海洋総合辞典Japanese-English-Spanish-French Comprehensive Ocean Dictionary, オーシャン・アフェアーズ・ ジャパンOcean Affairs Japan, 南シナ海をめぐる中国・フィリピンとの2016年国際仲裁裁判判決International Court of Arbitration judgement 2016 regarding China-Philippines South China Sea issues

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南シナ海をめぐる中国・フィリピンとの国際仲裁裁判の判決(2106年)の要旨


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5 6 7 8  出典:下記掲載。


はじめに
国連海洋法条約(1994年発効)において紛争の平和的解決手段の一つとして規定される国際仲裁裁判所は、中国の「九段線」による 海洋資源に対する歴史的権利を否定した。また、「岩」の埋め立てによる陸地の拡張や「低潮高地」の埋め立てによる 人工島の造成は、排他的経済水域・大陸棚の海洋管轄権を生じないと結論づけた。

1. 中国は南シナ海に9本の境界線(「九段線」と称される)を断続的にU字型に引いて、中国大陸から南シナ海のかなりの部分を 囲い込んだ。そして、境界線内側の全域に主権、管轄権、歴史的権利を主張してきた。だがしかし、中国が主張する 権利、管轄権などの内容は具体的ではなく曖昧なところが多い。

第2次大戦後当時の中華民国が南シナ海に11本の線を引いた。1949年に成立した中国がそれを引き継いだ。 当時北ベトナムとの関係に配慮して、境界線を11本から9本に減じたとされる。U字型で牛の舌のように見えるところから、 九段線に囲まれた海域は「中国の赤い舌」と呼ばれる。

2. 画像 1 は、「国際裁判所 中国止めるか」 と題する2016年3月15日付け日本経済新聞の記事である。 フィリピンは、仲裁裁判所に対し、中国のその九段線や歴史的権利につき異議申し立てを行なった。中国が自身を弁護する 仲裁人の指名を拒否するなか、審理は行われてきた。 近々下される判決内容によっては、中国の立場・主張に大きなインパクトをもたらすことを示唆する記事である。
画像 2 は、「9段線「違法」 中国は猛反発」と題する2016年7月13日付け朝日新聞の記事である。仲裁裁判の判決内容を報じている。


判決の結論
判決のいくつかの重要点について説明する。 (判決は拘束力をもって結審。上告審はない。国際社会のシステムとして、判決に猛反発する中国を強制的に従わせる 手立てはない)

3. 裁判所は、中国の主張や行為を再検討した結果として、中国が主張するところは九段線の内側の諸資源に対する歴史的 権利であって、南シナ海域に対する歴史的権原ではない、と結論した。そして、九段線の内側の海域で、中国が、 国連海洋法条約に基づいて認められる権利、領海や排他的経済水域の範囲を越えて、南シナ海の資源に対する歴史的権利を 主張する法的根拠はない、と結論した。

中国がたとえそれを有していたとしても、そのような歴史的権利は、同条約に基づく領海や経済水域と相いれない場合は、 同条約の発効をもって失効したとする (中国は同条約の締約国である)。




「岩」と「島」とを区別する国際法上の基準の初適用/「島」「岩」「低潮高地」の認定
4. 裁判所は以下の認定を行なった。
(1) a.スカボロー礁、b.ジョンソン礁、c.クアテロン礁、d.ファイアリー・クロス礁は、満潮時に水面上にある地物で、 12海里の領海を生じさせる。
(2) e.スービ礁、f.ヒューズ礁、g.ミスチーフ礁、h.セカンド・トーマス礁は、自然状態において満潮時に水没する「低潮高地」 (暗礁)である。
(3) i.ガベン礁(北)、j.ケナン礁については、満潮時に水面上にある地物とした。

要するに、岩礁a~d、i~jは、同条約にいうところの満潮時に水面上にある「岩」であり、領海をもつ権利を有するが、経済水域や 大陸棚を有する権利はない。そして、 岩礁e~hは、満潮時に水没する「低潮高地」であり、領海も、また経済水域・大陸棚を設定する根拠を有しないと、明確に結論づけた。

5. 裁判所は、同条約にいう「岩」と「島」とを区別する国際法上の基準を初めて適用することになった。「島」とは、 自然に形成された陸地であって、満潮時でも水面上にある(常に水没しない)地物であり、島は領海、さらに経済水域と 大陸棚に対する権原を生む。

だがしかし、満潮時に水面上にあっても、人間が居住や経済活動を行えないものは「島」ではない。人間が住めず経済的な生活を 送れない地物は「岩」と定義され、領海設定は認められるが、経済水域や大陸棚の設定を伴うことができない。 島か岩のいずれであるかは、その自然状態において、外部の資源に依存したり、自然を収奪することなく人間の定住や経済活動 を行える客観的な収容能力に基づいて判断される、と結論づけた。 5. 裁判所は、中国が実効支配し、かつ埋め立てて陸地を拡張したり、あるいは人工島を造成した南沙諸島(=スプラトリー諸島) の地物は、「岩」あるいは「低潮高地」であると判決したが、それらの地物とは以下の(1)から(7)である

    (1)ファイアリー・クロス礁(永暑礁):満潮時に水面上にあるが、「島」ではなく「岩」と認定される。
    [参考] 中国によって埋め立てられ、陸地が拡張された岩礁。3000m級滑走路・ヘリポート・灯台・港湾整備。 2016年7月時点における状況(以下同)。

