漁業技術の画像集・FishTech
著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
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第 1 部 12 釣漁法 15 曳 縄 曳縄は、一本釣に次ぐ少ない経費と小さな船で最も広い面をカバーできる漁法である。しかし、 線でしか有効でなく、線上の点で有効なのは一瞬でしかない。 この特徴を生かしながら、次のように使われる: (1) 主に黒潮に突出した岬付近―特に岬の潮蔭になる部分―においてカツオ・マグロ類を漁獲する。 (2) カツオ竿釣船では探魚の補助に使われる。 (3) シイラ旋網では、網で巻くのに十分な魚がシイラ漬けに集まっているかを探る。 (4) 地方によっては、季節的に短期間だけ来遊するブリやヨコワ(マグロの幼魚)を漁獲する。下関では毎年 秋になるとヨコワを追って和歌山県から曳縄船がきて、対馬海峡で操業する。その他にも、ブリが来遊してくると、 短期間急に多数の船がこの漁法に変わる。 (5) アメリカでは、レジャーボートによって広く使われ、北ではサケ・マス、南ではカツオ・マグロを漁獲する。 ほとんどのサケ流網漁船は漁場との往復中にこの漁法を用いる。 現在の日本ではレジャーボートは航走だけと一本釣だけに分かれ、一部のレジャーボートしかこの漁法を 用いていない。もし航走しながら魚を獲る傾向が強くなるとすれば、この漁法が真っ先に取り入れられ、 漁業者との間にトラブルを起こすだろう。 (6) その他にも世界の各地で広く使われている。 以上の記載によれば、曳縄は表層付近に分散するやや大型の魚を漁獲する漁法であるという印象を受ける。 しかし、これは表層魚類だけを対象とした漁法でない。錘を付けて海底付近を曳くブリ底曳縄が各地で知られていた。 これは季節的に行われており、写真は撮れなかった。重い錘を扱わなければならないので、 次第に廃れた。一部の地域では、タチウオも海底付近で曳縄によって漁獲される。駿河湾におけるその写真を示した。 同じような漁法が山口県の柳井付近でも行われる。同じようなは漁具を使っても、曳くことを確認できなかったので、 それは一本釣に含めた。しかし、曳縄的に使われる可能性は捨て切れない。 曳縄は、簡単な漁法で、古くから世界各地で行われている。主に擬餌を曳くことは変わりない。しかし、 20・30年前から、その装置に変化が起こった。このフォールダはその変化とこの装置の多様性を示すことを 目的とする。 曳縄に各地の小型船が用いられ、その船型は地方によって異なる。No.1からNo.3までは、宮崎県南郷と その付近における曳縄船の写真である。 2本の長い竿が曳縄の特徴である。No.1とNo.2では、機関室の前に立っているブルーの長い竿がそれである。 入港したときには、これは立ててある。しかし、曳き方が変わってきたので、倒して曳くと限らない。 No.1からNo.3まででは、この竿の真横に、これを倒したときに受止められるような支えがあるので水平に倒して 曳くことが分かる。 No.1とNo.2に示した船は1人乗で、2週間近く操業を続ける。縄を曳くのは昼間だけで、夜間は休む。 左舷船尾近くの白い箱は清水タンクで、ここが炊事場になる。 必要な漁労装置は2本の竿である。しかし、1人乗りであり安全確認のためにQRY通信を行うので、 そのためのアンテナと船位測定装置用のアンテナが見られる。 漁獲物は船の中央にある船倉に入れ氷蔵して持って帰る。
![]() [No.1: image12-15-001.jpg]
No.2
No.3
![]() [No.4: image12-15-007.jpg]
No.5
No.6 曳縄に付ける最も普通の装置は、日本では潜行板である。それをNo.7に示した。 この写真の上に示したように曲面を上にして曳くと、擬餌は表面よりやや下の層を曳かれる。後端の黒いものは自転車のチューブの片で、左右に動かして潜行板のバランスを取る。魚が擬餌に飛びつくと反転して下に示したように平面が上になり、水面に現れるので、魚がかかったことが分かるとともに引き揚げやすくなる。 ![]() [No.7: image12-15-013.jpg]
![]() [No.8: image12-15-015.jpg]
![]() [No.9: image12-15-017.jpg]
![]() [No.10: image12-15-019.jpg]
No.11
その典型的なものは「飛行機」と呼ばれる装置である。これにはNo.12に示すような既製品が見られるが、 それぞれに工夫をこらした手作りのものが見られる。使う道具を自分自身で作ることは、沿岸漁業―特に 釣漁業―に見られる一般的な習慣であったが、それさえも既製品を使うように変わってきた。これも近年に 見られる特徴である。
![]() [No.12: image12-15-023.jpg]
No.13
No.14
No.15
![]() [No.16: image12-15-031.jpg]
No.17
![]() [No.18: image12-15-035.jpg]
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![]() [No.19: image12-15-037.jpg]
No.20
垂直に立てた竹竿の先端から曳索をとり、切口を前にして(No.21では左下、No.22では右下)これを曳くと、 抵抗のために竹竿はしない、それに耐えられなくなると戻るので、その後に曳かれている擬餌は水面を跳ねる。 この動きは餌を追う大型の魚から逃げる小魚の動きに似ていると考えられている。 No.21は手作りのもの、No.22は既製品である。
![]() [No.21: image12-15-041.jpg]
No.22
![]() [No.23: image12-15-045.jpg]
![]() [No.24: image12-15-047.jpg]
No.25
![]() [No.26: image12-15-051.jpg]
No.27
![]() [No.28: image12-15-055.jpg]
![]() [No.29: image12-15-057.jpg]
他の装置は水面下にあるが、以下の写真に示すように、大きな「ジャンボ」は水面にある。竹竿の先から曳索をとり、 「ジャンボ」を曳くと「ジャンボ」は水しぶきをあげながら水面を走る。その抵抗で竹竿はしなり、 耐えられなくなるともとに戻る運動を繰り返す。竿の先から「ジャンボ」まで、水面の上を曳索が走る。 この曳索から、ときどき水面に触れるように何本かの大型のイカの型をした擬餌が降ろされる。これは、 後から大きな魚が追ってきたのでイカがときどき空中に飛び上がりながら逃げるのに似せてあるとのことである。 No.30に曳かれる擬餌を示す。
![]() [No.30: image12-15-059.jpg]
![]() [No.31: image12-15-061.jpg]
![]() [No.32: image12-15-063.jpg]
No.33
![]() [No.34: image12-15-067.jpg]
![]() [No.35: image12-15-069.jpg]
![]() [No.36: image12-15-071.jpg]
No.37
No.38
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