FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第1部
    14 刺 網
    13 漕刺網の操業




     刺網は沿岸で最も普通に使われる漁法の1つであり、かって日本ではサケマス流し網・イカ流し網・マグロ 大目流し網のような漁法が存在した。

     その大部分は1日1回―夕方に設置し朝から揚げる―操業する漁法である。しかし、この固定漁法の特徴に 当てはまらない3つの変形がある。それらは、囲い刺網・漕刺網及び源式網である。漁獲機構を考えれば囲い 刺網が刺網から旋網への移行型、源式網は底曳網あるいは潮打瀬網への移行型、漕刺網は吾智網に近い特徴がある。

     漕刺網は限られた場所にいる魚を漁獲するのに適している。しかし、資源を浪費する可能性があり、 漁期を制限したり、禁止している地方が多いので、見る機会が少なく、またそれを見ても、曳き回し中であれば 底曳網に見え、揚網中であれば普通の底刺網にしか見えなく、見過ごす可能性があるので、ここに示す。

     底魚類が多いと考えられるが海底の平坦な地点が漁場となる。これは狭くてよい。先ず、目印とする旗を 付けた大きな錨を投入し、それに短い曳索と数反の刺網を伸ばしながら投入する。その船に近い方の端に 丈夫な曳綱をつけて船に結ぶ。

     一般に刺網は浮子と沈子の両方または一方が少ない。網丈は使い方に応じて変化に富む。漕刺網は丈が低い。 漕刺網に使う網の概形は普通の刺網と似ているが、詳細は異なる。それはNo.6以後の写真をみれば分かる。

    No.1
    [No.1: ft_image_14_13/image001.jpg]

     旋回曳網開始直前の写真である。

     船の少し上に見える赤と黒の旗は、中心となる錨の位置で、これを中心に、この写真では左回りに旋回 しながら円周に沿って曳網する。(網は半径の方向になる)

     これは、旋回曳網を開始するために、船位と船首方位を調整している段階なので、旗の方向は正横から外れている。

     以後の写真では、曳索の張り具合から、それに力がかかる方向と大体の大きさを推定し、船尾の波から推進速度、 船首の波から船の対水速度を見ると、その船が何をしているかが分かり易い。波の方向または背景を見ると、 船首方位の変化を知ることができる。静止画像を見るときに常にこれらを考えるようにして欲しい。

     普通の刺網漁船ではネットホーラーは右舷船首付近にあり、シャフト駆動か油圧駆動である。この船では ネットホーラーは船尾にあり、ベルト駆動である。これは種々の理由により付け外しできるように作ってある 可能性がある。

    No.2
    [No.2: ft_image_14_13/image003.jpg]

     曳索は左舷がわに伸び、機関室の前にある太くて短いマストのやや高い位置に取り付けられる。曳索に大きな 力がかかっている。このような場合、船の旋回の支点近くで支えると船を小半径で旋回させやすい。

     曳索を巻くドラムから乗員の右手近くにこのドラムのコントロールハンドルが伸びる。

     乗員の右手から伸びるやや細い索は、曳索の分岐で曳索を巻き取るドラムにつながる。これは旋回曳網を 終わって揚網する際に、曳索を船尾のネットホーラーを越えてドラムに導くためで、曳網中には力がかかっていない。



     船尾と左舷の波から、この船は大きな力で推進し、スリップしながら左に旋回し、船首方向への対水速度 は大きくないていることが分かる。

    No.3
    [No.3: ft_image_14_13/image005.jpg]

     旋回曳網を終わり、曳索を船尾に回すために曳索の方向が変わったところである。

    No.4
    [No.4: ft_image_14_13/image007.jpg]

     曳索を船尾に回わし、ドラムに巻き込む直前である。

    No.5
    [No.5: ft_image_14_13/image009.jpg]

     曳索をドラムに巻き終わる。網の端が揚がってくる。揚げやすくするために、船は後進をかけている。 (船はNo.1におけると反対の方向を向いている。)旋回曳網中、舵は下ろしてあったが、揚網中は引き揚げる。

    No.6
    [No.6: ft_image_14_13/image011.jpg]

     網が揚がりはじめる。網には刺網の特徴である長い浮子を使う。この網は網裾を海底に密着させて曳き回すために、 鉛の沈子が付いている。それは普通の刺網におけるよりも大きく、多い。

     網を揚げ易くするために船は後進をかけるか、後方に引かれている。

    No.7
    [No.7: ft_image_14_13/image013.jpg]

    No.8
    [No.8: ft_image_14_13/image015.jpg]

     網船は先の写真と同じ方向を向いているが、反対舷の写真を撮るために、撮影している船が反対側に回り 込んだので、船首は右になる。

     これらの写真では、ネットホーラーが船尾にある以外、普通の底刺網における作業と変わらない。

     


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