FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 1 部
    12 釣漁法
    14 イ カ 釣
    14-12 大 型 イ カ 釣 船



     フォールダ「イカ釣」に記したように、自動釣機を用いたイカ釣漁業は、日本で開発され、世界に広がった 漁法の代表である。この漁法が世界に広がったのは、日本向け輸出品としてイカの市価が高いこと、 特定の船体構造の船でなくてよく改装に大きな費用がかからないこと、および熟練した釣手がいなくてもよい こと等のためである。船員が定着しにくい国では、最後に記した条件の意味が大きい。

     1960-70年代には、いくつかの国の巨大な底曳網船団が北洋において活躍していた。しかし、関係各国が200浬 経済専管水域の規制を実施したので、それらの船団は行き場を失った。それらの船団の一部は主に南米諸国に 売却されるか、合弁事業として底曳網漁業を続けた。また、多くは自動釣機を装備してイカ釣漁業に転換して その活路を見出した。このことは日本だけでなく、東欧と東洋の諸国でも同様である。

     マルビーナス諸島(=フォークランド諸島)は世界的なイカの好漁場であることは、1980年代中頃には、 明らかになった。このことは、1980年代のイカの好漁年には、マルビーナス諸島に近いモンテビデオに、 年間400隻を越える日系の漁船が入港し、その大部分がイカ釣船であったことと、モンテビデオに停泊して いた種々の国(主に東欧と東洋諸国)の大型トロール船の大部分が自動釣機を装備していたことからも分かる。

     マルビーマス諸島周辺で操業するイカ釣船の中には、英国から入漁許可を得て操業する船と、 アルゼンティンとの合弁事業、アルゼンティンに移籍して操業する船等、経営形態は変化に富む。

     ここに示す例はアルゼンティに移籍した船(合弁事業の可能性がある)で、1980年代中頃としては設備が 整った中型船(イカ釣船としては大型)の写真である。

     この時代には日本の水産会社は新船を建造して海外と合弁事業をする機運にはなかった。

     最新装備をした大型のイカ釣船は、日本国内では、造船所以外では見られないので、アルゼンティン南端の ウシュアイアに入港していたイカ釣船の写真を示す。

    No.1
    [No.1: image12-14-12-001.jpg]

    No.2
    [No.2: image12-14-12-003.jpg]

    No.3
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    No.4
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    No.5
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    No.6
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    No.7
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    No.8
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    No.9
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    No.10
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    No.11
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    No.12
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    No.13
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    No.14
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     No.1は斜め後方から撮影した写真である。

     船名は日系であるが、船籍港はアルゼンティンのブエノスアイレスであり、船尾にはアルゼンティンの 国旗が見られ、アルゼンティンに移籍したことを示す。舷側を赤く塗ってあるのは、アルゼンティンにおける 遠洋漁船の特徴である。

     右舷側を見ると、他の漁業に使われていた船を改装したことが分かる。本来のイカ釣船は、海面から釣機の プーリの間で釣落としを少なくするために、舷側が低いが、この船では舷側を高く改装した。舷側より上に 見られるオレンジ色の点の列は釣機のプーリ(1台に腕の短いプーリは2基ずつ、長いプーリは1基ずつ)で、 多数の釣機が装備されていることが分かる。

     操業中には、この点が示す本数の釣糸に短い間隔で多数のイカ角をつけ、それらが海面と水深数十メートル までの間を絶えず往復している。

     釣れたイカは、海水が流れる樋によって集められるが、この樋は船の後半しか見られず、中央が高くなっている。 (前半では舷側の内側にある。)

     船尾に立つ高く黒い柱が増設した発電機の排気用の煙突である。この柱と同じ線上にスパンカー用の帆柱が見られる。

    集魚灯は舷側の近くに並び、2段のプーリの間の高さにある。(左舷がわの集魚灯の列が分かりやすい。)

     No.2は船橋から前方の左舷がわを写した写真である。舷側の内側に沿って、回廊があり、プーリを支える 短い腕(2本ずつ)と長い腕(1本ずつ ?釣機としては2基つけられるが、1基ははずしてある)が交互に立ててある。 操業中はこれらを水平近くまで倒す。集魚灯の列は、舷側に沿って、短い腕と長い腕の間の高さに並ぶ。沿岸の イカ釣船では、各種の集魚灯を組み合わせて使うが、この船では1種類の電球しか使わない。

     もっと小型の船では、集魚灯の列は船の中心線に沿って高くに並び、目立つがこの船では目立たない。

     画面の右端には、釣ったイカを処理する下の甲板が写っている。

     No.3は右舷がわの写真で、左舷がわとほぼ同じ構造である。舷側の内側の回廊の床には、短い腕を2本つけた 釣機と長い腕を1本つけた釣機が交互に並ぶ。縦に長い四角の箱が制御器である。制御器の両側に釣糸を巻いた 菱形のリールが見られる。

      No.4は左舷の2台の釣機を示す。プーリの下のイカ角から外れたイカを受ける金網の構造を示す。

     No.5は後方より右舷、No.6は前方より同じく右舷を写した写真である。それぞれの釣機には別個の制御機があり、 釣糸のもつれ等のトラブルが起きると、1台ずつ止めて修複できるようになっている。

     回廊の内側で、下の甲板でパン立ての作業をする部分の上には釣ったイカが下に落ちないように柵がある。

     外から見ると船の前半にはイカを送る樋は見られなかったが、この樋は釣機の下を走る。

     No.7は船橋から前を向けて写した写真である。船とパラアンカーを結ぶ索に付けるブイとパラアンカーを巻込む ドラム(ブイとプーリの間の白い部分)を示す。この部分には腕の短い釣機だけがついている。この写真でも、 下に処理甲板のあることが分かる。

     No.8は船のほぼ先端から後に向かって写した写真である。ドラムに巻込んであるパラアンカーと、パラアンカー と船を結ぶ索につけて浮かせるブイが見られる。

     No.9は船橋にある釣機の集中制御盤で、両舷にある総ての釣機を集中的に制御できる。両舷に分けてもあるいは 1台ずつでも発停できる。

     No.10は右舷がわ集中制御盤の拡大写真である。1台ごとに発停できるが、振幅と周期は、舷側につけてある 各釣機の制御盤によって1台ごとに行わなければならない。

     No.11は腕が短い釣機の写真で、釣糸を巻くドラムと釣糸を示す。釣ったイカを受ける金網はかなり幅が広い。 その付根には釣られたイカを送る海水が流れる樋がある。

     No.12とNo.13は、回廊で囲まれる部分の下にある釣れたイカを処理する部分の写真である。

     舷側が低い船だと、釣れたイカは甲板に集められ、足元でパンに立てられる。ここに示す方式だと、立った ままでパン立てをできる長所がある。南米の人達は、かがんで(あるいは座って)作業をすることを日本人以上に 苦痛に感じるので、それに適応した型であると考えられる。

     No.14は増設した発電機の写真である。新船を建造するのに近いような大幅な改造をしたと考えられる船でも、 主機と増設発電機は別室になっている。航走しているときにはイカを釣らないし(増設発電機を動かさない)、 イカを釣っているときには航走しないので、主機と発電機が別々に動くことになる。


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