1.日 時: 2009年8月21日(土)~22日(日)
2.旅の行程:
・ 8月21日(土)
首都マナグア(Managua)出発、チョンタレス県フイガルパ(Juigalpa, Dept. de Chontales)到着 泊。
・ 8月22日(日)
フイガルパを出発(車両にて)、エル・オヤテ(El Oyate)村を目指す。アコヤパ-サンカルロス間の国道とオヤテ川との交点に架かる
オヤテ橋付近にて、オヤテ川の状況を視察。
国道をアコヤパ方面へ数km戻り、エル・サポーテ(El Zapote)に通じる村道に入り、パタコン平原(Llano El Patacón)を経て、
リオ・デ・アグア川(Río de Agua)に架かる木橋を渡り、サポーテ村に至る。村人の案内を得て、オヤテ川岸まで徒歩
にて踏査する。また、次回の本格踏査に備えて、馬とカーボーイ(道案内などのため)の手配を行った上で帰途につく。
3.旅の目的
ニカラグア政府が2006年8月に発行した上記の「ニカラグア・両洋間大運河計画書Gran Canal Interoceánico por Nicaragua(GCIN)」に
記載された6つの有望選定ルートのうちの
「ルート1、2、3」の3つのルートが共通して通過する区間がある。
その区間とは、(1)ラマ川の上流部、(2)ラマ川とオヤテ川との間の分水嶺山系区間、(3)そこからニカラグア湖へ至るオヤテ川
のほとんどの部分である (上記概略図の緑色破線部分)。
今回のオヤテ川単独予備踏査では、エル・オヤテ村およびエル・サポーテ村近傍のオヤテ川を目視し、その地形や自然状況を
確かめるとともに、次回の本格踏査の準備として馬の借り上げの可能性調査、道案内のためのカーボーイの同行依頼など
を行った。
選定ルート図(GCINより)
4.視察結果 8月22日(日)
4.1 国道(Acoyapa-San Carlos)とオヤテ川との交点に架かるオヤテ橋周辺
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・ ニカラグアの雨期は毎年4、5月頃から10、11月頃である。踏査した8月期はちょうど雨期の真っ只中であり、通常いずれの
河川も最も水量
豊富な時期に当たる。短時間の土砂降りの豪雨、あるいは大雨が何日間か続くことがある。当然河川の水量は増加し、川の
様相が一変する。激流になったり、水位が何メートルも上昇し、水が河川から溢れ放牧地などを広範囲に冠水させたりする
ことがしばしばである。10、11月頃から翌年の4、5月頃は乾期に当たり、
降雨量は激減する。踏査時での推測として、オヤテ橋下での水嵩は1mあるか無いかであった。橋下での川幅は30m程である。
1. オヤテ橋から下流方面(ニカラグア湖方面)を見る。ニカラグア湖まで直線距離にして17kmほどで、湖まで非常に
緩やかに流れ下る。 [拡大画像(x23150.jpg)]
2. 下流側。根こそぎ倒れた巨木が押し流されて来て橋脚に引っ掛かっている。 [拡大画像(x23151.jpg)]
3. 上流側。 [拡大画像(x23152.jpg)]
4. 上流側。雨期に大増水でもない限り、ニカラグア湖から喫水の浅い船外機で遡上できるのはこの橋付近までである。
そこからエル・サポーテ村上流の
小さな滝までの15kmほどは手漕ぎのカヌーや平底舟にて遡上可能な程度で、乾期にはカヌーさえ遡上困難といわれる (地元民の話)。
[拡大画像(x23153.jpg)]
4.2 アニマス山(Cerro Ánimas)、パタコン平原(Llano Patacón)
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・ アコヤパ-サンカルロス間の国道から数百メートルほどエル・サポーテ村方面に入ったところから
アニマス山(右:標高201m、左:147m)を遠望したところである。アニマス山の1kmほど右側にティエラ・ブランカ山
(Cerro Tierra Blanca) (標高273m)
がそびえるが、ここには写っていない。農道の周囲は放牧地である。 画像1.[拡大画像(x23174.jpg)]
2&3
・ 国道からエル・サポーテ村へ向かう途中にあるパタコン平原辺りの情景(国道・アニマス山方面を振り返って見たもので、
5kmほど遠方にアニマス山が見える。ティエラ・ブランカ山は見えない)。ここからサポーテ村へ進むと、そのすぐ先には、
リオ・デ・アグア川(Río de Agua(Guanacastiilo))があって小さな木橋が架かり、それを越すとすぐにエル・サポーテ村に
入る。 画像2.[拡大画像(x23154.jpg)]>3.[拡大画像(x23155.jpg)]
4.3 オヤテ川支流のリオ・デ・アグア川にかかる橋(Puente Río de Agua (Guanacastillo))付近
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・ 雨期の真っ最中であってもこの程度で、その水量は少ない。水は淀んでいて、ほとんど流れが見られない。
もちろん2,3日でもキャッチメント・エリアに豪雨があれば一時的に水位は急激に上昇し増水することになる。
