FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 5 部
    13 チュニジアの漁業



        1976年11月から12月にかけて、チュニジアのMahdiaに国立漁業センターを設立するための事前調査団に参加した。 この機関は政府の職員と水産関係の再教育を目的と考えられていた。その基礎資料を集めるために、北はBizerte から南はJerba島までのチュニジアの海岸線のほぼ全体にわたって、主な漁村・水産関係の教育機関と政府機関を 訪問した。その際に撮影した写真を取りまとめたものある。

     その後25年を経ているので、現在ではかなり変化した漁業もあれば、ほとんど変わっていない漁業があると 考えられる。また、消滅した漁業があるかもしれない。この写真集は、それらを知るためである。

     159枚の写真は、次の5つのフォールダーに分け、MicrosoftのWordで入れてある。
    1. トロール
    2.Lampara net
    3.その他の漁法
    4.利用・加工・流通
    5.政府の機関と教育研究機関
    付録  チュニジアの地図


    トロール

    No.1
    [No.1: ft_image_5_13/image001.jpg]

    No.2
    [No.2: ft_image_5_13/image003.jpg]

    No.3
    [No.3: ft_image_5_13/image005.jpg]

    No.4
    [No.4: ft_image_5_13/image007.jpg]

     この国のトロールは地中海型である。地中海型の網はNo.4に示すように著しく長い。船は舷が高く、船橋は前に 片寄り、前の約2/3は居住区になり、後部1/3が作業甲板になる。

    No.1 地中海型のトロール船 (La Goulette) この船は鉄船で、どちらかと言えば近代的とみなせるが、先の 特徴を備えている。方向探知機とレーダを備えている。しかし、これらは他の船にはほとんど付いていない。

    No.2  地中海型のトロール船 (La Goulette)

    No.3 Kelibia港に入港中の地中海型トロール船 この船はKelibia水産高校(チュニジアの水産高校中では最も 水準が高いと言われる)の練習船であり、実習に重点を置くこの国では、学生は在学期間のほぼ半分をこの船で 過ごす。学校はこの港に面する(政府機関等No.11)。正面はフェニキア・カルタゴ・ローマ時代の砦で、ここから シシリア島が見える。

    No.4  地中海型のトロール網  網は著しく長く、袖網の先端は大きな目合いであるが、身網に近づくに従って 目合いは次第に小さくなり、コッドエンドの目合いはかなり小さい。網の長さに比べて、ヘッドロープと グランドロープは短く、比較的細い。これは、限られた力で大きな網を曳く方法の1つである。日本でも、 地中海型トロールと似た考え方の網が和歌山県の箕島等で見られる。

    No.5
    [No.5: ft_image_5_13/image009.jpg]

    No.6
    [No.6: ft_image_5_13/image011.jpg]

    No.7
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    No.8
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    No.9
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    No.5−No.8 トロール最大の根拠地Sfax

     これまでに示した船はいずれも鉄船だが、チュニジアには大きな木造のトロール船も見られる。

    No.5  入港中のトロール船  拡大すると、地中海型のトロール船の船型の特徴が見られる。

    No.6 出港中の沿岸漁船  肩幅が広い。チュニジアでは、小型漁船でも主機関として船内据付け型の低速 ディゼルを備える。大きさの割に出力は小さいが、自力で修理できる特徴があり、これが堅実な国民性に適している。

     三重刺網を使う。ネットホ−ラはない。この船は5人乗りである。反数は多くないが、このように多人数乗り 組むことがチュニジアの沿岸漁船の特徴である。

    No.7−No.8  地中海型のトロール船の特徴を見るために付加えた。

    No.9  基本的には地中海型トロール船の特徴を備えている。伝統的な地中海型トロール船ではSfaxに停泊して いる船に見られるように、船尾は丸い。しかし、この船では角型で、無動力のローラがある点が進んでいる。


