漁業技術の画像集・FishTech
著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
Back to: Top Page |
FishTech 目次 | ご覧のページ
|
第 6 部 25-13 アルゼンティンの国立漁業学校 (Escuela Nacional de Pesca) この学校の計画には、マルビーナス戦争(普通は英国流にフォークランド戦争と呼ばれる)後の1983年3月に 行われた実施協議調査団から'89年2月に行われたエバリュエーション調査団まで、その一員として参画した。 この学校は水産教育に関する協力の中で成功した例である。この間に毎年1回から2回短期専門家等として同校 に出向いた。その際に撮影した写真を整理し、次の3部に分け、記録として残す。 第 1 部 協力が終了した時の状況 第 2 部 協力開始前の学校の状況 第 3 部 建設中の学校
この学校は、アルゼンティン最大の漁業基地であるMar del Plataの漁港近くにあり、漁船に関する上級海技免状
を取得するためにあるアルゼンティン唯一の漁船員再教育機関である。この学校と海技免状は海軍が管轄する。
航海科と機関科があり、航海科には制度上は次のコースがある。 上の4つは、漁船で所定の履歴を積んだ人材を入学させ、漁船に関する上級の海技免状を取得させるための コースである。
|
しかし、アルゼンティンにはCapitan de Pescaの海技免状が必要な船が少なく、実際にはCapitan de Pescaの コースは志願者がいなかったので、開講されたことはない。上級になるほど志願者は少ない。 日本が協力したのは、航海科に関する漁具・漁法、漁獲物処理および航海及び漁業計器の3部門である。 学校はMar del Plataの漁港近くにある。正門(No.1)と玄関(No.2)の写真である。
No.1
No.2
|
管理棟 玄関 視聴覚教室 講義棟No.3 [No.3: ft_image_6_25_13/image005.jpg]
↑ ↑ ↑ ↑ [ft_image_6_25_13/image007.jpg] No.4 は海の方(正面)から見た全景である。左から2階は教室、下は航海科関係の実習室、視聴覚教室、 玄関、左端が管理棟である。
No.4
↑ ↑ ↑ ↑ |
No.5 No.6はNo.5の右後(学校の裏の街寄りの角)より撮影した写真である。手前の2階建は寄宿舎と食堂、その右の 平屋の部分が漁具実習室、右端が漁獲物処理実習室と機関関係の実習室である。この部分は天井が高く、外観は 2階建とほぼ同じ高さである。
No.6 No.7は玄関(左側)を入ったところのロビーである。右は中庭に通じる。管理棟から講義棟に向かって写す。 正面には左側に視聴覚教室・視聴覚教材製作室、両側に救急・救命法実習室・航海計器実習室・気象実習室がある。
No.7 玄関を入って左側の壁で、校名(Escuela Nacional de Pesca)と愛称 (Comandante Luis Piedras Buena)が 記されている。愛称は、昔、帆船で遭難し、その材木を集めて小船を作り、生還した提督の名前に由来する。提督 の写真と建物に関する銘板がある。
No.8
No.9 視聴覚教室の前から受付を撮る。左は中庭に通じ、突当りの右に玄関がある。
No.10 ほぼ同じ位置から時間を変えて撮った写真である。授業開始の15分前に玄関(右側)を開けると学生が一斉に 入ってくる。この学校は、漁船で所定の履歴を着けた船員が、漁船に関する上級の海技免状を取得するための 再教育機関なので、年配の学生がいる。 左は中庭に通じる。学生は毎日、中庭に集まり、短い訓示を受けた後で教室に入る。
No.11 管理棟2階(No.12)と講義棟2階(No.13)の廊下の写真である。晴天の日の昼間には高い窓や天井からもれる 空の色が美しい。 学生が教室に入ると、当直学生がドアの前の廊下に立って、教授を迎え入れる。
No.12
No.13 中庭から講義棟を写す。(No.14)
No.14 管理棟の2階から講義棟を写す。左は視聴覚教室、正面は講義棟、右遠景は漁獲物処理と機関関係の実習室である。
No.15 講義棟の2階より管理棟(正面)を写す。左は2階が寄宿舎、1階が食堂である。
No.16 近くの海軍基地内に繋留されている実習船 Luisito号 船名はLuis Piedras Buenaの名に由来する。FRP製の 小型トロール船で、操舵室には洋上実習のために各種の計器類を装備してある。
No.17
No.18
供与した資材が到着し、設置を終わった直後と、最後のエバリュエーション調査団員として訪問したときの 2回にわたって内部設備を詳しく撮影した。これはそれぞれの資材が活用されているかと十分に保守されているか を評価する参考とするためである。しかし、同じ被写体を撮った2枚の写真は区別できないほど良く管理されていた。 なお、内部設備の中には、STCW条約によって必ず備えなければならないものと、備えることが望ましいものがある。 講義風景(No.101−No.102) 上級のコースになるにしたがって人数は極端に減る。 漁船で段階的に履歴を着けて試験を受け、それを繰り返すので、上級のコースでは年配の学生が多い。 授業は午後2時から8時までなので、季節によって外は暗くなる。
No.101
No.102 漁具実習室(No.103−No.105) 回流水槽(No.105左)は、日本の学校におけるように厳密な縮尺模型を使って 実験するためのものでない。学生の数学と物理に関する水準からも、そのようなことは期待できない。 学生は実務経験(主にトロール船)を積んでいるが、漁具の行動には興味を持っていなかったり、その反対に 独特の意見を持っていることが多い。しかし、トロール網の浮子の数や流速を変えて、網成りの変化を見せるのに 大いに役立った。 カゴ(No.103)と自動イカ釣機(No.104)が見られる。ちょうど、自動イカ釣機がトロール船に普及しはじめた 頃にあたる。
No.103
No.104