乾期では水量はほとんどなく干し上がってしまう状況である(地元民の話)。このように、オヤテ川の支流であるアグア川、さらに上流の
支流・カカオ川などは、雨期にあっては小川程度の河川であり、豪雨が続けば溢れんばかりの
流れとなろう。乾期にあっては枯れ川に近いものとなる。この木橋の1kmほど下流にオヤテ川との合流点がある。踏査時での推測として、
アグア川の木橋辺りでの水深は1m以下であった。また、川幅は10mほど、橋脚の高さは3mほどである。
1&2. 上流側の様子。 [拡大画像(x23156.jpg)][拡大画像(x23157.jpg)]
3&4. 下流側の様子。1kmほど下流でオヤテ川と合流する。 [拡大画像(x23158.jpg)][拡大画像(x23159.jpg)]
5. 橋上からの下流状況。 [拡大画像(x23165.jpg)]
6. アグア川に架かる木橋。 [拡大画像(x23164.jpg)]
7. 橋上からの上流状況。 [拡大画像(x23166.jpg)]
4.4 オヤテ川(1) Río Oyate
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・ エル・サポーテ村から40~50分ひどくぬかるんだ馬車道をたどるとオヤテ川の岸にたどり着いた。
1&2. 川は大きく蛇行し、淀みができている。流れは緩やかである。水嵩は1m前後であろう。 [拡大画像(x23160.jpg)]
[拡大画像(x23161.jpg)]
3&4. さらに50mほど上流で見たオヤテ川。 [拡大画像(x23162.jpg)][拡大画像(x23163.jpg)]
4.5 オヤテ川(2)
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・ さらに数百メートル上流のオヤテ川。踏査時での推測として、川幅は15~20mである。また、川底から土手までの
高さは数メートル程度である。
水嵩は50cmもない。豪雨が続き水位が上がれば土手の低い箇所から水が溢れ放牧地は容易に冠水することになろう。
1. 土手から上流を見る。 [拡大画像(x23167.jpg)]
2. 土手から下流を見る。 [拡大画像(x23168.jpg)]
3. 川底に下り立ち上流を見る。中央に丸木舟が留置されているのが見える。 [拡大画像(x23169.jpg)]
4. 川底に下り立ち下流を見る。 [拡大画像(x23170.jpg)]
・ 雨期に水位が上がれば、ニカラグア湖からオヤテ橋辺りまでは平底船外機付きボートでも遡上可能である。しかしそれ以上は困難である。
雨期であっても、オヤテ橋から上流に行くには櫂付きの丸木舟か平底舟でないと困難である。今でも丸木舟が使われている(画像3に丸木舟
が見える)。自然の小さな滝や堰があちこちにあり、船外機付きボートではまず遡上不可能である。雨期であっても櫂付き
丸木舟を小滝や堰で担ぎ上げねばならず、相当の難儀が伴うことになる。エル・サポーテからオヤテ川を遡上して、ラマ川の源流
まで行き着き、分水嶺を越えるには、キャンプをしながら少なくとも数日間は要することは間違いない(地元民の話からの推測)。
4.6 ラス・マリアス山(Loma Las Marias)
・ エル・サポーテ村からオヤテ川にたどり着き、川岸沿いに数百メートルほどたどったが、その岸沿いから常時視認できた山は
唯一このラス・マリアス山である。馬の背のような形のこの山は標高150mである。 [拡大画像(x23175.jpg)]
5.所感
・ 次回の本格踏査では、現地村人の道案内をえて、オヤテ川をさらに遡上して支流のエル・カカオ川との交点、さらにその
上流において山々が両岸に迫っているところまでたどり、自然状況を視認することである。出来ればそれらの山々の
頂上からオヤテ川、ラマ川の源流域および分水嶺山系区間を眼下に一望し、記録に残すことを目標にしたい。
・ 運河閘門をいくつどのように設けるにしても、ニカラグア湖(湖水面は標高32m)からオヤテ川に沿って掘り下げ、
オヤテ川-ラマ川分水嶺山系区間ではさらに深く掘り下げつつラマ川に至る、ゆうに深さ60m以上の人工の谷(水路)を
何十kmにもわたって切り開かねばならない (当然ながら、いかなる運河方式であっても、運河のオペレーション上十分な水が
確保しうるものでなくてはならない)。この分水嶺山系区間が最もコストを要し、掘っても掘っても豪雨に遭うと地滑りのため
法面の崩落を起こし人工の谷が埋められてしまうという難工事となることは間違いない。それゆえに、この区間をできる限り
踏査をしたいという気持ちが強くある。
6.参考文献
ニカラグア政府・大運河検討作業委員会発行(2006年8月)の「ニカラグア・両洋間大運河計画書」 Gobierno de Nicaragua,
Comisión de Trabajo Gran
Canal, "Gran Canal Interoceánico por Nicaragua (GCIN): Perfil del Proyecto", Agosto de 2006.
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