    Lampara net

    Lampara net(=Lamparo)と呼ばれる巻き網は、地中海起源で、日本の揚繰網と似ている。網船・1隻か2隻の 灯船・運搬船等が1組になり、灯火を利用して浮魚類を漁獲する。このような形態の漁業は、漁船が動力化する 前から漁業が盛んであった他の国でも見られる。

     夕方に出漁し、1晩中集魚灯を点灯してイワシ類を集める。夜明け近くになると、少し離れたところに網船 が網を設置し、その上に集まった魚群を誘導して漁獲する。

       その漁獲物はいわゆるアンチョビー(醗酵させた塩蔵の小型イワシ類)に加工されるか、日本の煮干に似た 型に加工され、国内で広く消費される。例えば、ほぼ1日に1回は食べるチュニジア風サラダには1尾か2尾の アンチョビーが付いている。煮干は地方の露店でもよく見られる。

    No.1
    [No.1: ft_image_5_13/image019.jpg]

    No.2
    [No.2: ft_image_5_13/image021.jpg]

    No.3
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    No.4
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    No.5
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    No.6
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    No.7
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    No.8
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    No.9
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    No.10
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    No.11
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    No.12
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    No.13
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    No.14
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    No.15
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    No.16
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    No.17
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    No.18
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    No.1  Lampara net漁業最大の根拠地であるMahdia港の遠景

    No.2  Mahdiaの魚市場

    No.3  1組のLampara netの船団  中央の2隻は灯船  左は網船

    No.4  1組のLampara netの船団  手前は灯船  やや大きい2隻は運搬船で、これらを曳航する。

    No.5  右の大きな船はトロール船  小さな船が1組のLampara net船団で、右との手前は灯船(水上灯が 見られる)、中央2隻は網船、左は運搬船

    No.6  灯船  低速ディゼルの主機が発電機の動力を兼ねる。水中灯を使う。

    No.7  灯船  2基の水上灯と1基の水中灯を使う。

    No.8  灯船  1基ずつの水上灯と水中灯を使う。この船型では速力はでないが、安定しており、作業をしやすい。 岸壁には、数統の網を揚げてある。Lampara netの網は長い袖網がある。これは端近くは大きな網目であり、 身網に近づくに従って目合いは小さくなる。身網はあまり大きくない。したがって、積み上げられた体積から 考えられるよりも長い。

    No.9  網船  先の写真にも見られるように、灯船とほとんど大きさは変わらない。船は小さく、網は船に 比べても小さい。右舷船首近くに簡単なネットホーラーを備える。(刺網漁船でも、この程度のネットホーラー を付ければ役立つと考えられるが、ネットホーラ−が付いているのは、Lampara netの網船だけである。)

    No.10  網船  右舷中央付近にはネットホーラーが見られる。

     遠景中央の桟橋には、網が見られる。中央の桟橋の反対側には数隻の灯船が繋いである。

    No.12  網船  網は船に比べて小さい。旋網系統と考えると網目は小さく、網糸は 細い。網の浮子は刺網に比べると多いが、他の国の旋網よりは少ない。これは、Lampara netには環締め装置がなく、 巾着網と操作法が異なるためである。

    No.13  陸上に広げられている網  色から考えるとLampara netである。

    No.14  マグロ旋網 (La Goulette)  ONP(政府機関等No.4とNo.5において説明する)輸入したが、漁労長が いないので、稼動していないとの説明であった。しかし、網の規模がマグロを狙うには小さ過ぎるし、魚函の 大きさ考えると、イワシ巾着網船の可能性がある。

    No.15−No.16  No.14に示した船の部分拡大である。Purse winch、purse davit、環をかけるピンはpurse seinerの特徴を備える。

    No.17  同船尾部 網は小さい。

    No.18  浮子は他の国における巻き網と同程度の密度である。


    その他の漁法

    No.1
    [No.1: ft_image_5_13/image055.jpg]

    No.2
    [No.2: ft_image_5_13/image057.jpg]

