FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 5 部
    17 フィジーの漁業



        Fijiにとって、漁業は輸出金額では砂糖・金・ココナツオイルに次ぐ第4位の産業で ある。漁業は大規模 漁業(Industrial fishery)・零細漁業(Artesanal fishery) ・自家消費漁業(Subsistence fishery) 及び 養殖業(Aquaculture)に分けられ、それぞれ次のように定義されている:大規模漁業は規模が大きく、輸出を 第一義的な目的とする。 零細漁業には国内消費を目的とした小規模の漁業が含まれ、国内向けの魚の供給と雇用の重要な拠り所になって いる。自家消費漁業とは、自家消費を目的とし、ときどき漁獲物の余剰を販売するための漁業である。養殖業は まだ実験的な段階にあるので、記載は省略する。

    大規模漁業(Industrial fishery)

    PAFCO(Pacific Fishing Co.)に缶詰の原料を供給するカツオ一本釣とマグロ延縄が以前から行われていた。 その他に、輸出向けの氷蔵のマグロをねらった延縄とDeepwater snapper 一本釣が近年行われるようになった。 これらはこのカテゴリーの漁業と零細漁業の境界的な地位にある。

    No.1
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    No.1  IKA Corporation の本部(Suvaの Lami 地区にある)

    No.2
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    No.2  IKA Corporation 本部前の船溜り(カツオ竿釣船が見られる)

    PAFCO の工場はOvalau 島のLevuka にあり、Fiji 最大の缶詰工場である。IKA Corporation と外国漁船による 水揚げ及び近隣諸国から輸入したカツオ・マグロ類を原料とし、製品の大部分は輸出される。これが Fiji 第4位 の産業である。

     カツオの一本釣は、この国における最大の漁業で、主にIKA Corporation (No.1とNo.2)と呼ばれる漁業公社 によって行われる。 IKA とは Fiji 語では魚のことである。この公社は法令によって設置された組織で、1975年に UNDP の feasibility study の結果設立された。現在この公社が運行する船団は約10隻の竿釣船よりなり、その うちの8隻は外国漁船の傭船である。年間4,000トンから4,500トンのカツオ・マグロ類を漁獲した。この公社による 漁獲はすべてPAFCO に揚げられる。数隻のカツオ竿釣船(鉄船)を Suva にある造船所で建造する計画がある。

     PAFCO(Pacific Fishing Company、1964年設立、1976年に生産を開始)(No.3)とは、Fiji最大の缶詰工場を Ovalau 島に持つ国営企業である(経営形態はパートナーが見つかるかどうかによって流動的である)。ここが契約 した台湾の延縄漁船(No.4)は、1987年には15隻で、約2,300トンを水揚げし、1988年にはほぼ2倍の27隻で 5,000トン近くを水揚げした。

    No.3
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    No.3  PAFCOの全景

    No.4
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    No.4  PAFCOに水揚げしている台湾のマグロ延縄船

     PAFCOは、年間1万5千トンの原料魚を加工し、90万カートン(48×7オンス換算、うち1/6はペットフードである) を生産した。その大部分は輸出に向けられ、それがFijiにおける輸出の第4位を占める。原料のうちの約1万トン は IKA corporation のカツオ竿釣船と台湾のマグロ延縄船による水揚げで、5千トンは近隣諸国からの輸入である。 従業員数は約300人である。PAFCO のあるLevuka の人口は1982年には1,395人、 Ovalau 島全体では6,513人と推定 されているので、この地域における雇用―特に女性の雇用―に対して PAFCO がはたす役割は大きい。

    No.5
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    No.5  PAFCOの工場内煮熟したカツオの肉をほぐしている。ほとんど手作業によるので、従業者は多い。

       Fijiにおけるマグロ延縄には全く異なった2つのタイプがある。その1つはPAFCOと契約した台湾漁船による遠洋 マグロ延縄で、これをこの国の漁業とみなすことは疑問であるが、現地ではこの国の漁業として扱われる。もう1つは、 サシミマグロをねらうオーストラリア型の近海延縄である。

    No.6
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    No.6  近海マグロ延縄船
    サシミマグロを目的とする。(Lautoka....Nadi国際空港に近い漁港)

    No.7
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    No.7  近海マグロ延縄船の幹縄巻き取り用のドラム

      ドラムの軸は船首尾方向。太いモノフィラメントの幹縄を使う。

    No.8
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    No.8 近海マグロ延縄船の船尾にある枝縄ストッカー

      ストッカーの中にはモノフィラメントの枝縄が多数下げられている。

     サシミマグロ(近海で漁獲され、直ちに氷蔵された鮮度が高いマグロ類をこのように呼ぶ)を目的とする延縄船と その漁具をNo.6からNo.8に示した。これはオーストラリア等より輸入した船(全長約15m)によるモノフィラメント の幹縄と枝縄を用いたドラム式の延縄である。自動化が進み、少人数で操業できる。近海で操業し、氷蔵された 漁獲物は Sashimi Tuna と呼ばれ(No.9)、主に日本に(航空貨物として)輸出される。新しい漁業で、Fijiから 日本に直行便がある今日では有望視されている。この漁船はマグロの休漁期には後で述べる Deepwater snapper 漁業 に用いられる。

    No.9
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    No.9  サシミマグロ輸出用のカートンケース (Lautoka)

