漁業技術の画像集・FishTech
著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
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第 2 部 16 船曳網 12 在来型の船曳網の操業(和歌山県田辺市) シラス船曳網は、1970年代の半ばまで在来型が残っていた。これは網を積んだ2隻の無動力船と2隻から3隻の 小型動力船を使う漁法である。動力船2隻の場合は1隻が魚探を使って探魚に当たり、その間もう1隻は漁獲物を 陸まで運ぶ。魚群が見つかると1隻ずつの動力船が1隻ずつの網船を曳航して投網に当たる。3隻の場合は1隻が 探魚に専念し、1隻は漁獲物を陸まで運び、もう1隻は2隻の網船を曳航する。魚群が見つかると、この船と漁獲物を 陸まで運んだ船は1隻ずつの網船を曳航して投網に当たる。 無動力船を使って大きな網を投網し、ほとんど人力だけで引揚げる。このような漁法は、日本や世界の昔から 漁業が盛んであった地方において見られる。 日本では1970年代の半ばの数年間に一斉にドラム式に変わった。漁村における労働力の不足によってドラム化が 行われ、網の基本を残しながら、操作法は全く変わった例としてあげる。また、これは伝統的な技術の集積の例 としての意味もある。
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No.2
漁船登録番号のWK4は和歌山県籍の5トン以上の無動力船を意味する。 網はこの大きさの船2隻に積載できる限度に近い大きさである。 投 網
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これは漁獲物を陸まで運び、漁場にもどってくる船の写真である。
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2本の曳航索が動力船からでている。動力船の右舷中央には魚探のトランスデューサを引揚げてある。
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No.7
No.6では長い曳綱があり、網の部分によって大きな目合いの網地からモジ網までに分かれていることが分かる。 No.5では2本の曳索で曳航していたが、これらでは2隻を舫ったまま1本の曳索で曳航している。いずれにしても、 舫ったままで縫合わせた網を載せてある程度以上の速度で曳航するには、細心の注意と熟練が必要である。 以後の写真から、乗組員数と年齢が推定できる。すなわち、この漁業は漁村における老人が限られた漁期に 行う漁業である。
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No.9
投網開始地点に到着すると、大きな浮子(写真では黒とオレンジ色)がついた袋網が投入される。袋網を 入終わるまで直進し、次いで左右に大きく開き曳航されながら身網を投入する。
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身網部の投入 乗組員の間の船尾付近に浮子綱を引揚げるためのキャプスタンが見られる。漁船登録番号の WK5は和歌山県籍の5トン未満の無動力船を意味する。
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2隻の網船が左右に分かれ、身網を投入している。
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揚 網 ![]() [No.15: ft_image_16_12/image029.jpg]
No.16
以後の写真では、袋網に近づくに従って目合いが小さくなって行くことが分かる。このように袖網付近を 大きな目合いの網で作り、次第に小さな目合いにすると、限られた材料で大きな網を作り、限られた力でその網を 動かせる。また、推進力によって網を曳くよりも、船を錨で固定して曳寄せる方が限られた力で大きな網を曳ける。 この考え方は日本や世界各地の古い底曳網(かけまわし)に見られる。このように一見時代遅れのような漁法でも、 伝統的な知識の累積がいたるところに見られる。 No.15では、網を曳くときに船が曳込まれないように、網の反対の舷から錨を打ってあるのが分かる。 曳綱を曳いている。 No.16は袖網のはじめ近くを揚げている。
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No.18
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No.24
それらは水面近くで小さな群を作って泳ぐので、網の一部を水面下に下げて逃がす。
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漁 具
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内網には工業用のチャックがつく。これは網の横方向に開く。外網にも工業用のチャックがつく。 これは網の縦方向に開く。 コッドエンドを縦に開けて漁獲物を取りだし、それを縫合わせて使う方法は、日本における伝統的な底曳網 でも見られた。
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