    No.3
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    No.4
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    No.5
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    No.6
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    No.7
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    No.8
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    No.9
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    No.10
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    No.11
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    No.1−No.11  INSTOP (Institut National Scientifique et Technique d’Oceanographie et de Peche) (政府の機関等No.6において説明する) はカルタゴにあり、観光客に見せるための展示室がある。そこには フランス時代に作られた各種漁船と漁具の模型がある。これらはその一部である。



    No.9  Madragueと呼ばれる大謀網の模型で、Sidi DaoudにあるONPの缶詰工場では当時も使っていた。

    No.10  ベランダネット  中近東からアフリカにかけて、ボラを漁獲する独特な漁法が多い。これはその 代表的なものの1つである。漁獲されたボラは、塩と交互にタルに詰められ、広く取引される。

    No.12
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    No.12  Jerba島では、草の蔓で作ったカゴを岩礁に入れ、ヤシの葉等で被って使う。

    No.13
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    No.14
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    No.15
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    No.16
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    No.17
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    No.18
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    No.13−No.18  海綿はチュニジアの代表的な輸出向けの海産物である。一部では潜水器漁業でも漁獲されるが、 Gangaveと呼ばれる帆打瀬網で漁獲される。Sfaxはチュニジア最大の海綿帆打瀬網漁船の根拠地である。網口は No.14−No.15に見られるオモリを兼ねた太くて長い鉄の棒で広げられる。機関は付いているが小さく、漁場まで の往復の補助に使われる。

    No.19
    [No.19: ft_image_5_13/image091.jpg]

    No.20
    [No.20: ft_image_5_13/image093.jpg]

    No.21
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    No.22
    [No.22: ft_image_5_13/image097.jpg]

    No.19−No.22  海綿の加工 (SfaxのONP) No.19とNo.20の左に見える黒いものが原料で、これを薬液で晒すと 漂白されて柔らかくなる。

    No.21−No.22  7kgずつ袋に詰めて、航空貨物として輸出される。

    No.23
    [No.23: ft_image_5_13/image099.jpg]

    No.24
    [No.24: ft_image_5_13/image101.jpg]

    No.25
    [No.25: ft_image_5_13/image103.jpg]

    No.23−No.25    細い枝で作った定置網  琵琶湖のエリと良く似た構造のものが、Jerba島に向かうフェリー から見られた。

    No.26
    [No.26: ft_image_5_13/image105.jpg]

    No.27
    [No.27: ft_image_5_13/image107.jpg]

    No.26 タコツボ  (Jerba島) 普及のために政府が漁民に無償で貸している。チュニジアの漁船はほとんど ラインホーラーを備えていないので、延縄方式で使われる可能性は低い。

    No.27  タコはチュニジアではよく食べられる。足を結んでかなりの時間地面に叩き つけたあとで調理すると柔らかくなる。その他にも、タコを結んだ干物が露店の市場で売られている。流通の No.40では秤の台に載せられているのが、その製品である。同じような製品が地方の露店でも見られる。

    No.28
    [No.28: ft_image_5_13/image109.jpg]

    No.29
    [No.29: ft_image_5_13/image111.jpg]

    No.30
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    No.31
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    No.32
    [No.32: ft_image_5_13/image117.jpg]

    No.33
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    No.34
    [No.34: ft_image_5_13/image121.jpg]

    No.28−No.34  刺網  刺網はチュニジアの沿岸における主要漁法の1つである。1隻が使う反数はまり多く ないが、1隻には4・5人が乗組む。船にはネットホーラーはなく、機関室の前に枠が見られることが刺網漁船の 特徴である。

    No.28 La Gouletteの漁港(Tunisの外港)  中央の桟橋に見られるほとんどの漁船は刺網を用いる。

    No.29  ここで見られるほとんどの漁船は刺網を用いる。刺網は使用後、かかっている海藻等を陸上で外し、 破れた部分を補修し、棚で乾かす等の設備が近くにあるはずだが、そのような設備は見られない(これは他の 漁港でも見られないので、この国ではこのような習慣はないと考えられる。) ほとんどは三重刺網である。

