FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 3 部
    19 巻き網
    13 日本におけるアメリカ式マグロ巾着網漁船



     カツオ竿釣漁業は魚価の低迷・人件費の高騰と若手乗組員の確保困難のためにその存続が危ぶまれている。 その解決策の1つとしてアメリカ式の巾着網漁船の導入が浮かび上がった。この写真はその一例である。

     基本型はアメリカ式の巾着網船であるが、細部は日本的になっている。

    No.1
    [No.1: ft_image_19_13/image001.jpg]

    No.2
    [No.2: ft_image_19_13/image003.jpg]

     No.1は船首から中央まで、No.2は船尾から撮った写真である。約1,000トンの船であるが、乗組員は少なく、 居住区は前方にあり、甲板上には1層だけである。表層を遊泳する魚群の探魚には海鳥でも捕捉できる特殊な レーダが用いられる。しかし、カツオ竿釣漁船におけると同様に、目視も重要であり、メインマストの上端は 見張台になっている。

     本来のアメリカ式の巾着網船では、居住区の上面は、ヘリコプターを搭載するために平坦になっているが、 日本では搭載しないので、煙突を含む種々の構造物が見られる。

    No.3
    [No.3: ft_image_19_13/image005.jpg]

     船橋は甲板上2層目にあり、その部分だけが一段高くなっている。その上は全員が見張できるような構造で、 その中央で操船できるようになっている等、カツオ竿釣漁船の構造を留めている。

     アンテナが多いのも日本漁船の特徴である。(左舷外側より)

    No.4
    [No.4: ft_image_19_13/image007.jpg]

     船尾部の構造はアメリカ式の巾着漁船に近い。斜めになっており、skiffを引き揚げてある。skiffは本来の ものと似ており、海面に浮かぶ浮子の列を乗り切れるように、キールはソリになり、スクリューは格子で被われ ている。操舵部を囲ってあるのも日本的である。

    No.5
    [No.5: ft_image_19_13/image009.jpg]

     日本船では網は大きく、その重量は排水トン数の約1/3を占める。しかし、この船の網は船体の割りに小さい。 パワーブロック用のブームには、本来はほとんど何もついていないが、ここでは多数の滑車がついている。

    No.6
    [No.6: ft_image_19_13/image011.jpg]

     パワーブロック用の他にも2本のブームがあり、省人化が進み多数の油圧モーターをパースウインチの前 (No.8とNo.10に見られる)で集中的に制御できるようになっている。

    No.7
    [No.7: ft_image_19_13/image013.jpg]



       skiffを示す。操舵用囲の後方は主機関である。大きく剥き出しになっている。キールはソリになっており、 スクリューは太い格子で被われている。
    No.8
    [No.8: ft_image_19_13/image015.jpg]

     中央部を左舷外側から撮った写真である。左端にはパースダビット、中央左寄りに軸が船首尾方向に走る 3軸のパースウインチがある。その構造は本来のアメリカ式のものと近い。網内の魚群の動きを制御するための speed boatがこの位置に搭載されているはずであるが、その代わりにskiffに近い構造の補助艇が見られる。

     メインマストの基部には、多数のパイプとワイヤーが走り、多数の油圧モーターが使われていることが分かる。 それらは、パースウインチの左に見られる集中制御コンソルで制御される。(船首は左)

    No.9
    [No.9: ft_image_19_13/image017.jpg]

     パワーブロックを吊下げるブームの構造を示す。左下に見られるのは、FAD (Fish Aggregating Device)である。 この漁法で漁獲が最も多いのは、木付きの魚群からである。漁場に到着すると流木を探し、それにラジオブイを 付けて流しておき、魚の集まり具合をときどき調べ漁獲する。その他にもいくつかのFADを流す。(船首は左)

    No.10
    [No.10: ft_image_19_13/image019.jpg]

     パースウインチを示す。(船首は左)

    No.11
    [No.11: ft_image_19_13/image021.jpg]

     パースダビットの構造を示す。これには大きな力がかかるので、頑丈に作られている。その後(船首尾線上)の 薄緑色のスタンドは油圧ウインチ類の集中コントロール用のコンソルである。ここで総てのウインチは一人の 熟練した乗組員によって制御される(左舷外側から撮影した写真である)。

    No.12
    [No.12: ft_image_19_13/image023.jpg]

     旋網ではトラブルなしに網を扱えるかどうかは潮流によってきまる。そのために漁労作業中に操船する船橋の 上には電子式の潮流計がある。

    No.13
    [No.13: ft_image_19_13/image025.jpg]

     位置はNNSSで計られる。(当時はGPSがなかったので、これが最新式の船位計測装置であった)。

    No.14
    [No.14: ft_image_19_13/image027.jpg]

     FADを示す。(船首は右)


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