FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 2 部
    17 トロール
    14 スリミ工船の試験操業



     これは大型スリミ工船の建造が盛んだった頃の試験操業の際に撮影した漁労甲板上の作業の写真である。

    No.1
    [No.1: ft_image_17_14/image001.jpg]

     スタンガントリー付近から前方を写した写真である。すなわち、船橋の後面と漁労甲板が写っている。

     船橋は漁労甲板の4層上にあり、360°を見渡せる。その後面には、後方(写真では手前)の漁労甲板における 作業を見ながら操船できる装置がある。

     3層目の後面外側中央にウインチ集中コントロール室がある。これは天井と足元を含め透明な窓で囲まれ、 この中における作業は船橋から見えるし、ここに立ったままでスタンガントリーから、足元にあるトロール ウインチ周辺まで見渡せる。

     トロールウインチの直径は大きい(ウインチの前の人物と比べると大きさが分かる)が、幅はあまり広くなく、 センタードラムと両端に十分な幅をとってある。

     1層上の両端にウインチがある。これは、最初に袖網と身網を右舷のinner bulwarkの内側に曳込み、次に左舷の inner bulwarkの内側に曳込むためである。

    No.2
    [No.2: ft_image_17_14/image003.png]

     船橋右隅の写真である。左が前方、右が後方になる。前に向かってチャートテーブル、右舷に向かって航跡 記録用のXYプロッター、後に向かって魚探と網口のテレメータ(一般にネットレコーダと呼ばれるが、これは 商品名である)の記録器がコンソルに納まっている。当時はカラーCRT表示でなく、湿式記録紙を使っていた。

     航跡プロッターがあるのは、海底地形に応じてコースを変えながら網を曳く方法が当時すでに取られていた ことを意味する。

    No.3
    [No.3: ft_image_17_14/image005.jpg]

     これはNo.2の右側に続く写真である。すなわち、後方に向かってやや左寄りの部分の写真である。さらに1台の 魚探があり、その右は漁労甲板を見ながら、主機関の制御を含む操船用コンソルがある。投揚網の際にはここ から操船する。

    No.4
    [No.4: ft_image_17_14/image007.jpg]

     中層トロールが本格的に使われる以前であったが、ソナーを装備していた。PPI表示方式のカラーソナーが 開発されたのは、遥か後で、当時のソナーは反射体までの俯角・距離・方位を計測し、必要ならば湿式記録紙に 記録を取る方式であった。

    No.5
    [No.5: ft_image_17_14/image009.jpg]

    No.6
    [No.6: ft_image_17_14/image011.jpg]

    No.7
    [No.7: ft_image_17_14/image013.jpg]

    漁具の積み込み No.7によれば袖網の長さが分かる。

     いずれもスタンランプ上端付近から前に向かって撮影した。

    No.8
    [No.8: ft_image_17_14/image015.jpg]

     右舷スタンランプ上端付近からスタンランプを見下ろして撮った写真である。右がスタンランプに続き、左が 海である。右横風を受けているので、左の袖網しか写っていない。

     網引出し用滑車に吊っていたコッドエンドを海中に落とすと、航走によって網は引き出される。袖網の端まで 引出されると、一旦網を止めて、網が正常に開いているかどうかを確かめる。

    No.9
    [No.9: ft_image_17_14/image017.jpg]

     網が正常に開いていれば、net pendant(日本では、なまってペンネントと呼ばれる)を繰り出す。この net pendantが繰り出される間は、片側2本のワイヤがトロールウインチのドアムからトップローラまでの間を走る。 しかし、その時間は短い。次いでhand ropeが繰り出されるようになると、それは1本になり、otter board pendantがくると、この写真に示すように2本になる。

     この間に時間は短く、ワイヤの動きが速いので、その変化を段階ごとに追って示す写真は撮れなかった。

     この船では、トップローラが左右に動くようになっている。この写真では横風を受けてテスト中なので、 トップローラは中央に寄せてある。

    No.10
    [No.10: ft_image_17_14/image019.jpg]

     ここで繰出しを止める。



     スタンランプの上端で網が擦れないようにするために、大きなローラがある。その前に溝がある。これは、 揚網作業を始める前に予め数本のストロープを入れておくためである。

     この船より後で建造された船では、スタンランプ付近で作業をしている人がスタンランプから打ち込んだ波に さらわれて海中に転落するのを防ぐために、太い鉄格子で作られたスタンゲートドアが付けられた。

    No.11
    [No.11: ft_image_17_14/image021.jpg]

    otter boardを取りつけ、所定の長さのワープを繰出して投網が終了する。

     ここで写っているのはスタンゲートドアでない。右はスタンランプ左面の外側、右はスタンランプ右面の内側である。

     このオッターボードを取り付ける際に、それぞれにウインチから伸びるワイヤを運び、連結する作業だけが人力で 行われる。漁具が大きくなるに従って、金具類が大きくなり、それらを人力で扱える大きさに留めておくためには、 材質から考えなければならなくなってきた。

     人物と比べると、オッターボードやトップローラの大きさが分かる。

     これより最後までの揚網中の写真は、船橋後面より後方の漁労甲板を見下ろして撮影した。すなわち、手前が船の 前方、遠くが後方になる。なお、揚網中の写真では、写っている人物と比べると、網の大きさが分かる。

    No.12
    [No.12: ft_image_17_14/image023.jpg]

     曳網中は左舷よりネットテレメータの受波器を下げている。写真では、向かって右の通風塔の後ろに水平に写って いるのが受波器を吊るブームである。水中雑音を避けるために、これを下げるブームは長く、最も左(写真では 向かって右)まで写っているNo.13とNo.14でも端までは写っていない。

    No.13
    [No.13: ft_image_17_14/image025.jpg]

     揚網は投網と反対の順に行われる。網が海底から離れると、風のために船は自然に回頭し、波(=風)を船尾から 受けるようになることが分かる。

    No.14
    [No.14: ft_image_17_14/image027.jpg]

     head ropeの浮子が海面に現れる。

    No.15
    [No.15: ft_image_17_14/image029.jpg]

     袖網の先端が漁労甲板に上がってくる。

    No.16
    [No.16: ft_image_17_14/image031.jpg]

    No.17
    [No.17: ft_image_17_14/image033.jpg]

     袖網をトロールウインチの前一杯まで曳き揚げる。次いで身網の前の部分を左舷がわのinner bulwarkの内側に 曳込む。これにはNo.1において漁労甲板の1層上の向かって右に写ってウインチが使われる。

    No.18
    [No.18: ft_image_17_14/image035.jpg]

    No.19
    [No.19: ft_image_17_14/image037.jpg]

    次いで右舷がわに曳込む。

    No.20
    [No.20: ft_image_17_14/image039.jpg]

     ストロープを懸け直し、前の鳥居型マストから吊られたフィシングブロックを通してトロールウインチの センタードラムによって網をさらに曳込む。

     この各段階の作業間のストロープ架け替えだけが人力で行われる。すなわち、スタントロール化によって労働は 軽減され、時間は短くなったものの、漁具の大型化によって扱わなければならない用具が人間が扱える大きさの 限界に近づきつつあった。

    No.21
    [No.21: ft_image_17_14/image041.jpg]

     後の鳥居型マストに吊られたブロックによってコッドエンドを吊上げると、コッドエンドの末端は、 スタンランプの少し前方にあるflap hatchの上にくる。flap hatchを開けて、処理甲板の最後部にある魚溜まりに 漁獲物を落とす。


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