FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 6 部
    25-01 Mar del Plataの漁船1 1983-85年
    [参考資料]



        Mar del Plataはアルゼンティン最大の漁業根拠地である。そこにある国立漁業学校に10回派遣された。 この学校は沿岸漁船の船溜りの近くにあるので、1週間に一度の割でそこに繋留されている船を見て回った。 その都度少しずつ新しいことを発見し、写真を撮り続けた。写真を通じて見ると、この間に自動釣機による イカ釣をする船が現れ、工船の姿が増えた。しかし、ほとんど変わらない船もある。

     この間の変化を取出すために、そのうちの1985年までをMar del Plataの漁船1、以後に撮影した写真を Mar del Plataの漁船2とした。それぞれの期間に撮影した写真の中から代表的と見られるものを取出し、 「解説」として説明を加えた。それらを画面に拡大表示するために「写真」とした。それら以外は「参考 資料付録」として収録した。

     No.1はMar del Plataの沿岸漁船の船溜りの写真である。写真に示すように、ここは広くないが、329隻の 沿岸漁船(平均船齢29.5年)と140隻の伝統的沖合漁船(平均船齢19年、いずれもFisheries Country Profile による1984年の値)の大部分が根拠とする。その他に少数の工船(平均船齢12.5年)と冷凍船(平均船齢15.5年) が出入する。

     全長25m以下の船体を黄色に塗ってある手前左の5隻は沿岸漁船、右の2隻はトロール船である。それより 遠景にも同じ型の漁船が見られる。右上の船体を赤く塗ってある船は全長25m以上の伝統的沖合漁船で、この 大きさの船は主にサイドトローラである。

    No.1
    [No.1: ft_image_6_25_01/image001.jpg]

     手前は全長25m以下の木造船である。平均船齢30年と言われるが、その割には傷みは少ない。’84年に撮影した。 平均としても’54年に建造されたことになる。当時の日本の沿岸漁船よりも遥かに進んでいたことになる。ヨーロッパ の沿岸でもサイドトロールの船型が盛んな頃に作られた。船橋の前の甲板にはトロールの網が見られる。船橋後端 にはパワーブロックが見られるので、巻き網も行う。探魚に関してマスト等の設備がなく、環締め装置がないので、 この船型のままで巻き網を行うのは奇異に感じられる。しかし、このことはNo.15の巻き網船の項で説明する。

     支索の一部は鉄ロッドになっている。動索はブレード化されているかどうかはこの写真では見分けられない。

    No.2
    [No.2: ft_image_6_25_01/image003.jpg]

     船型は全長25m以下のサイドトローラである。レーダを装備している。当時のアルゼンティンではレーダは 小型漁船にはあまり普及していなかった。トロールウインチと後部のギャロースは見られるが、前部のギャロース はない。1基であるがラジオブイを搭載しているし、付近に繋留してある船のほとんどはタイカゴ漁船なので、 タイカゴに転換していると考えられる。

    No.3
    [No.3: ft_image_6_25_01/image005.jpg]

     サイドトローラとして建造され、トロールウインチは残っている。しかし、甲板にはタイカゴを搭載してある。 トロールウインチの右ドラムの前に餌をすり潰す装置、左ドラムの外側にドラムと船橋左前の角に滑車を備え、 タイカゴ船に転換したことを示す。

    No.4
    [No.4: ft_image_6_25_01/image007.jpg]

     サイドトローラとして建造された船である。トロールウインチの左に餌をすり潰す装置がある。レーダーマスト に高い保護枠があり、船橋の上の右舷には三角の支柱を着けている。先の船と同様にタイカゴ漁船と並んでいたので、 タイカゴに転換したと考えられる。トロールウインチに巻いてあるワープは光っているのでトロールとしても 使われていることが分かる。後部ギャロースの付根付近に見られる網はトロールにしては小さ過ぎる。ここでは、 No.1の左に示した船でも巻き網でカタクチを漁獲するので、その網の可能性がある。

    No.5
    [No.5: ft_image_6_25_01/image009.jpg]

     No.2とよく似ている。ほぼ同じ位置に着いているが、No.2は夏、これは冬に撮った写真である。No.2の船では 船橋は黄色であるが、この船では一部を赤く塗ってあるし登録番号が違うので違う船であることが分かる。 このようにMar del Plataの船溜りに停泊している船はお互いによく似ている。

     No.7でも分かるようにこの船はドレッジを用いる。ドレッジは他の船では見られなかった。しかし、前ギャロース の外にオッターボードが見られるので、オッタートロールと使い分けている可能性が考えられる。

    No.6
    [No.6: ft_image_6_25_01/image011.jpg]

    No.7
    [No.7: ft_image_6_25_01/image013.jpg]

     Mar del Plataの沿岸漁船の船溜りで最も多くみられる船である。9月から12月までのカタクチイワシの漁期には 巻き網に従事する。これは8月に撮った写真なので巻き網の準備中である。

     ここで使われる巻き網は環締め装置がなく、小型のランパラネットと思えばよい。網は手前の船の船尾に見られる 程度の大きさである。昼間操業で、No.9に示すように魚の残屑を醗酵させて鱗と骨になったようなものを撒餌 として魚を集める。操舵室の前に見られる2基の黒い低いドラムはネットホーラである。その前に見られるドラム缶は、 巻き網の漁期外に他の漁法でエビを漁獲したときに船上でボイルするためである。

    No.8
    [No.8: ft_image_6_25_01/image015.jpg]

     No.8の手前から3隻目の船尾に見られるように、これが撒餌である。次の船には網が見られる。このような小さな 網でカタクチイワシを捲く。

    No.9
    [No.9: ft_image_6_25_01/image017.jpg]

