ニカラグア運河・オヤテ川踏査

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オヤテ川踏査図


     1[拡大画像(x23146.jpg)]>2[拡大画像(x23147.jpg)]>3[拡大画像(x23148.jpg)]>4[拡大画像(x23149.jpg)]+oyate1-4.xls/files



    オヤテ川~ラマ川概略図
    オヤテ川は、北東(右上)から南西(左下)方向へとほぼ破線(緑色)に沿って流れ下り、支流のエル・カカオ川(El Cacao)と合流し、 エル・オヤテ村(El Oyate)を経て、ニカラグア湖(Lago de Nicaragua)へと注ぎ込む。

    他方、大西洋(カリブ海)へと流れ下るラマ川(Rama)は図の右上に位置するエル・コラル村(El Coral)の南側(下側)を流れているが、 オヤテ川とラマ川は交わることはない。図の右上をよく見ると、両河川は南北方向に並行してすれ違っているのが分かる。 そのすれ違う辺りがちょうど分水嶺になっていて、ニカラグア運河の有望候補ルートに選定されている「No.1、No.2、No.3」 (注*) のいずれもが共通して通過することになるのが、海抜60-70mの起伏の緩やかなこの分水嶺山系付近である。因みに ニカラグア湖の湖水面は海抜32mほどである。[拡大画像(x23145.jpg)] & Photoshop(x23145.psd)]

    注*: ニカラグア政府・大運河検討作業委員会公表(2006年8月)の「ニカラグア両洋間大運河計画書」 Gobierno de Nicaragua, Comisión de Trabajo Gran Canal, "Gran Canal Interoceánico por Nicaragua (GCIN): Perfil del Proyecto", Agosto de 2006.






    1. 日 時: 2009年8月29日(土)~30日(日)

    2. 踏査者:中内清文、木島久恵

    3.踏査の行程

      8月29日(土)
        15:00 首都マナグア(Managua) 出発。
        18:00頃 チョンタレス県フイガルパ(Juigalpa, Dept. de Chontales)到着 泊。

      8月30日(日)
        07:00 フイガルパ出発、エル・オヤテ(El Oyate)村を目指す。
        09:00 アコヤパ-サンカルロス間を結ぶ国道とオヤテ川との交点に架かるオヤテ橋付近のオヤテ川視察。
        09:40 国道をアコヤパ方面へ数km戻り、エル・サポーテ(El Zapote)に通じる村道に入り、パタコン平原(Llano El Pataco'n)を経て、リオ・デ・アグア川(Río de Agua)に架かる木橋に至る。アグア川視察。
        10:00 エル・サポーテ村にてガイド役のカウボーイと合流。ガイドを伴って馬にて最も近傍のオヤテ川岸を目指す。
        11:00~14:00 オヤテ川岸からラス・マリアス山(Loma Las Marias)の麓を経て、エル・カカオ川を徒渉し、オヤテ川とエル・ カカオ川との合流点に至る(昼食)。さらに上流にある高みからラス・メサス山、ラス・プエルタス山などを遠望する。 さらに上流を目指してこれらの山々に接近し、オヤテ川にかかる自然の堰(せき)に至る。
        18:00 エル・サポーテ村に戻る。


    選定ルート図(GCINより)


    4.踏査の目的

    エル・オヤテ村およびエル・サポーテ村近傍のオヤテ川の自然状況、オヤテ川中流域の地形などを観察すること。 大西洋・カリブ海に注ぎ込むラマ川とニカラグア湖に注ぎ込むオヤテ川との間に横たわる分水嶺山系区間に接近し、 その地形を視認することを主目的とする。

    5.視察結果 8月30日(日曜日)
    5.1 国道(Acoyapa-San Carlos)とオヤテ川との交点に架かるオヤテ橋周辺

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      1.  下流側(ニカラグア湖方面)を見る。ニカラグア湖まで直線距離にして17kmほどで、湖まで非常に緩やかに流れ下る。 川の中央部には旧道に架けられていたと思われる橋の脚部が一部残されている。 [拡大画像(x23196.jpg)]
      2.  オヤテ川にかかる橋。橋下での川幅は30m程である。 [拡大画像(x23197.jpg)](photographed by H. Kijima)

      3.  5-11月の雨期において時に起こる集中豪雨は凄まじい。豪雨によってこのような大木が根こそぎ倒され、濁流に乗って 流れて来る。根っ子の水没状況から見て水嵩は1mほどである。1週間前に比べるとわずかに水嵩が増えている状況にある。  [拡大画像(x23198.jpg)]
      4.  上流側(エル・サポーテ村方面)を見る。 [拡大画像(x23199.jpg)]

      5.  橋のすぐ上流川岸に民家がある。最近の集中豪雨時には床下浸水をした。民家の立つ位置からして、現在の 水量よりも少なくとも2m以上水嵩が増加したと推測される。川岸には生活の足として、あるいは緊急豪雨災害などに備えて、くり舟 (丸木舟)が繋がれている。このようなくり舟あるいは平底の川舟風景は地方のいたるところで見かける。  [拡大画像(x23200.jpg)]



