀬戸内海北岸に沿って見られる。 しかし、それらは機関室の後の甲板がもっと広く、曳索は機関室の横にあるリールか船尾にあるドラムに 袖網とともに捲くという普通の操業法を取り、着底曳きを行う。 一部の船では、機関室より後部の作業ができる甲板が狭いので、曳索を捲き込むドラムを機関室より前に 据え付け、船尾から上がる曳索は、操舵室の上を越えてそのドラムに捲き込まれる。 離底曳きに関して、このようにグランドロープを着底させ、フットロープを海底から浮かせて曳く可能性は、 1960年代前半にベーリング海においてソ連の大型トロール船によって行われていた可能性は指摘されている。 それと同様の考え方の曳網法が、沿岸の小型船でも行われていたことは特記に値する。
[No.1: ft_image_15_15/image001.jpg]
No.2
[No.3: ft_image_15_15/image005.jpg]
[No.4: ft_image_15_15/image007.jpg]
No.5
船首には模様が描かれている。船は近代的であるが、このような古くからある習慣は残っている。
[No.6: ft_image_15_15/image011.jpg]
No.7
No.8
No.9
No.9に示すように船首の後方約1/3のところに鉄パイプで作った枠がある。その少し後方に3基のリールが並ぶ (No.9では影になって見られないが、No.7とNo.8では白い機関室の前に見られる)。向かって右の2基は小さく 曳索巻取り用である。その後に機関室と、左右を船の幅一杯に取った操舵室がある。そのすぐ後に高い櫓がある。 そして、船尾に低くて丈夫な枠がある。それから前に向かって支柱がでて、高い櫓を支える。機関室より 後部の構造―特に櫓周辺のパイプの枠組み―はNo.1とNo.2が分かり易い。
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No.7の船は、幅の狭い縦通材を張り合わせて作られている。この構造の漁船は、他の地方を含めこれ以外は 見られなかった。 先に記したような曳索の捲き方は不自然である。したがって、当然他の様式で曳索を捲き込む船も見られる。
[No.10: ft_image_15_15/image019.jpg]
No.11
No.12
No.10はNo.13の右から2隻目の船である。
[No.13: ft_image_15_15/image025.jpg]
No.14
No.15
No.16
No.17
No.18
ほとんど浮子のついていないロープ・網地・その縁綱から下がるロープ(白い)があり、黒と白のボビン らしい列がある。 No.18によれば、網裾にはこのボビンらしい列は等間隔で走る太い針金によって黒いボビンの列に結ばれる。 一方が着底し他方が網裾に付けられるとすれば、底から支えられて離底曳きをしている可能性が考えられる。 しかし、これは船の近くの廃材置き場における写真である。この黒いボビンの列は他の写真では見られない。 従って、網裾から伸びる白いロープの列から考えると現在も離底曳きをしているが、方式が変わった可能性と 漁期によって調整法が変わる可能性が考えられる。 網口を広げるには太い鉄棒のビームを用い、網裾にはチェーンを付ける。これらは、No.3、No.6および No.17以外では見分けられない。その本数は底質と対象魚種によって変えられる。離底曳きの可能性とこの 構造は矛盾するように見えるが、大都市の近くであることと、潮流が早い漁場で行われる底曳網漁業である ことを考えれば理解できる。 網が吊られているほとんどの写真に見られる特徴の1つは、コッドエンドには「エビトロール」のコッド エンドに見られる「サメヨケ」によく似た房が一面についていることである。ここでは、エビトロールと異なり、 サメの食害によってコッドエンドが破られる可能性は考えられないので、他の目的のためだろう。
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