FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 4 部
    50 その他
    11 捕鯨船



     下関は南氷洋捕鯨の基地の一つであった。しかし、南氷洋捕鯨から帰港した船は、直ちにドックに入り、 保守・整備が終わると北洋捕鯨に向かうので、滞在期間は短かった。

     当時はいわゆるオリンピック方式で漁獲量が決められていた。これは、総漁獲量を決め、各船団が競争して 漁獲をし、その総計が所定の値に達すると全船団が一斉に漁獲を打ち切る方式である。

     南氷洋捕鯨は大手水産会社の中で、トロールとともに最も重点を置かれた部門の一つであり、他の船団よりも 良い成績を上げるために、毎年船団は入港するとその漁期に考えたように改装される。したがって、各社とも 秘密にしていたところが多く、部外者が細部の写真を撮ることはほとんど不可能であった。その後、急速に この状態は終わり、秘密はなくなったが、それとともに、船はほとんど見られなくなった。

       この写真は、キャッチャーボートが調査捕鯨として残っている期間に、機会を見て撮影したものである。

     No.1はキャッチャーボートの写真である。全体が分かり易い方向からの写真がないので、砲を外して水産庁の 取締船としてチャーターした船の写真を示した。

     キャッチャーボートは捕鯨砲以外の漁具を持たない。捕鯨に適した独特の船型―速力と旋回性能を中心とした 船型―に作られる。氷山が浮いている海域で操業するので、No.3、No.4、No.10からNo.13までに示すように、 船体に強度を持たせるために、フレームの間隔は狭い。

     トン数の割に船体は細長く高い。一般に日本の遠洋漁船は、外国の漁船に比べて航走に重点を置かなければ ならないので、船幅の割には長い。一般の漁船では、業種によって異なるが、船幅:船長(B/Lと呼ばれる)は それでも1:5前後である。しかし、キャッチャーボートでは、1:10程度である。これは、高速運搬船や艦艇に 近い値である。

     急旋回ができ、復元力が大きい。外洋では波が低いときでも、いつもゆっくりと大きくローリングしていて、 甲板の最も低い部分は常に海水で洗われる。

     この写真の船では、水線上3層である。通常航海のときには、3層目の船橋で操船されるが、出入港や他の船と 接近した時等は、その上ハンティングブリッジで操船される。

     キャッチャーボートの船型の特徴は、高く上がった船首である。船首は朝顔型に開き、ピッチングをして船首が 波に突っ込んでも、船首に立つ砲手が波を被らないように、波を外側に排除するためである。船首の型はNo.3で よく分かる。

     船首は3層目にある船橋と同じ高さで、船橋との間はガンナーズパッセジで結ばれる。これがマストの右側を 通るか左側を通るかは会社によって異なっていた。しかし、これがどちら側にあるかによって母船等に着け易い 舷が異なる。

    横から見たキャッチャーボートの特徴は、打ち込んだ波を流しだしやすくするため、前甲板が大きく反って いることである。これは、No.3、No.12およびNo.13で分かり易い。

     横から見たときのもう一つの特徴は、No.2に示すように、低い舷側板が操舵室の横までしかなく、それより後は 支柱と鎖を渡した手摺しかないことである。これも航走中は倒されるか除かれる。これは航走中の作業は前甲板で しか行われないし、高緯度海域における着氷を極力少なくするためである。甲板下には特に設備がなく、他の漁船 と異なり前部から後部まで、船内を通って移動できるので、甲板を移動することはほとんどない。

    No.1
    [No.1: ft_image_50_11/image001.jpg]

    No.2
    [No.2: ft_image_50_11/image003.jpg]

    No.3
    [No.3: ft_image_50_11/image005.jpg]

    No.4
    [No.4: ft_image_50_11/image007.jpg]

     No.5は船首にある捕鯨砲、No.6は捕鯨用のモリを示す。

    No.5
    [No.5: ft_image_50_11/image009.jpg]

    No.6
    [No.6: ft_image_50_11/image011.jpg]

     操舵室の前にマストがある。その機能は他の漁船におけるマストと異なる。そのほぼ上端近くに見張台がある。 ここにいる乗組員が水平線近くの噴気によって鯨を探す。



     キャッチャーボート独特のマストの機能は衝撃緩和装置である。

     No.7からNo.9に示すように、見張台の下に上下2コの滑車が見られる。モリに結ばれたロープはNo.4に示す階段 上端左右にある滑車を通ってマストにある下方の滑車の上を通り、No.10とNo.11に示す捕鯨ウインチに結ばれる。 No.10では船首は左、No.11では右である。下の滑車は太いワイヤによってNo.12に示したマストの付根で止められ、 モリにつながるロープにかかる衝撃によって上下する。この上下運動は上の滑車を上下させ、その動きは甲板下 にある衝撃緩和装置によって緩和される。

    No.7
    [No.7: ft_image_50_11/image013.jpg]

    No.8
    [No.8: ft_image_50_11/image015.jpg]

    No.9
    [No.9: ft_image_50_11/image017.jpg]

    No.10
    [No.10: ft_image_50_11/image019.jpg]

    No.11
    [No.11: ft_image_50_11/image021.jpg]

    No.12
    [No.12: ft_image_50_11/image023.jpg]

    No.13は曳鯨用のビットの写真である。

    No.13
    [No.13: ft_image_50_11/image025.jpg]

    No.14は鯨探器と呼ばれる簡単なソナーである。鯨は大きく、しかもその肺は空洞であるので、音波を反射 しやすい。

     鯨を肉眼によって発見し、接近後は鯨探器によって追跡する。

     No.1とNo.2に示すように、鯨探器はハンティングブリッジの一角にある鯨探器室に備えられる。これは、 追跡中にはそこで操船するからである。

    No.14
    [No.14: ft_image_50_11/image027.jpg]

    No.15はかなり古い型の航跡自画装置の写真である。鯨を追跡中には船は複雑な動きをする。高緯度地域では、 緯度によって経度1°の距離が異なるが、この装置では東西方向と南北方向を同じ縮尺で表され、緯度・経度 として表示されない。

    No.15
    [No.15: ft_image_50_11/image029.jpg]


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