北前船は幕末から明治時代にかけて日本海・瀬戸内海の西廻り航路で活躍した和船である。
画像は新潟市内の西厩島町に所在する金刀比羅(ことひら)神社に奉納され、現在は境内の収蔵庫にて陳列されている28点の北前船の模型である。
これらの奉納模型和船(Votive Models of Japanese Boats, Kotohira Shrine)は、1965年(昭和40年)
6月9日に国の重要有形民俗文化財(National Tangible Folk Cultural Properties)に指定された。
船問屋(ふなどんや)や船主たちが、海上での安全を祈って、自身の持ち船の模型を奉納したものである。
境内の案内立札に記される説明書きの概略は以下の通り。
金刀比羅神社は1869年(明治2年)に現在の地に移った(注1)。海上安全の守護神として信仰され、「こんぴらさま」として親しまれている。
神社へは、新潟町の海運業者をはじめ、船主・船頭らが海上安全の祈願のために持ち船の模型を奉納した。
1852年(嘉永5年)から1891年(明治24年)にかけて奉納された、細部まで精巧に作られた北前船28点の模型が陳列されている。
また、大部分の模型の船腹や船底などに奉納年月日、船名、奉納者名などが墨書されている。当時の海運・造船技術や新潟湊の繁栄の
様子を知る上で貴重な歴史・文化的史料となっている。かつては帆柱を畳んで拝殿の天井に吊るされていたが、現在は境内の
収蔵庫に納められている。
(注1) 本神社が鎮座した(神霊がその地にしずまること)のは、明治2年と記される。
[参考: 船名・奉納年・奉納者名]
No.8 「輪宝丸」、慶応3XX歳卯月 、奉納者輪宝丸吉
No.10 「三社船」、慶応元酉12月、奉納者船頭
No.13 「亀運丸」、明治6年11月30日、奉納者沖船頭熊次郎
No.14 「住吉丸」、嘉永5 子年11月 高橋次郎左門
No.16 「幸得丸」、慶応4戊辰年8月X日、奉納者徳国
No.26 「船名不詳」、明治9子年、今治郎山口嘉重郎船沖船頭
X印は判読不能。
[撮影年月日:2020.10.23/撮影場所:新潟市中央区西厩島町(にしうまやじまちょう)所在の金刀比羅神社・北前船収蔵庫]
1. 収納庫内の模型展示風景(撮影・中内清文)。 [拡大画像: x28716.jpg]
2. 境内の神社案内板より。 [拡大画像: x28717.jpg]