漁業技術の画像集・FishTech
著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
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第 6 部 25-09 Puerto Deseadoにおける漁船と 加工プラント Puerto DeseadoはBuenos Aires南南西約1,600km、パタゴニアのSanta Cruz州を流れるDeseado河の河口を利用 したアルゼンティン第2の漁業基地である。 アルゼンティン最大の漁業基地であるMar del Plataとの間にはNecochea・Puerto Madryn等があり、それら には小規模ながら加工プラントがある。しかし、多数の加工プラントを備えた基地は、ここまでの間にはない。 Mar del Plataは沿岸漁船と伝統的沖合漁船が主体であったが、Puerto Deseadoはそれに比べると工船と冷凍船 が主要漁場としている大陸棚に近く、大型船専用の漁業基地である。人口希薄なパタゴニアの陸上交通が不便な ところにあり、出入する大型船と加工プラントだけがある。漁獲物をドレスかフィレーに加工して輸出することを 目的とするアルゼンティンの漁業の特徴がよく現れている。 Puerto Deseado には日本との合弁会社の加工プラントがいくつかあり、独自の加工プラントを持つほどでない 規模の日系の合弁会社に所属する船が入港する。Mar del Plataには日系の商社から魚を買付にきた人を見うけるが、 日系の合弁会社の加工プラントは見られなかった。この点がMar del PlataとPuerto Deseadoとの大きな違いである。 ここの岸壁は日本の援助によって延長された。しかし、大型漁船の進出が急で、それでも岸壁は狭く、 2隻を並列に着岸させたりしなければならなかった。しかし、ここでは船尾着けの船は見られなかった。 このことは他の港でも共通して見られる。 ’87年の夏にここを見学した。わずか数日間の滞在であったが、写真を見ると、同じ位置における船の 入替わりが激しく、出入港する船と、積荷を降ろしたあとで直ちにシフトしなければならない船が多かったこと が分かる。 No.1からNo.8まではPuerto Deseadoの様子を示す。ここはパタゴニア砂漠の河口にあり、かっては羊肉の 積出港であった。街を外れると荒地が広がる。
No.1 左が河口である。
No.2 右が河口、対岸の左端は大型船の岸壁である。港の近く少数の加工プラントがあるが、加工プラントの多くは 右の街外れにある加工団地に集る。
No.3 河口に向かってPuerto Deseadoを写す。 給油基地は少し離れたところにある。
No.4 Puerto Deseadoから川上に向かって写す。中央に加工プラントが写っている。
No.5 河口に向かってPuerto Deseadoを写す。
No.6 近景は加工プラント、遠景右は大型漁船の岸壁、左には街があり、その先に加工団地がある。
No.7 港から少し離れたところに少数の加工プラントはあるが、岸壁の近くには漁具店はない。これはほとんどの船は 加工プラントの会社に属すか契約をして出漁しており、資材・燃料・食料はそこから補給を受けるからである。 アルゼンティンの習慣として、幹部船員は入港すると必要事項を書いたメモを陸上の係員に渡し、Mar del Plata やBuenos Airesにある自宅で出漁まで休む。積込みと修理等は別のチームが行う。
No.8 岸壁から対岸を写す。Puerto Deseadoは大型船の基地であり、沿岸漁船(船体を黄色に塗ってある)と伝統的 沖合漁船(遠景に見える船体を赤く塗ってある船)はほとんどいない。
No.9
No.10 No.11からNo.53までは、大型船の岸壁に着岸していた船を示す。 同じスタントローラでも、地域によって建造の基礎になる考え方が違い、それが型になって現れていることは 興味深い。 これらの船は、3つに大別される。第1は日本と韓国を中心とした東洋系のスタントローラで、かっては北転船 と呼ばれベーリング海で稼動していた船である。ほとんどはアルゼンティンに売却されたか、合弁事業の船で アルゼンティンに移籍し、船体は赤く塗られている。 イカ自動釣機を備えた船が目立つ。これはNo.61に示すように、自動釣機によって漁獲されたイカは傷みが少なく、 別に扱われるので、昼間にはトロールを行い夜間には自動釣機によってイカを漁獲する傾向が’86年以後に 見られるようになったためである。
No.11
No.12
No.13 手前の船はもと日本の北転船である。中層トロール用の縦長V型のオッターボードを使う。アルゼンティンでは、 ほとんどの船はスリット付きの楕円オッターボードを使い、この型のオッターボードはほとんど見られなかった。
No.14
No.15
No.16 入港していた船の中には、船体を赤く塗っていない船がある。これは、英国の許可を持ってマルビーナス諸島 (英国ではフォークランド諸島という)で操業中に、アルゼンティンの許可を持っていないために拿捕され連行 されてきた船である。
No.17 次の型はスペインを中心とする(南)ヨーロッパ系のスタントローラである。東洋系の船よりも船橋がやや後方 にあり、鳥居型マストの型が異なる。 第3の型は北欧あるいは東欧のスタントローラである。舷側に沿って狭い倉庫の壁を作り、甲板で作業する人達を 風波から保護するような構造になっている。第2と第3の型の船の中には船体を赤く塗っていない船が多く、入漁契約 によって操業している船であると考えられる。 なお、複数の船が写っている写真ではこれらが入り混じっている。
No.18
No.19 外側の船は合弁会社の船になった北転船である。
No.20
No.21 スペイン系の船で、ロープトロールが見られる。トロールウインチ周辺の構造は特徴的で、ブルワークは低い。
No.22 ダンレノボビンの写真である。これは日本のトロールでは使われなかった。
No.23 イカ自動釣機が目立つ。ブルワークは低く、トロールウインチ付近はスペイン系のスタントローラの特徴が 分かりやすい。
No.24
No.25 イカ自動釣機が目立つ。
No.26 ロープトロールを使うらしい。
No.27
No.28
No.29
No.30
No.31 網の一部にはブレードを使う。
No.32
No.33
No.34
No.35 ヨーロッパ系のスタントローラでも投揚網作業中は、船橋から後方の甲板を見ながら操船できるようになっている。 東洋系の船に比べてヨーロッパ系の船では計器類は余裕を持った配置になっている。
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No.37
No.38
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No.45 トロールウインチの他に、その前にいくつかのリールが見られる。中層トロールのために増設したと考えられる。
No.46 有線式ネットレコーダのキャプタイヤ巻取りドラムで、船橋のすぐ後にある。すなわち、ネットレコーダを使う ときには張力がかかった2本のワープと張力をかけてはならない1本のキャプタイアが甲板上を走ることになる。
No.47
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No.53 Puerto Deseadoには10を越える加工プラントがある。パタゴニアは人口が希薄で、加工プラントは作業員の 確保が難しいと考えられる。しかし、当時は深刻な経済危機にあり、北の地方から職を求めてパタゴニアまで 出稼ぎにくる人が多く、人手不足のために操業を縮小しているプラントは見られないとのことであった。 Buenos Aires等の大都市の雇用が好転するとどうなるか疑問である。 近くのGolfo San Jorgeでエビの漁獲が多かった。作業をしている人の中でエビを扱っているのが目立つので、 エビの重要性が分かる。しかし、エビの漁獲量は年変動が激しい。 次々にプラントを案内されたので、写真をプラントごとに区別しにくいが、まず建物を写して次に内部を写した。 建物には、ここが羊肉の積出港であった時代の駅舎や羊の集荷場を利用したものと、最近に作られた簡単な レンガ造のものがある。
No.54
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No.60 自動釣機で漁獲したイカは箱に表示してある。 カニカマが見られる。これは日本から輸入し、ここで包装して出荷される。
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