    (2)クテアロン礁(華陽礁):同じく「岩」と認定される。
    [参考] 同じく岩礁。6階建てビル・ヘリポート・レーダー・通信設備・灯台・港湾整備。

    (3)ジョンソン礁(赤瓜礁):同じく「岩」と認定される。
    [参考] 同じく岩礁。6階建てビル・ヘリポート・レーダー・灯台・港湾整備。

    (4)ガベン礁(北)(南薫礁):同じく「岩」と認定される。
    [参考] 同じく岩礁。6階建てビル・レーダー・ヘリポート・港湾整備。

    (5)ヒューズ礁(東門礁)およびケナン礁(西門礁): :ヒューズ礁は満潮時に水没する「低潮高地」と認定される。他方、ケナン礁は、満潮時に水面上にあるが、「島」ではなく「岩」と認定される。
    [参考] ヒューズ礁は埋め立てられて人工島が造成された暗礁。ケナン礁は埋め立てられて陸地が拡張された岩礁。 9階建てビル・ヘリポート・レーダー・港湾整備。

    (6)スービ礁(渚碧礁):同じく「低潮高地」と認定される。
    [参考] 埋め立てられて人工島が造成された暗礁。3000m級滑走路・通信設備・灯台・港湾整備。

    (7)ミスチーフ礁(美済礁):同じく「低潮高地」と認定される。(フィリピンの200海里経済水域 内にあると結論される)
    [参考] 同じく暗礁。3000m級滑走路・燈台・通信設備・港湾整備。

    6. その他の南沙諸島の岩礁
    (8)セカンド・トーマス礁:満潮時に水没する「低潮高地」と認定される。(フィリピンが実効支配する)

    (9)スカボロー礁:満潮時に水面上にあるが、「島」ではなく「岩」と認定される。(フィリピンの ルソン島西方に存在する; 中国が実効支配する; 中国・フィリピンが領有権につき争う)

    (10)リード礁:同じく「低潮高地」と認定される。

7. 裁判所は、南沙諸島で中国が実効支配するいずれの礁も、またスカボロー礁も、「島」ではなく「岩」または「低潮高地」 であり、従って経済水域や大陸棚を生じる根拠にならないと結論した。 即ち、判決は、中国が埋め立てによって人工島を造成した「低潮高地」も、また拡張するに至った「岩」も、「島」と認めず、経済水域 や大陸棚を主張することはできないとした。「岩」や「低潮高地」にいくら土砂を積み上げ、陸地を拡張しても、あるいは人工島を 造成しても、経済水域や大陸棚を設定できる「島」にはならないことを明示したものである。

さらに、満潮時に水面上にあるすべての南沙諸島(これには例えば、太平島パグアサ島西月島南威島ノースイースト島サウスウェスト島が含まれる)における島嶼は、法的には経済水域や大陸棚を生じさせない 「岩」であると結論づけた。(太平島は台湾が実効支配する)

8. 同条約上、「低潮高地」にあっては、そもそも領海を有する権利はなく、またその周辺水域はすべて公海であるとの位置づけであり、 他国の軍艦等の船舶の航行の自由を制限することはできない。

9. ミスチーフ礁セカンド・トーマス礁リード礁は、満潮時水没し、かつフィリピンの経済水域内にあり、フィリピンの経済 水域や大陸棚の一部を構成する、と結論づけた。中国のいかなる権利とも重複することはなく、それらはフィリピンの経済水域内 に含まれるとした。 また、フィリピンの許可なしに、ミスチーフ礁に施設や人工島を建設したが故に、中国はフィリピンの経済水域についての 主権的権利を侵害したと結論づけた。

意義
10. 中国は、裁判所の本件事案の管轄権を認めず、また当該判決を受け入れないとしてきた。しかし、判決のインパクトは極めて大きい といわざるをえない。 南シナ海では、経済水域・大陸棚の境界線画定には中国、台湾、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ボルネオ、 インドネシアなど沿岸諸国の合意が不可欠である。判決は将来協議する上での一つの重要なベース、起点、あるいは重し となろう。 だがそもそも海の管轄権の範囲や国境線を協議する以前に、岩礁などの帰属・領有権をめぐって鋭く対立している。 中国による海洋覇権・権益の拡張政策、埋め立て・軍事施設の造営などの既成事実化を進める行動が絡み、ますます出口の見えないもの になっている。

境界線画定において国際法理に最も適うような解決策が模索され、妥協が図られる必要がある。 関係諸国が国際海洋法に準拠しながら真摯に協議し合意点を見い出すべきである。 国際裁判の手を借りずに果たして諸国は線引きに合意を見い出せるであろうか。既成事実を積み上げ、立場を強固にすればするほど、 合意に至る道を遠ざけ、さらには閉ざすことになりかねないとの危惧がある。




● ベース:select1666.html[2017.02.26 記]
● Will be revised, updated on XX XX, 20XX
● 出典: 画像1-7はいずれも2016年7月13日付けの全国各紙 (朝刊)。
1.日経新聞2016年3月15日[拡大画像: x27169.jpg] 2-5. 朝日新聞2016年7月13日付け [拡大画像: x27307.jpg][拡大画像: x27306.jpg][拡大画像: x27308.jpg]
6. 産経新聞2016年7月13日付け [拡大画像: x27309.jpg]
7. 読売新聞2016年7月13日付け [拡大画像: x27312.jpg]
8. 日経新聞2016年7月13日付け [拡大画像: x27310.jpg][拡大画像: x27311.jpg]


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