ニカラグア運河ルート
リーバス地峡ブリット川河口域
[2009.03.01]

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図1. 選定ルート図(GCINより)


ニカラグア政府の「大運河検討作業委員会」が2006年8月に公表した「ニカラグア両洋間大運河計画書」では、 6つの運河候補ルートを挙げている。 そのいずれのルートにおいても共通して通過する地域がこのリーバス地峡である。そして、地形的観点からして最も優位性が あるのは、ニカラグア湖に流れ込むラス・ラッハス川、太平洋に流れ込むブリット川、 その両河川の間に横たわる、起伏や高低差の少ない分水嶺を結ぶルートである。図1の左画像のセクションA (Sección A)の区間がリーバス 地峡である。 [併せて、下記の地図1&2参照]。

    * "Gran Canal Interoceánico por Nicaragua (GCIN): Perfil del Proyecto", Comisión de Trabajo Gran Canal, Gobierno de Nicaragua



1. 首都マナグアからブリットへの道のり
    中米メキシコからパナマまでの中米諸国を縦貫する国際幹線道路「パンアメリカンハイウェイ」。 ニカラグアの首都マナグアから南東方向(隣国コスタリカ方面)に、そのハイウェイ(国道2号線)を行くと、細長いニカラグア湖としばらく 平行して走ることになる。左手に標高1200mほどのモンバチョ火山(Mombacho)を通り過ぎる頃、オチョモゴ(Ochomogo)という川に架かる橋 (かつて日本政府の無償援助で架け替えられた)にさしかかる。その橋周辺の村をパソ・レアル・デ・オチョモゴ(Paso Real de Ochomogo) という。

    橋を渡ってすぐにハイウェイからそれて未舗装道路に入る。エスカランテ(Escalante)を経て、ラス・サリーナス・デ・ ナグアラパ(Las Salinas de Nagualapa)の分岐点にさしかかる。右に行けば、太平洋沿岸の漁村 エル・アスティジェーロ(El Astillero)、ウミガメの繁殖地として有名なチャコセンテ(Chacocente)へとつながる。 左に行けば、未来の「ニカラグア運河」の太平洋側のゲートウェイ付近に位置するブリット(Brito)、およびトーラ(Tola)へとつながる。

    今回の旅では、まずエル・アスティジェーロへおもむき、その漁村風景やウミガメ保護の様子を見た。その後、海岸線沿いに南下し、トーラ (Tola)の手前5kmほどにあるエル・コヨル(El Coyol)という集落で道をそれた。その後、ブリット川のいくつかの川岸地点を観察しながら、 太平洋に注ぎ込む 河口へ行き着いた。時期は3月初めで、乾期の真っ最中であったので、エル・コヨルからの悪路を踏破できた。しかし、雨期(5~10月)に おいて雨が降り続いた後では、ぬかるみがひどくて河口までたどるのは極めて困難であろう。

地図1
エル・アスティジェーロは、ニカラグア湖(右上)に浮かぶヒョウタン形の島・オモテペ島の真ん中を横断する緯度線上の 太平洋沿岸にある(●印)。 左下の海は太平洋。左上端に首都マナグア(ピンク色)がある。右下端のピンク色は隣国コスタリカである。 オメテペ島は淡水湖に浮かぶ島としては世界最大の島といわれる。  [拡大画像: x24036.jpg]

地図2
画像中央にトーラ・Tolaが見える。その下方に、ブリット・Britoの集落(●印)とブリット川、その右方に湖畔の集落ラ・ ビルヘン・La Virgenとラス・ラッハス川・Las Lajasが見える。
[拡大画像: x24051.jpg]>その他関連地図[拡大画像: x24037.jpg & z18222.jpg]
出典: El Instituto Nicaraguënse de Estudios Territoriales (INETER)発行の25万分の1地図「Mapa de la República de Nicaragua」 (2004年)

地図3
北にミラマール・Miramarの集落(その北側にある山の尾根は、ローマス・ミラマール Lomas Miramarという)がある。南西端のブリット川河口 にはラ・ボカ La Bocaという集落がある。
川はミラマールから、幅2kmほどの平野部の東側を蛇行しながら流れ下り、ブリットの集落辺りで平野部を横切った後、平野部西側の 山裾に沿って太平洋へと注ぎ込む。 [拡大画像: x24079.jpg][拡大画像: x24081.jpg][拡大画像: x24080.jpg] [拡大画像: x24082.jpg]
出典: El Instituto Nicaraguënse de Estudios Territoriales (INETER)発行の5万分の1地図「Rivas」(2006年)



2. ブリット集落(Brito)におけるブリット川の状況

地図によると、ブリット川は、河口から12、3km上流にあるトーラ ・Tolaという町に近づくとトーラ川とも呼ばれ、 トーラの東側近傍を流れる。また、 トーラの1.5km下流において、北東方向から流れ下ってくるチャカラパ川・Chacalapaが本流のトーラ川に合流する。運河ルートはこのチャカラパ川 沿いに開削され、分水嶺を経て、ラス・ラッハス川・ニカラグア湖方面へと開削されて行くものと考えられる。

画像1-6の通り、ブリット川の幅は8-10m程度である。川を横断中の車両から分かるとおり(画像5)、 乾期に当たる現在での水嵩はほんの30cm(人間のひざあたり)程度である。土手の高さから見て最大水深は2-3mと推察される。

