FishTech - Photographs of Fishing Techniques
漁業技術の画像集・FishTech


著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Compiled by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan

協力者/水産大学校助教授 深田耕一
in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan


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    第 6 部
    25-08 Puerto Madrynで見られた漁船



       Puerto Madrynはアルゼンティン最大の漁業根拠地Mar del Plataの南西約540km (南緯42°45’、西経65°02’)、野生生物の宝庫であるValdes半島の付根、パンパの沃野が終わり、パタゴニアの 半砂漠が始まるところにある。この町は人口3万人といわれるが、市街地は小さく、漁業の他には、アンデス山脈 で発電された電力を利用したアルミニューム精錬工場以外に産業はほとんどない。

     アルゼンティンの工船と冷凍船の多くはこことさらに南のPuerto Deseadoを根拠とするという記載がある。

     これは軍政から民政に移る選挙の前日で、全船が帰港しなければならない日に撮影した写真である。写っている 漁船は少なく、ここに示すだけの船しか見られなかった。1986年の統計によれば、工船と冷凍船として44隻登録 されている。したがって、これでここを根拠とする全船であるとみなせる。

     Puerto Madrynは主要漁場に近い。その点で、前進基地としての意味は大きいが、潮汐の干満差が大きく、遠浅の 海岸から直角に長い桟橋を設けなければ船は着けられない欠点がある。2本の長い桟橋があり、市街地に近い方は 小型船(アルゼンティンでは法規によって、全長25m以下の漁船は黄色塗らなければならない)用で、遠くの桟橋は アルミニュームを積出す船と全長25m以上の大型船が用いる。

     No.1からNo.7までは市街地の近くの桟橋の全景である。No.4、No.5およびNo.7では、起重機の前に、以西底曳船が 見られる。これは日本独特の型の船で、舷側から投揚網していた時代には東シナ海で活躍していた。最も外側に 着いている船は典型的なサイドトロ−ル船である。日本ではサイドトロール船は35年以上前から完全に姿を消して しまった。

     桟橋の上を冷凍トラックが走っているし荷役装置が動いているので、どれかの船が入港したばかりであることが 分かる。Madrynを根拠とする漁船のほとんどの乗組員は、家族(あるいは生活の根拠)をMar del Plataに 置いている。彼等は入港すると直ちにMar del Plataに帰り、出港までそこで過ごす。小さな修理や補給等は メモを渡し、根拠地にいる専門の職員がそれに当たり、船とともに出港当日に受取る。この感覚は、日本の船員 と全く異なる。

     漁獲物の一部は、ここにある加工場(No.18からNo.20に示す)で処理され、大部分はMar del Plataまでトラック で陸送される。海岸線沿いには修理工場がない。すなわち、漁場までの近い利点はあるが、前進基地としての機能 の一部に欠ける。

    No.1
    [No.1: ft_image_6_25_08/image001.jpg]

    No.2
    [No.2: ft_image_6_25_08/image003.jpg]

    No.3
    [No.3: ft_image_6_25_08/image005.jpg]

    No.4
    [No.4: ft_image_6_25_08/image007.jpg]

    No.5
    [No.5: ft_image_6_25_08/image009.jpg]

    No.6
    [No.6: ft_image_6_25_08/image011.jpg]

    No.7
    [No.7: ft_image_6_25_08/image013.jpg]

     スタンランプはないが、船尾で曳網し船尾で網をあげる型のトロール船が見られる。

    No.8
    [No.8: ft6/ft_image_6_25_08/image015.jpg]

     桟橋の反対側にも船が着いている。3隻とも船体は赤く塗ってある。アルゼンティンでは法規によって、 全長25m以上の漁船は船体を赤く塗られる。着岸している船はいずれも船尾で曳網し、舷側から網を揚げる 方式で操業するトロール船である。アルゼンティンではサイトロール船の中古を買ってきて、このような使 い方をする。

    No.9
    [No.9: ft_image_6_25_08/image017.jpg]

     移動式のクレーンの他に固定式の荷役装置がある。(No.9のクレーンと白い建物の間にある黄色の建物、 桟橋はここらら先は広くなる。)この装置によって荷役をしている。



      No.10
    [No.10: ft_image_6_25_08/image019.jpg]

    No.11
    [No.11: ft_image_6_25_08/image021.jpg]

     この写真では、手前のサイドトロール船は右舷着け、その外側に左舷着けの船、前方に左舷着けにした船が 重なっているので分かりにくい。しかし、手前の船では、高緯度地帯で操業できるように、船橋より前の甲板は 投揚網をするのに必要な部分だけをあけて、船橋と船首楼を結び、中央より左舷側を甲板で被っている。

    No.12
    [No.12: ft_image_6_25_08/image023.jpg]

     パタゴニアは人口が希薄で、荷役の人手を集めにくい。したがって、人手を省くために、桟橋の先端にある 大きなクレーンと中程にある荷役装置の他に、簡単な移動式の荷役装置が見られる。しかし、前進基地であるのに、 機械類の修理施設がほとんどなく、これらの荷役装置まで修理が及ばない。

    No.13
    [No.13: ft_image_6_25_08/image025.jpg]

     No.14に示した簡単な荷役装置で荷役をしいていた。この魚は冷凍トラックで540km離れたMar del Plataまで 運ばれる。

    No.14
    [No.14: ft_image_6_25_08/image027.jpg]

    No.15
    [No.15: ft_image_6_25_08/image029.jpg]

    No.16
    [No.16: ft_image_6_25_08/image031.jpg]

     アルミニューム工場関係と大型船のための桟橋の遠景である。2隻の大型漁船が着岸しているのが見られる。

    No.17
    [No.17: ft6/ft_image_6_25_08/image033.jpg]

     Madrynの市街地の外れにある加工場の写真である。

    No.18
    [No.18: ft_image_6_25_08/image035.jpg]

    No.19
    [No.19: ft_image_6_25_08/image037.jpg]

    No.20
    [No.20: ft_image_6_25_08/image039.jpg]

     市内にある水産会社の事務所である。入口には
    Hoy, no hay lugar nuevo
    (本日、新たな空席なし)
    という掲示がでていた。それでも何人かは外に立っていた。

     アルゼンティンでは乗組員の入替わりが烈しく、少し仕事に慣れてくると辞める。そして、しばらくすると 職を探し始める。このような感覚はわれわれと全く異なる。ここはパタゴニアで人口は少なく、漁船の空席を 待っている間も臨時的な仕事が普通に見つかると考えられない。それでもやめる船員が多く、その反面では空席 待ちの人が多い。この掲示を見ると仕事に対する感覚がある程度分かる。

    No.21
    [No.21: ft_image_6_25_08/image041.jpg]


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