    5.2 アニマス山(Cerro Ánimas)

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      1.  エル・オヤテ村/オヤテ橋からアコヤパ方面に数km戻ると、国道南西側に並行してそびえる標高140~200mの山が見える。 最左からルガール(Lugar)、アニマス山(Cerro Ánimas。中央の山・標高147mと最右の山・標高201m)。 アニマス山からさらに国道を1kmほど行くと、ティエラ・ブランカ山(Cerro Tierra Blanca) (標高273m) がそびえるが、 ここには写っていない。 [拡大画像(x23201.jpg)]

      2.  国道から、エル・サポーテ村へ通じる村道に1kmほど入ったところにある平原から見たアニマス山(標高201m)である。 周囲は平らな放牧地ばかりである。ここから2kmほど進むとパタコン平原(Llano Patacón)に至る。  [拡大画像(x23202.jpg)]

      [参考]スペイン語で高くそびえる山は「montaña」である。山が連なったりすると「montañas」(複数形)、あるいは別の 単語「sierra」(山脈、連山)となる。「cerro」 とは、montañaよりずっと低い山のイメージである。「loma」はまさに丘、丘陵という意味で、「colina」と同義である。



    5.3 オヤテ川支流のリオ・デ・アグア川にかかる橋(Puente Río de Agua)付近
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      1. 下流側を見る。1kmほど下るとオヤテ川に合流する。オヤテ川の支流であるこのアグア川、さらに上流位置にあって 同じくオヤテ川の支流であるカカオ川などは、雨期にあって増水したとしても、所詮は極めて小さな河川といえる。 ただ、豪雨が続けば溢れんばかりの流れとなり、時に氾濫(川水が周辺の平原に溢れる)することはあろう。 乾期(11月~翌年4月頃)にあっては川水は極端に少なくなり、枯れ川に近いものとなる。踏査時における、アグア川の木橋 辺りでの水嵩は、橋脚に引っ掛かった倒木状況から見て、80cm~1mほどであると推定された。また、川幅は10mほど、 橋脚の高さは3~4mであろう。  [拡大画像(x23203.jpg)]
      2. 木造の小橋。橋脚はコンクリート製である。  [拡大画像(x23204.jpg)](photographed by H. Kijima)
      3. 同上。 [拡大画像(x23206.jpg)]
      4. 上流側を見る。 [拡大画像(x23207.jpg)]
      5. 同上。 [拡大画像(x23205.jpg)]


    5.4 エル・サポーテ村近傍のオヤテ川(Rio Oyate)
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      1. エル・サポーテ村から馬で30~40分、ひどくぬかるんだ馬車道をたどってオヤテ川岸に至る。村から最も至近距離にある オヤテ川の岸辺である。川は大きく蛇行し、淀みができている。流れは緩やかである。水嵩は1週間前よりも少し増え、1mを少し 上回ろう。 [拡大画像(x23208.jpg)]
      2. ごくわずかに上流の地点で撮影したもの。 [拡大画像(x23209.jpg)](Photographed by H. Kijima)
      3. さらに数百メートル上流の地点。1週間前では川底が半分くらい露出していたが、今回は水嵩が倍化している。 この水嵩では馬で渡渉するのはほぼ不可能となろう。 [拡大画像(x23210.jpg)]


    5.5 ラス・マリアス山(Loma Las Marias)
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      1.  ラス・マリアス山の周囲2-3km圏内では、この山が最も標高のある山(標高150m)である。  [拡大画像(x23211.jpg)]
      2.  ラス・マリアス山麓の西側を行く。2kmほど先にある、エル・カカオ川の渡渉可能地点に向かっているところ。  [拡大画像(x23212.jpg)]


    5.6 ラス・マリアス山(Loma Las Marias)とカカオ川の渡渉可能地点との間の風景
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      1.  ラス・マリアス山付近からエル・カカオ川渡渉可能地点にいたる区間で見られる地形はきわめて平坦であり、放牧地 として利用されている。起伏としては、画像に写っているような標高百数十メートルの丘(loma・ローマ)がいくつかあるだけである。  [拡大画像(x23213.jpg)]
      2.  同上。 [拡大画像(x23214.jpg)]
      3.  点在する丘の間から垣間見える、目的地のラス・メサス山(Loma Las Mesas)、ラス・プエルタス山(Loma Las Puertas) の山々を遠望する。標高はいずれも120mほどである。今回の踏査の目的は、これらの山頂から、ニカラグア湖とカリブ海 との間にある分水嶺山系の地形などを遠望することである。 [拡大画像(x23215.jpg)]