No.105 ジャイロコンパス操船シミュレータ(No.106) 輸入したほとんどの工船や冷凍船にはジャイロオートパイロット が付いているが、その原理を習い、実習できる場所がなかったので、シミュレータの導入は歓迎された。
No.106 レーダシミュレータ(No.107−No.108) STCW条約によって、この実習は義務付けられている。この学校にこの装置 を設置する前には、学生は400 km離れたBuenos Airesにある航海学校で2週間の訓練を受けなければならなかった。 学生は、入学まで漁船で働いていた。上級の海技免状を取得するために、その仕事を離れなければならないので、 収入がなくなる。Mar del Plataで適当な仕事を見付けて生活を支えていたが、レーダシミュレータ実習のためには、 その職も離れなければならなかった。この装置の設置によってこの問題は解決した。
No.107
No.108 航海計器実習室(No.109−No.110) 大型の工船や冷凍船には輸入した船が多い。それらには古いか新しいかは別 にして、各種の計器類が装備されている。アルゼンティンでは、それらの使い方を練習できる場所は他にないので、 計器類の充実は重点が置かれた事項の1つである。ジャイロコンパス操船シミュレータとレーダシミュレータを含め、 これだけの航海計器類が揃っている学校は中南米にはない。これがこの学校の特徴の1つになっている。これらの 機器に関する実習は、陸上では不充分なので、同じ機材が実習船にも装備されている。
No.109
No.110 気象測器室(No.111−No.112)
No.111
No.112 航海実習室(No.113)
No.113 簡易プラネタリューム(No.114)
No.114 防火・防災・救急法実習室(No.115―No.116) STCW条約で設置を定められた設備である。これらがこの学校に 設置される前には、学生はPuerto Belgrano (Bahia Blancaの近くにある艦隊の最大の根拠地)まで行って訓練を 受けなければならなかった。この設備の導入によってこの問題は解決した。
No.115
No.116 視聴覚教育資材製作室(No.117−No.120) 自力で視聴覚資材を作るだけの設備を備えていることは、この学校の 特徴の1つである。
No.117
No.118
No.119
|
[No.120: ft_image_6_25_13/image079.jpg] 視聴覚教室(No.121)
No.121 機関関係実習室の一部(No.122−No.123)
No.122
No.123 漁獲物処理実習室(No.124−No.126) 漁獲物処理は協力分野の1つである。 Mar del Plataには加工プラントが多く、工船における漁獲物処理は機械化が普及している。しかし、この学校 に対するこの分野の協力は、それらの技術者を養成するためでない。 この分野は日本では海技試験の科目に入っていない。アルゼンティンでも商船関係の海技試験には含まれないが、 漁船関係の海技試験の科目には含まれる。この分野における協力はそのためである。 この装置を動かせば短時間で多量の魚が処理されるので、予算不足からここで運転するよりも、近所にある プラントで実習せる方が実態に即している。また、学生が卒業後に就く職務は航海士か機関士で、工船や冷凍船 におけるプラントの運転は職務に含まれない。しかし、漁獲物処理に関する概念を与え、理解を深めることが 陸揚げされる漁獲物の品質を向上させるキーポイントである。
No.124
No.125
No.126 食堂(No.127)
No.127
日本が協力する前の国立漁業学校は市内にあり、No.201(右側の4階建ての建物だけで両側は民家である)と No.202に示すような普通の建物にあった。
No.201
No.202 授業風景(No.203)
No.203 教室(No.204−No.205) 人数の少ない上級のコースでは1人掛け、人数の多い下級のコースでは2人掛けの机と 壁に掛けてある掛図しかなかった。
No.204
No.205 教育資材(No.206−No.213) 日本が協力をするまでは、視聴覚教育資材は、わずかばかりの古い機材と掛図 だけであった。 航海と運用に関する知識の向上と海技試験の対策だけを目標とするなら、補助機材がなくてもある程度の効果 は期待できる。しかし、大型漁船では機器の普及が急速であり、そのままの設備では、この進歩に対して全く 対応できない。
No.206
No.207
No.208
No.209
No.210
No.211
建設前の用地 No.301とNo.302は海を背にして左と右、No.303は敷地の右側の眺めで、遠景としてMar del Plata の街が見える。No.303では、建設予定地の近くに建設中の魚レストランが写っている。これは漁港内の沿岸漁船の 船溜りの近くにあったが、漁港整備計画によって漁港の敷地外に移築中であった。
No.301
No.302
No.303 学校建設中に道路に立てられていた看板(No.304) 「日本政府の贈与により国立漁業学校がここに建てられる。」 と書いてある。 背景に見られる学校は、その形がほぼ分かるまでに工事が進んでいた。
No.304 完成近い学校(No.305)
No.305 No.306からNo.312まではNo.3とNo.4を参考にすると位置の関係が分かり易い。 講義棟より管理棟を見る(No.306)。右が管理棟、左は寄宿舎である。No.16は完成後にほぼ同じ位置から撮った 写真である。
No.306 手前は講義棟、右は視聴覚教室
No.307 中庭(No.308) 左は漁獲物処理と機関関係の実習室、右は漁具実習室
No.308 建設中の管理棟より玄関と視聴覚教室を望む(No.309)。
No.309 左は機関関係の実習室、右は講義棟
No.310 工事中の視聴覚教室(No.311―No.312)
No.311
No.312 供与資材の搬入(No.313−No.318) 箱の1つは壊され、中身の一部は欠けていた。
No.313
No.314
No.315
No.316
No.317
No.318
|