FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 2 部
    15 底曳網
    12 箕島における底曳網漁船




     箕島は有田川の川口を利用した漁港で、紀伊水道の奥にすむ底魚類を対象とした巨大な底曳漁業の船団の 根拠地である。ここの漁船は、日本では「板曳き」と呼ばれ沿岸の小型底曳網漁業に含められるが、漁法的には 小型トロールであり、沿岸漁業の漁船とみなせないくらい進歩した計器類と揚網設備を装備している。 その船団の概要をこの写真集としてまとめた。

     大部分の写真は1980年に撮影したものである。その後数回見学し、その都度撮影した。木造船はほとんど なくなったが、それ以外には大きな変化は見られなかった。

       川口の最も近くにある市場で漁獲物を水揚げした後は、船型ごとにいくつかの船溜りに分かれて繋がれるので、 船団の全貌を示す写真は撮れない。

    No.1
    [No.1: ft_image_15_12/image001.jpg]

     これは一番奥の船溜りの写真で、No.2からNo.4に示すような木造船が停泊する。

    No.2
    [No.2: ft_image_15_12/image003.jpg]

    No.3
    [No.3: ft_image_15_12/image005.jpg]

    No.4
    [No.4: ft_image_15_12/image007.jpg]

     太い木材で建造した船で、現在では建造できないだろう。船首には唐草模様が見られる。これは、西日本では 古くから見られた習慣である。甲板はやや大きく反って、船首は船橋の上端とほぼ同じ高さになる。日本海で 操業する漁船の中には、荒れた海に向かうために、船首が船橋と同じ高さまで上がっている船を見かける。 しかし、太平洋岸ではそうする理由はない。

     西日本の漁船に見られるもう1つの特徴は船首材が立ち上がっていることである。これは、近くや瀬戸内海の 漁船では現在も残っている。しかし、ここの漁船には、この特徴は見られない。

     中央に太い丸木で作ったマストが見られる。

     漁労装置は後から示すFRP製の船と変わりない。すなわち、ほとんどの船は直径化約1mの規格化されたドラムと、 デリックシステムを備え、金属製の横長平板オッターボードを用いる。

    No.5
    [No.5: ft_image_15_12/image009.jpg]

     古い船体を使っているが、必要な装備は必ずしも古くない。例えばこの写真に示す船のように、 木造の船体を用い、ユニット化した設計のFRP製の船橋と機関室を付ける。それには、外から見ただけでも、 レーダと旋回式の丸窓が付いている。

    No.6
    [No.6: ft_image_15_12/image011.jpg]

    船橋の中から前方に向かって撮影した写真である。船橋には近代的な機器が装備されている。 左端に見えるレーダの前には船橋からリモートコントロールできる高速ディゼル主機の制御盤、舵輪の前にある 磁気コンパスの上にはマグネットオートパイロット(写真では羅盤の中心の上にある白いツマミが目立つ)、 ラジオオートパイロット(舵輪との間にある箱、小さな町でもラジオ局はある。その発信方向を利用する)、 その左には魚探(ダブル幅の記録紙は上下に分かれ、上には普通の魚探像、下には特定の深度幅の部分だけを拡大)が 備わっている。

    No.7
    [No.7: ft_image_15_12/image013.jpg]

    No.8
    [No.8: ft_image_15_12/image015.jpg]

    No.9
    [No.9: ft_image_15_12/image017.jpg]

    この船団が使う網の概型をNo.7からNo.9までに示した。

     No.7の写真はよくないが、No.8とNo.9が続いて1つの網になることを示すために上げる。

     網は著しく長く、ヘッドロープとグランドロープはともに細く、浮子と沈子ともに少ないことが特徴である。 袖網の目合いは少なくとも1脚の長さが30cmはあり(No.7)、身網の目合いも大きい。コッドエンドは長く、 船の2倍以上の長さである。少ない資材で大きな網を作り、それを小さな力で曳こうとすると、このような 構造の網になる。同じような構造の網は、この地方におけるシラス船曳網でも見られる。トロールでは このような網は地中海型として知られている。すなわち、古くから漁業があった世界の各地で知られている。

    No.10
    [No.10: ft_image_15_12/image019.jpg]

    No.11
    [No.11: ft_image_15_12/image021.jpg]

    No.12
    [No.12: ft_image_15_12/image023.jpg]

     先に(No.1)に示した船溜りから川口に向かっていくつかの船溜りがある。そのいくつかの写真を示す。 これらの船溜りでは、木造船が減り、次第に船橋部だけをFRPユニットで改装した船が増える。中には鉄船も見られる。 現在、この大きさの沿岸漁船には鉄船は珍しい。

    No.13
    [No.13: ft_image_15_12/image025.jpg]

    No.14
    [No.14: ft_image_15_12/image027.jpg]

    No.15
    [No.15: ft_image_15_12/image029.jpg]

    No.16
    [No.16: ft_image_15_12/image031.jpg]

     これらは、魚市場の最も近くで撮影した写真で、最新型であると考えられる船が写っている。  No.15は真横から撮影した写真で、船橋・機関室を含む各部分の配置と概略の大きさを示す。2人乗りである。 No.16について説明する。船はほぼ同型であるが、細部は1隻ずつ異なる。船体・上部構造ともFRP製である。 主な漁労装置として機関室の後に3基のドラムを備える。左右の小さなドラムは曳索を捲くため、中央の大きい ドラムは袖網と身網を捲くためである。金属製の平板オッターボードを使う。船尾には網を揚げるときに 擦れないようにするために、細いローラが付いている。このローラには網が左右にずれないようにいくつかの ツバが付いている。




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