    5.7 エル・カカオ川の渡渉地点
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      1.  下流側を見る。雨期における一つの状況として、水嵩の程度を理解することができる。リオ・デ・アグア川と同じく、乾期には 水はほとんど流れず、涸れ川になると推測される。  [拡大画像(x23218.jpg)](Photographed by H. Kijima)
      2.  この渡渉地点では岩がごろごろして流れは速い。豪雨で水嵩が増せば、周囲の平坦な放牧地に川水があちらこちらで 溢れ出て行くことになろう。 [拡大画像(x23217.jpg)](Photographed by H. Kijima)
      3.  上流側を見る。 [拡大画像(x23216.jpg)](Photographed by H. Kijima)


    5.8 オヤテ川とエル・カカオ川との合流点付近
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      1.  オヤテ川とエル・カカオ川との合流点まで数百メートルほどのオヤテ川岸にて、オヤテ川の上流側を見る。 川面から2~3mほどの高さのところにある、川岸に生える樹木の枝に、多くの柴(小さな雑木)や木片が引っ掛かっている。 これは近時の増水時における水嵩の程度を示している。 [拡大画像(x23223.jpg)][拡大画像(x23219.jpg)]
      2.  オヤテ川の下流側を見る。 [拡大画像(x23222.jpg)]
      3.  両河川の合流点のすぐ近傍において、樹幹周囲1mくらいある大木がオヤテ川岸に打ち上げられている。  [拡大画像(x23220.jpg)](Photographed by H. Kijima)
      4.  両河川の合流地点。 [拡大画像(x23221.jpg)](Photographed by H. Kijima) & [拡大画像(x23224.jpg)]


    5.9 分水嶺山系区域の遠望
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      1.  オヤテ川沿いのわずかに小高い丘から、ラス・メサス山(Loma Las Mesas)、ラス・プエルタス山(Loma Las Puertas) を遠望する。それらの山々の頂からオヤテ川の源流方面や分水嶺山系区域を眼下に一望するという今回の踏査の目的は 果たしえなかった。 [拡大画像(x23225.jpg)]
      2.  川中に自然の堰か何かで落差があるのが見える。 [拡大画像(x23226.jpg)]
      3&4.  画像1.に見るオヤテ川筋から60~90度右手にある山系を見る。オヤテ川源流域・分水嶺山系の一部を遠望している。 画像3.の左端に写る遠方の山が画像では一番高い。 [拡大画像(x23227.jpg)][拡大画像(x23228.jpg)](All photos No.1-4 taken by H. Kijima)


    5.10 自然の堰
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      1.  「5.9 分水嶺山系区域の遠望」の画像No.2に写る、オヤテ川上流の自然の堰。このような堰があると、船外機付き平底ボート によるスムーズな遡上は不可能である。また、丸木舟でさえも担ぎ上げるのに困難を伴う。 [拡大画像(x23229.jpg)]
      2.  下流側を見る。岩でごろごろしている。 [拡大画像(x23230.jpg)]


    6.所感
      1) 次回には、ラス・メサス山やラス・プエルタス山に登り、さらにオヤテ川の源流域および分水嶺山系区域を踏査する 計画である。分水嶺を越えさらにラマ川にまで取り付き、ラマ川上流域の最大の村エル・コラルまで踏査することを 最終目標とする。

      2) ニカラグア湖(湖水面は海抜32m)からオヤテ川に沿って運河を掘り下げ、オヤテ川-ラマ川分水嶺山系区間ではさらに深く 掘り下げつつラマ川に取り付くとすれば、ゆうに厚さ60~70メートルもの土を取り除き、人工の谷(水路)を何十kmに もわたって開削しなければならない。
      この分水嶺山系区間での運河開削が最もコストを要すると思われる。パナマ運河の土木工事からして、雨期には掘っても掘っても 豪雨に遭うと地滑りのため法面の崩落を起こし、人工の谷が埋められてしまうというかなり難工事となることは 間違いないであろう。
      当然ながら、どんな水路開削・閘門建設工事を計画しようが、運河のオペレーション上十分な水資源を確保しうるもので なくてはならない。

      ニカラグア湖とカリブ海との区間において、そのような水資源を確保(貯留)しうるための、「パナマ運河におけるガツン湖のような 貯水湖」を造ることができるのか、最大の関心事である。いくつの閘門をどこに 建設すれば、巨大な貯水湖を建設することができるのか。(ニカラグア湖とカリブ海との区間の地形的観点から極めて難しい との印象をもつ)
      それとも、ニカラグア湖自身をその貯水湖とすることを前提に、運河開削・閘門建設を計画するのか。
      これを考察するには、ラマ川の中・上流域の踏査もさることながら、オヤテ川-ラマ川分水嶺山系区域を踏査しておくことが 重要である。オヤテ川河口-ラマ川河口間の空からの直接的観察もまた極めて意義の有ることである。



    7.参考文献
    ・ ニカラグア政府・大運河検討作業委員会発行(2006年8月)の「ニカラグア・両洋間大運河計画書」 Gobierno de Nicaragua, Comisión de Trabajo Gran Canal, "Gran Canal Interoceánico por Nicaragua (GCIN): Perfil del Proyecto", Agosto de 2006.

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