     ネットホーラとドラム缶を示す。

    No.10
    [No.10: ft_image_6_25_01/image019.jpg]

     No.8とNo.10に示した船を船尾から撮影した写真である。船尾には撒餌を入れた箱が見られる。

    No.11
    [No.11: ft_image_6_25_01/image021.jpg]

     タイカゴ漁船である。No.3からNo.5に示した漁船に続いて着岸していた。これはMar del Plataで有名な漁法の 1つである。カゴは大きく、折りたためないので、1回に多数は扱えない。

     操舵室の前にトロールウインチがあり、後部ギャロースが見られる。元来はサイドトローラとして建造された船を、 この漁法に転用していると考えられる。

    No.12
    [No.12: ft_image_6_25_01/image023.jpg]



     船体は同じくサイドトローラだが、タイカゴを使っている。そのために、船首付近に支柱を増設している。

    No.13
    [No.13: ft_image_6_25_01/image025.jpg]

     遠景はNo.12からNo.14に示したタイカゴを使うサイドトローラが着岸している岸壁である。これは巻き網船が 繋留してある付近に着岸していた。このような小型船でもタイカゴを使う。船尾には巻き網を載せたままに なっている。

    No.14
    [No.14: ft_image_6_25_01/image027.jpg]

     ’85年は経済危機にあったが、それでも新造船は見られた。この船にはトロールの装備はない。右舷操舵室の 上にパワーブロックが見られる。漁具はまだ搭載していなかったが、タイカゴと巻き網のいずれかまたは両方を 目的に建造されたと考えられる。

    No.15
    [No.15: ft_image_6_25_01/image029.jpg]

     これも比較的新しい船である。船体を赤く塗ってあるので、25m以上のクラスである。船尾には巻き網を搭載 している。巻き網として建造されたのなら、船橋と機関室を前の方に作り、後部は広くあけておかなければならない。 魚群を探す見張台がない。巻き網の撒餌を作るタンクの近くに繋いであった。醗酵させた魚を撒いて魚を集める との説明であった。

        No.16
    [No.16: ft_image_6_25_01/image031.jpg]

     これは沿岸漁船の船溜りの外側の中型船の岸壁の写真である。伝統的沖合漁船とすれば、’84年で平均船齢19年 である。

     伝統的沖合漁船は、ヨーロッパ等からサイドトローラを輸入し、船尾で網を曳き、右舷から投揚網する操作を 行う。

     多くの船では前甲板で作業する人を風波から保護するために左舷側を船橋から船首楼まで続ける。手前から 2番目の船では左舷は高くなっていない。その前方にはスタントローラが見られる。

    No.17
    [No.17: ft_image_6_25_01/image033.jpg]

     甲板上はサイドトローラの面影がある。トロールウインチはサイドトローラのままである。左前のボラードから 船尾に向けてとセンターボラード右前ボラードを通って後ギャロースまで、ワープは太いパイプの中を通るように なっている。

    No.18
    [No.18: ft_image_6_25_01/image035.jpg]

     同じく、サイドトローラを使って船尾で網を曳くようにした船である。先に記したように左舷側を船橋から 船首楼まで続け、仮設の屋根をつけて甲板上で作業をする人を保護するように改装してある。

    No.19
    [No.17: ft_image_6_25_01/image037.jpg]

     これと同じような写真は他にも示した。しかし、それらは異なる時期に撮影したものである。左端の岸壁に繋留 してある船は、スタントローラであるが、他はサイドトローラである。塗装しなおしてあるが、他のファイルにある 写真と比べると、これらの船はかなり長期間全く動いていないことが分かる。

     他の同型の船は’84年でも平均船齢は20年に近く、故障しても修理する部品がないので、これらの船から外して 使うのだそうだ。

    No.20
    [No.18: ft_image_6_25_01/image039.jpg]

     スタントローラの写真である。これが冷凍船として分類されているとすれば、’84年でも平均船齢15年である。 アルゼンティンの漁船では電子計器類が少ない。このことは日本のスタントローラに比べてアンテナの数が極端に 少ないことからも分かる。

     スリット付きの楕円オッターボードを使う。前半の舷側は高い。しかし、後半では低く、北欧型のように舷側に 沿って狭い倉庫を作り、甲板上で作業する人を風波から保護するようにはなっていない。

     左外のSiriusVは左舷側を高く改装したサイドトローラである。

    No.21
    [No.17: ft_image_6_25_01/image041.jpg]

    No.22
    [No.18: ft_image_6_25_01/image043.jpg]

     舷側に沿って舷窓が見られるので、2層甲板の工船であることが分かる。他の船に比べて新しいように見えるが、 何年間か同じ場所に係船したままであった。

    No.23
    [No.17: ft_image_6_25_01/image045.jpg]

     沿岸漁船の船溜りの中には、写真の左上よりやや左にSea lionのハーレムがある(No.13の右上に写っている)。 これはMar del Plataの街のシンボルになっている。季節によるとsea lionは繋いである船の上で休んでいる。

     マストの前にタイヤを吊っている。動索の場合、衝撃を和らげるためと考えられるが、この場合支索を触合わないよう にする以外の機能は考えられない。

    No.24
    [No.18: ft_image_6_25_01/image047.jpg]

     沿岸漁船の船溜りに、ドック時期に船を吊り上げて載せるために作った設備である。その下がSea lionのハーレム になる。

    No.25
    [No.17: ft_image_6_25_01/image049.jpg]

     Sea lionが繋いである船に乗ったり近づくとこの犬が追払う。そのために漁師は魚をやってこの犬を飼っている のだそうだ。

    No.26
    [No.18: ft_image_6_25_01/image051.jpg]


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