    No.30  三重刺網  浮子・沈子ともに少ない。

    No.31  Monofilamentの刺網 使ったままで置いてあった。

    No.32  三重刺網の補修(La Goulette)

    No.34  (La Goulette) これまで示した船にはネットホーラはなかった。この船にはその代わりに右舷船首 付近にプーリがある。この写真だけでは、Lampara netの網船の可能性が考えられるが、付近にはLampara netの 灯船等がなく、刺網船と考えられる。機関室の前に枠がある。これは他の刺網漁船にも見られるので、漁法と 何らかの関連が考えられるが、詳細は不明である。

    No.35
    [No.35: ft_image_5_13/image123.jpg]

    No.35  Kelibiaの漁港  手前の船にはネットホーラーがあり、Lampara netの網船の可能性がある。機関室の 前に枠がついた船があり、これらは刺網漁船と考えられる。

    No.36
    [No.36: ft_image_5_13/image125.jpg]

    No.37
    [No.37: ft_image_5_13/image127.jpg]

    No.38
    [No.38: ft_image_5_13/image129.jpg]

    No.39
    [No.39: ft_image_5_13/image131.jpg]

    No.36  (Sfax) ほとんどの漁船は船内据付けの低速Diesel機関を備える。しかし、Lateen sailを備え、 帆走する。この写真は刺網漁船である。使っている網はあまり多くないが、5人が乗組む。

    No.37  Lateen sailで帆走する刺網漁船(Sfax)

    No.38 刺網漁船(Sfax)  5人が乗組む。 このように1隻の船に多くの人が乗組むことがチュニジアの特徴 である。中央から船尾にかけて枠が3つ見られる。

    No.39 刺網  整理されていない。

    No.40
    [No.40: ft_image_5_13/image133.jpg]

    No.40  (Gabes)  CFPPの卒業生を漁業に定着させるために、政府がローンによって4人で1隻の漁船を作る ような制度がある。

    No.44
    [No.44: ft_image_5_13/image135.jpg]

    No.45
    [No.45: ft_image_5_13/image137.jpg]

    No.46
    [No.46: ft_image_5_13/image139.jpg]

    No.47
    [No.47: ft_image_5_13/image141.jpg]

    No.48
    [No.48: ft_image_5_13/image143.jpg]

    No.50
    [No.50: ft_image_5_13/image145.jpg]

    No.51
    [No.51: ft_image_5_13/image147.jpg]

    No.52
    [No.52: ft_image_5_13/image149.jpg]

    No.41  底延縄船  漁具の鉢は深い。この船にも刺網漁船と同じような枠がある。(刺網と兼業の可能性が ある。)ラインホーラがなく、3人が乗組む。

    No.42  ローンによって作られた漁船で5人が働く。

    No.43  底延縄漁船  (Gabes) 鉢は深く、1鉢の幹縄は長い。この船でも3人が働く。岸壁には刺網がある。

    No.44 刺網

    No.45 刺網による漁獲  4人で働いて、1日の漁獲はこれだけである。束ねたものを単位として売る。

    No.47  この漁船は帆走する。

    No.53
    [No.53: ft_image_5_13/image151.jpg]

    No.54
    [No.54: ft_image_5_13/image153.jpg]

    No.55
    [No.55: ft_image_5_13/image155.jpg]

    No.56
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    No.57
    [No.57: ft_image_5_13/image159.jpg]

    No.53−No.57  (Lac Tunis)  Bordigue チュニジアでは潟湖漁業も無視できない。潟湖の出入り口に 仕掛け、これらの写真に見られるように、上げ潮のときには網を張った枠を揚げて、潮とともに入る魚を入れ、 下げ潮のときに潮とともに流されてきた魚をNo.57に示した部分に集める。ONPの所有である。










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