FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第1部
    14 刺 網
    15 曲建網の操業




     下関市の響灘側では、曲建網(マゲタテアミ、建網とは下関地区における底刺網の呼び方である)という 刺網の変わった使い方がある。これは型から見れば小型の定置網のように見えるが漁獲機構を考えると刺網である。

    No.1
    [No.1: ft_image_14_15/image001.jpg]

    No.2
    [No.2: ft_image_14_15/image003.jpg]

    No.3
    [No.3: ft_image_14_15/image005.jpg]

    No.4
    [No.4: ft_image_14_15/image007.jpg]

    No.5
    [No.5: ft_image_14_15/image009.jpg]

    No.6
    [No.6: ft_image_14_15/image011.jpg]

     定置網でいう垣網に相当する刺網を海岸線から沖に向かって入れる。その先端に定置網でいう運動場に 相当する刺網を入れる。これらの写真ではそれらの浮子が見える。(拡大すると分かり易い)

     両者とも刺網でできているが、それらの機能と構造が全く異なる。垣網に相当する部分の刺網は魚群の 移動を妨げ、魚は運動場に相当する刺網に刺さるか絡まって漁獲される。

    No.7
    [No.7: ft_image_14_15/image013.jpg]

     この刺網を扱う漁船で、普通の刺網を扱うこの地方の漁船と同じである。右舷船首付近にネットホーラが 設置されている。初期の頃のネットホーラは左舷がわに懸けたベルトで駆動されていたが、現在では油圧 駆動である。設置した1日から数日後に網を揚げる。これは運動場に相当する部分だけを揚げながら漁獲物を 外すか、漁獲物を外しながらこの部分だけ揚げ入れなおすか、あるいは垣網に相当する部分を含め網全体を揚げて、 他の地点に設置しなおすかは、漁獲量によって異なる。定置網と異なり土俵や多数の錨で網を固定していないので 移動は簡単である。

     網を運ぶ際に船体に絡まないようにするために、機関室前の網を積み重ねる部分にはキャンパスを敷いてある。

    No.8
    [No.8: ft_image_14_15/image015.jpg]

    No.9
    [No.9: ft_image_14_15/image017.jpg]



    No.10
    [No.10: ft_image_14_15/image019.jpg]

     垣網に相当する部分に使う刺網である。この地方で普通に使われる刺網と、次の点で全く異なる:
    (1)網糸は太く、これでは沿岸の磯魚類はほとんどかからない。
    (2)網丈は高い。
    (3)浮子・沈子ともに多い。

     網裾の約1/4は太い糸で作られ目合いは大きい。これは、この網は岩礁地帯に設置されるので、障害物や 海藻がかかりにくくするためである。

     沈子綱は左撚りと右撚りの2本でできており、やや大きな力がかかっても撚れないように配慮されている。 その1本は縁綱として機能し、網をかけてある。もう1本は沈子綱として沈子を通してある。

     運動場に相当する部分で、魚を刺させるか絡ませて漁獲する部分は普通に使われる三重刺網か、 上半分は太い1重網、下半分が三重刺網である。

    No.11
    [No.11: ft_image_14_15/image021.jpg]

    普通は、No.1―No.6に示すように、岸近くから沖に向かって垣網に相当する部分を投入し、その先端に運動場に 相当する部分を投入する。以下に示す写真ではこの反対であり、崖が切り立ったこの地点独特で、一般的でない。

    No.12
    [No.12: ft_image_14_15/image023.jpg]

     普通の刺網をほぼ直線に投入するためには、航走する船の船尾から繰り出される。しかし、この地方において 小規模の刺網を投入する場合は左手に網の束を持って右舷船首付近に立ち、少し余裕を持たせながら右手で 網を繰り出す。

     垣網に相当する部分は網丈が高いので、この写真に示すような方法で投入される。

    No.13
    [No.13: ft_image_14_15/image025.jpg]

     運動場に相当する部分は左旋回をする船の左舷から投入される。

    No.14
    [No.14: ft_image_14_15/image027.jpg]

     旋回しながら投入された網を示す。この部分は普通の刺網と同じであり、ゆっくりと沈む様子と浮子の形と 間隔等が分かる。

    No.15
    [No.15: ft_image_14_15/image029.jpg]

     これは設置場所を変えるために運動場に相当する部分を揚げている写真である。

     網は船首右舷側とそれに沿ってネットホーラの下に付けられた短い竹竿の間を通って、ネットホーラで揚げられ、 整理されながら船首と機関室の間に積み重ねられる。漁獲物はネットホーラを通った後で網から外される。


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