     底魚類を対象とした大規模漁業にはDeepwater snapper 一本釣がある。これは比較的新しい漁業であるが、導入 直後の1980年代の終わりにはすでに資源的にみて full capacity に達したとみなされている。この漁業に従事する 漁船はNo.10に示すような輸入した漁船に油圧リールを装備して行うものと、No.11に示すような9m級漁船(この資材 は日本の無償援助によるところが大きい)に手動または油圧リールを装備して行うものとがある(No.12とNo.13)。 漁獲物は氷蔵にして(No.25)、米国や日本に輸出される。これらの漁業による漁獲量は明らかでないが、従事する 漁船数について snapper 漁業専業船は1隻、マグロ延縄専業船は1隻、両者の兼業船は7隻という記録がある。

    No.10
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    No.10  Deepwater snapper 漁船
    輸入船に油圧リールを装備する。(Lami)

    No.11
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    No.11  9m級の漁船(水産局が建造して配布したもの)




    No.12
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    No.12  9m級漁船に装備された手動リールと油圧リール
      Deepwater snapper その他の一本釣に用いられる。(Levuka)

    No.13
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    No.13  9m級漁船に装備された手動リール
      Deepwater snapper その他の一本釣に用いられる。(Levuka)

    零細漁業 (Artesanal fishery)

    次に示す自家消費漁業(susbsistence fishery) を行わない人達に対する動物性タンパク質の供給と海岸地帯に おける雇用において大きな意義がある。このカテゴリーに含まれる漁業は年々多様化しており、川で貝類を採集する 婦人から(No.21ではその収穫を道端で販売している)、輸出を目的とし deepwater snapper を漁獲する漁船まで にわたる。1988年には漁民数4,872人、漁船数1,942隻、推定漁獲量6,868トン(うち魚類は4,748トン)であった。 水産局は零細漁業の発展重点を置き、漁船の建造・漁具の販売・製氷及び氷の販売等、他の国ではみられないような 幅広い活動を行っている。この分野に対して Lautoka の漁港改修(No.14)・漁船の機関・漁具の補給に関して 日本の援助が行われていた。

    No.14
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    No.14  Lautoka 漁港の事務所と製氷プラント
       日本の援助によって改修された。

    Lami にある水産局の本部に宿舎を設け、各地より集めた漁民に対して数カ月間から数週間の講習を行うとともに、 10カ所以上の駐在地に直営の製氷プラントを設け、氷と漁具の販売・ローン・加工に対する助言を行っている。 また、水産局はその敷地の一角に木造船の造船所を持ち、7m級と9m級の漁船(No.11)を建造し、このような訓練 を受けた漁民に販売している。この計画に従って建造された9m級の漁船は現在では約300隻に達し、日本からの援助 による機関がこの漁船に装備されている。このカテゴリーの漁業の一例として刺網とその漁船を写真15に示したが、 その他にも一本釣・曳縄・投網・潜水漁業(素潜り、水中銃を使用)が見られる。なお、Deepwater snapper一本釣は 大規模漁業の項に記したが、この9m級の漁船で行われる。この漁業は漁船の大きさ・漁法・従業者の雇用形態等を 基準にすると小規模漁業になるが、Fijiにおける分類では漁獲物の流通に重点が置かれているために大規模漁業に 含まれる。

    No.15
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    No.15  刺網とそれを用いる漁船
    モノフィラメントの刺網が種々の大きさの漁船で用いられる。網丈は著しく高い。 船上で漁獲物を保蔵するアイスボックスが見られる。(Rewa河口)

    自家消費漁業 (Subsistence fishery)

     夕方に橋の上から婦人や子供が釣糸を垂れて僅かの小魚を釣ったり(No.16)、珊瑚礁を渉りあるいて海藻やウニ・ ナマコ・小さい貝類を拾っている(No.17とNo.18)のを見かける。これらがこのカテゴリーの漁業に含められ、その 漁獲物は海岸地帯と内水面付近の人達の日常の食料として重大な意義を持つ。販売を目的として魚を漁獲する人 (大規模漁業と零細漁業)はすべて免許を受けなければならない。従って、その人数を把握できる。しかし、自家 消費のための漁獲は免許がなくてもできるので、その実態を把握することは困難である。自家消費漁業による漁獲量 について、1980年に行ったインタービューサーベーの結果得られた年間14,000トンという推定値を基準とし、年間 200トンの増加を加える推定値が使われるので、1900年の漁獲量は16,000トンになる。これは零細漁業による漁獲量 の3倍を上回ることになる。

    No.16
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    No.16  橋の上で魚を釣る婦人達(Suva)

    No.17
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    No.17  珊瑚礁で採集をする婦人達(Suva)

    No.18
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    No.18  珊瑚礁における採集物(Suva)

    零細漁業による漁獲物の流通経路

     市営市場・ホテル・レストラン及びカフェー・肉屋と魚屋・小売店とスーパーマーケット・露店等多様化している。 その例として、No.19からNo.24を示した。なお、No.25は輸出用に魚を出荷まで氷水に漬けて保蔵している光景である。

    No.19
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    No.19  都市の市場の前の道端で魚を売る (Lautoka)

    No.20
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    No.20  郊外のバイパスの道端で魚を売る (Suva郊外)

    No.21
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    No.21  川で採集した貝類を道端で売る (Nausori)

    No.22
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    No.22  Nubukalou Creek (Suva の商業地区の中心付近)で魚を売る漁船

    No.23
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    No.23  Nubukalou Creek (Suva の商業地区の中心付近)で魚を売る漁船
       魚はカラフルで歯が鋭く、種類は多いがそれぞれの量が少ないことが熱帯地方の特徴である。

       No.24
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    No.24  Nabukalou Creek (Suva の商業地区の中心付近)でウニとエビを売る

    No.25
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    No.25  輸出用の氷蔵魚(Suva)
       この魚はトラックで Nausori空港まで運ばれ、ハワイに空輸される。

    付記  この写真の説明にはFiji水産局のAnnual Report を参考にした。

     








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