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1 地図3に見る通り、ブリットの集落付近で道路がブリット川を南北方向に横切っている。その横切り地点付近から上流を見る。  [拡大画像: x24061.jpg]
2 画像1のズームアップ画像。左岸にコンクリートの構造物が小さく見える。これがもともと架かっていた橋の一部である。 恐らく洪水で壊れ、そのままの状態になっている。 [拡大画像: x24058.jpg]
3 画像下部に壊れた橋の一部が写っている。その橋から上流を見たところ。 [拡大画像: x24060.jpg]
4 もともと架かっていた橋。左側の部分は壊れずそのまま残っている。画像では見えないが、橋の右側部分が完全に壊れて消失しており、 今はそこを川水が流れている。 通常、川水は橋下のトンネル内を流れ、増水時には橋上を溢れながら流れる構造となっている。 ニカラグアの地方の片田舎では多く見られる。 [拡大画像: x24059.jpg]

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5 道路の現在の横切り地点(画像1と同じ地点であるが、立ち岸が逆である)。下流側を見る。  [拡大画像: x24602.jpg]
6 道路の横切り地点のもう少し上流(壊れた橋辺り)から下流方向を見る。横切り地点が遠くに見えている。  [拡大画像: x24063.jpg]




3. ミラマール集落(Miramar)と、ブリット集落(Brito)との間におけるブリット川の状況
* 地図3の通り、ミラマール集落から南1km、あるいはブリット集落から北1kmにおいて、ブリット川と道路とが接する。 その地点での状況である。 川幅は8-10m、水嵩も30cmほど、最大水深は2-3mと推察される。

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1 上流を見る。 [拡大画像: x24064.jpg]
2 ブリット川の西側に広がる平野部を見る。このように平坦な放牧地、畑地が2kmほど先の山地まで広がっている。  [拡大画像: x24065.jpg]
3 平野部の北方面を見る。右側の山(ちょうど大木の後ろの山)はローマス・ミラマール Lomas Miramarと呼ばれ、ブリット川(トーラ川) はその山の右側にある低地を経て、さらに北方にある別の平野部を通ってトーラにいたる。
トーラの手前1.5kmでは、北東方向から谷筋に沿って南下してくるチャカラパ川という支流が合流する。
ニカラグア湖からラス・ラッハス川を開削し、さらにトーラ川との分水嶺を開削して引き込まれて来るニカラグア湖水は、 その谷筋で建設されるであろう堰・閘門によってせき止められ、そこで船が上がり下がりすることになろう。 この閘門のニカラグア湖側には小さな調整湖ができることになろう。
ミラマールのそばの低地でももう一つの閘門ができ、その北側に調整湖ができることも考えられる。その場合は、トーラの町が水没しないように 土盛りを張り巡らし防御する必要があるのかもしれない。 [拡大画像: x24066.jpg]
4 下流を見る。 [拡大画像: x24067.jpg]


4. ミラマール集落におけるブリット川の状況

ミラマールにおいて、道路がブリット川を横切る地点での川の状況である。河口から5kmほど上流であるが、川幅は8-10m、 水嵩も30cmほど、最大水深は2-3mで大きな変化はない。

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1 道路の横切り地点から上流を見る。ここからローマス・ミラマール Lomas Miramarの東側にある、少し狭まった低地を経て、 その上流に広がる別の平野部を蛇行しながらトーラへ至る。  [拡大画像: x24068.jpg]
2 下流を見る。 [拡大画像: x24069.jpg]


5. 河口から1 km上流でのブリット川の状況

ブリット川は、ブリット集落を過ぎたあたりから、平野部の東側から西側へ、その流れの向きを大きく変えた後、 西側の山裾に沿って流れ下る。 地図3に見る通り、山裾に沿って下り行く川と道路とが接する地点が1か所だけある。画像1&2は、その接点での川岸風景である。

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1&2 ブリット川河口まで1kmの距離にある地点での川岸。川筋がほぼ直角に曲がり川幅が広くなっている。  [拡大画像: x24070.jpg] [拡大画像: x24071.jpg]




6. ラ・ボカ集落La Bocaでのブリット川の河口状況

未来の「ニカラグア運河」の太平洋側のゲートウェイ。建設されるとすれば、このブリット川河口から開削され、水深25m、 幅100mほどの運河が 平野部を貫通し、ほぼ北の方角にあるトーラに向けて直線的に伸びることになろう。

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1  ブリット川河口域には小さな内海(うちうみ)・入り江があって、いったんそこへ流れ込んだ川水が狭水道(画像の右端辺り) を通って、太平洋へと流れ出る。 [拡大画像: x24073.jpg]
2 画像に見るように、海抜119mの山がそそり立つ。その左側直下に狭水道がある。   [拡大画像: x24072.jpg]


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1・2・3 ブリット川河口域の内海・入り江。そこへブリット川が流れ込む(画像2の対岸に注ぎ口が見える)。 その後、画像3に見る狭水道を通って太平洋へと流れ込出る。 [拡大画像: x24074.jpg][拡大画像: x24075.jpg][拡大画像: x24076.jpg]




7. ブリット川が流れる平野部の風景

ブリット川河口からミラマール集落の方向に2、3km戻った地点から、平野部の北東(ミラマール)方向を遠望する。

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1  「運河」はこの平原の真ん中を突っ切って、遠方に見えるローマス・ミラマールなどの山々の右側の低地をトーラ方面へと 北上することになろう。画像はミラマール集落方向を遠望したもの。 [拡大画像: x24077.jpg]
2 ブリット集落方向を見る。画像に写る雑木林に沿ってブリット川が流れている。 [拡大画像: x24078.jpg]




8. 所 感

今回はブリット川河口域での最初の踏査であり、いわば予備的なものである。今後リーバス地峡の他の区域、すなわち ラス・ラッハス川沿い、および分水嶺付近の踏査をも実施したい。その過程で、リーバス地峡におけるより具体的な 運河ルート、堰・閘門などに関する構想を固められるものと考える。 [踏査: 2009.03.01]



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