漁業技術の画像集・FishTech
著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Back to: Top Page |
FishTech 目次 | ご覧のページ
|
第 2 部 15 底曳網 23 彦島におけるエビ漕網漁船 下関市の響灘側には6つの漁協がある。それらはほとんど同じ海域を漁場とするにもかかわらず、 主な漁法は漁協ごとに異なる。ほとんどのエビ漕網漁船(手繰第2種)は彦島漁協に所属し、地先の響灘に出漁する。 そのために対波性が要求される。 また、同じ山口県でも、瀬戸内海側とは伝統が異なる。したがって、同じエビ漕網漁船でも基本構造が異なる。
![]() [No.1: ft_image_15_23/image001.jpg]
No.2
小型で底刺網や一本釣に従事する船(No.10の向かって右側)もあるが、ほとんどの漁船は エビ漕網漁業に従事する。これらの船の中には季節的にイカ巣網(イカカゴ)漁業に従事するものもある。 しかし、それらでも主な漁法はエビ漕網である。
![]() [No.3: ft_image_15_23/image005.jpg]
No.4
No.5
瀬戸内海岸でこの漁業に従事する船は、肩幅が広く、乾舷が高い。その上端には船外まで張出して木甲板が張られ、 それは磨き抜かれている。曳索はドラムに捲かれる。船尾にはパイプを組立てた櫓があり、それによって網を引揚げる。 しかし、ここの漁船はそれらの特徴を備えていない。すなわち、甲板は反って船首部は高い。網は右舷中央付近で 揚げるので、船尾には網を引揚げるため櫓はなく、乾舷が低い。漁獲物が入った袋網は機関室の前にある太い マストで揚げられる。 機関室の後に機関室より高い操舵用の囲いがある。これは後方が開いており(No.4)、三方だけが囲われる。 船首が反って高く、ここまででは船首の前方が見えないので、更にもう一層高い船もある(No.5の向かって右側の船)。 普通は機関室に前から出入りするか通風するための戸はない。 船体の後半のブルワークは、低く型だけである。一部の船(No.1の船尾だけが写っている船とNo.5)の船尾 ブルワークトップには、曳索を止める窪みが並んでいる。これは曳索の開角を調整するためと、横風を受けながら 曳網するとき曳索を止めるために使われる。 入港中の船では、網はマストに吊上げられ、船首に渡して干される。
![]() [No.6: ft_image_15_23/image011.jpg]
|
網口を広げるビームは右舷外側に吊られる。これは船体よりも短い。
![]() [No.7: ft_image_15_23/image013.jpg]
![]() [No.8: ft_image_15_23/image015.jpg]
![]() [No.9: ft_image_15_23/image017.jpg]
No.10
No.11
船尾も、低いブルワークで囲まれた船(No.3)、それに曳索を止める窪みが並ぶ船(No.1とNo.5)、 船尾一杯に長いローラを備えた船(No.11)、船首と同じようなアンカーデービットを備えた船(No.6)等変化が 大きい。それに応じて曳索を扱う手順が異なる。No.9に写っている船では、機関室前端左舷側には細いブームがある。 これは細いのであまり力のかからない作業以外には使えないだろう。 No.11の外側の船では挟みドラムを併用する。内側の船では船尾に立てた短い棒によって曳索の位置を調整する。
![]() [No.12: ft_image_15_23/image023.jpg]
このように、同じ漁港を根拠とし、同じ漁場で同じ魚種を対象として操業している漁船でも、船主の考え方や 建造された年によって詳細が船ごとに異なる―その結果として作業パターンが異なる―ことは興味深い。
|