漁業技術の画像集・FishTech
著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
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第 2 部 17 トロール 12 トロール(2) トロール船とその操業・スリミプラントは、ファイル「トロール」・「スリミ工船の試験操業」・ 「スリミ工船の漁法」・「スリミ工船プラント」に示した。 それらのいずれにも組込まれなかった写真をこのファイルにまとめた。したがって、このファイルの内容には 一貫性がなく、大型のスタントローラが珍しかった時代の写真が多い。
![]() [No.1: ft_image_17_12/image001.jpg]
No.2
No.3
No.4
No.1はスタンランプ上端付近から船橋に向けて撮影した写真である。 手前左半分にはスタンランプ上端の安全扉が写っている。ある時期までは、この安全扉はなかった。揚網中には、 水中にある網がシーアンカーのように働き、結果として船は船尾から風を受ける方向に向く。したがって船尾から 波が打込みやすい。また、移動中でも船尾から風を受けると波が打込まれるので、安全対策として扉が設けられた。 画面中央にトロールウインチが見られる。日本のトロール船では、トロールウインチは、船を横から見ると 中央よりやや前にある。 トロールウインチの中央にはセンタードラムがあり、大きな力が必要なときにはこれが使われる。 網が大きくなり、人力では扱えなくなったので、インナーブルワークの外側各所に分散するウインチが 頻繁に使われていることがこの写真から伺える。 トロールウインチの型は外国船では変化に富むが、日本船ではほとんどがこの型である。 船橋には甲板上における作業を見ながら操船できるように後に向けて窓がある。これは他のファイルでも示した。 No.2では、手前が前、No.3では左が前である。網の構造の概略とヘッドロープとグランドロープの 大きさを示す。No.3に写っているのは岸壁にある倉庫の2階で、出港準備ができたスリミ工船における 甲板の高さがわかる。 No.4は船橋の後方を見る窓から甲板を見下ろした写真である。初期のスケトウダラ用の着底及び中層兼用網の 規模がわかる。 画面の下縁にはウインチ集中コントロール室の天井が写っている。 スリミ工船がなくなる頃には、網はロープトロール(No.20?No.22)に変わった。 遠景(画面上端中央付近)には、3,500トン級の、当時としても旧式のトロール船の船尾が写っているので、 両者の大きさの違いがある程度分かる。
![]() [No.5: ft_image_17_12/image009.jpg]
No.6
No.7
No.8
No.5では、中央にそのときに使用していた網が見られる。これはNo.1からNo.4に示した網と異なり、冷凍原料 にする魚(主にアラスカメヌケ)を漁獲するめの着底網である。インナーブルワークの両方の外側にも網が見られる。 操業中には甲板で働く作業員を風波から保護するためにブルワークの上の起倒式ハンドレールにはキャンパス を張ってある。高緯度で操業する外国のトロール船では、舷側に沿って倉庫を兼ねた高さ2m位の壁があり、 作業する乗組員は風波から保護されながら甲板で作業をする(東ヨーロッパ系のトロール船、Uruguayで見られた 漁船を参照)。 No.6は、まだ有線式のネットレコーダを使用していた時代の写真である。船尾に近い方の鳥居型マストから 左舷にブームを張出して、それから受波器(通称飛行機)を下げる。航走中と投揚網中には受波器は揚げられる。 網が大きいので、網の小修理等のために網を動かすときにはウインチが使われる。 No.7は沖合底曳船におけるネットレコーダの受波器の写真である。No.6では有線式受波器の構造が分かり にくいので追加した。これが使われた期間は短く、送受波器は船底固定式になった。 No.8は洋上荷役の写真である。右は1,500トン級の高速冷凍運搬船、左は3,500トン級の冷凍トロール船である。 冷凍運搬船は高速で走行するので、倍のトン数のトロール船よりも長く、甲板は低い。トロール船は2層甲板に なっているので、舷は高い。2隻の間でローリング周期が異なるので、海は静かでも、両方の船が内側に傾く ときには冷凍運搬船がトロール船の下に入込みそうになる。反対に両方が外側に傾くときには大きな力がかかる。 両方の船のローリング周期の整数倍の長い周期でこのことが起こり、起こりはじめると次第にひどくなり、 かなり長い間続く。
![]() [No.9: ft_image_17_12/image017.jpg]
No.10
No.11
No.12
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No.9はトロールウインチが大きいことを示す。この船の甲板はNo.1に示した。 No.10はウインチ集中コントロール室を船橋後面の窓から写した。すべてのウインチは、ここにいる最も 熟練した乗組員1人によって操作される。網が大きくなり、人力で動かせなくなったので、部分的に吊上げる ときでもウインチが使われる。そのために、ハンドル数が示すように、ウインチが多い。 船橋後面から見通せるように天井と全側面前面は透明であり、トロールウインチと甲板を見通せるように 後面(甲板側)は足元まで透明である。この透明の天井を通して、船橋後面からもトロールウインチを 見通せる。 No.11とNo.12は、No.9とNo.10との比較のために、3,500トン級の冷凍トロール船のそれらを示した。 トロールウインチはやや小型で、ウインチコントロール室は小さい。No.11とNo.12を比べると分かるように、 インナーブルワークの内側のトロールウインチの前の部分には仮設デッキを張ってある。 投揚網作業は、船と網の大きさにかかわらず基本的には同じであるが、ウインチははるかに少ない。 この違いは船の大きさと建造した年の他に、次のことによる。3,500トン級の船は、日本のトロール船が Las Palmasを根拠として浅い漁場において多くの魚種を対象として建造された。5,000トン級の船はベーリング海 の深い漁場においてスケトウダラの単一魚種を多量漁獲する目的で建造された。また、3,500トン級の船が建造 された時代には日本では中層トロールは実用化されていなかった。 トロールウインチはドラムの大きさによって巻くことができるワープの長さがきまり、ワープ巻取り速度と 最大出力によって目標としている網の大きさと操業水深の見当がつく。すなわち、建造目的がある程度わかる。 したがって、トロール漁業の全盛期には、その構造と規格は秘密にされていた。
![]() [No.13: ft_image_17_12/image025.jpg]
網が海底障害物にかかると、ワープの振動、ワープにかかる張力、ネットレコーダの像からすぐに分かる。 このときにトロールウインチのブレーキを開放し、船が後進すると網を破らなくてもすむ。
![]() [No.14: ft_image_17_12/image027.jpg]
No.15
![]() [No.16: ft_image_17_12/image031.jpg]
No.17
No.18
No.17からスタンランプの傾斜が分かる。 No.18に示すように、日本のスタントローラでは、船尾からコッドエンドを引出して網を落す装置の上は、 expand metalを張ってあり、その上で作業をできるようになっている。外国のトロール船では、先端に滑車が ついた簡単なポールだけのことが多い。
![]() [No.19: ft_image_17_12/image037.jpg]
No.20
No.21
No.22
![]() [No.23: ft_image_17_12/image045.jpg]
No.24
ソナーを装備していた。スリミ工船は各会社を代表するような船であり、当然建造当時における最新式の 計器類を装備した。しかし、当時の日本にはサーチライト式ソナーしかなかった。
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