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潮流発電について

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画像は2013年(平成25年)9月13日付け日本経済新聞(夕刊)のトップページに掲載された「潮流発電」に 関する記事と、その設置方法のさまざまなアイデアの模式図である。 記事は「潮流発電 18年度から、環境省実用化 新エネルギーを開拓 地熱並み可能性」と題する。




潮の満ち干を引き起こす力、即ち起潮力は太陽と月の引力によってもたらされるが、月の起潮力の方が大きい。 公転する月と自公転する地球が太陽とほぼ一直線に並ぶ時、地球の「月に面する側」とその反対側において、地球に及ぼす月・太陽 の引力は最大になる。そして、その時に潮の満ち干の差(干満差)も最大となる。これが大潮である。
* 参考リンク: 潮汐発電について [月の引力&潮の 満ち引き図]

地球上のある沿岸域における潮の干満差は、太陽・地球・月の位置関係、当該沿岸域周辺の陸地地形・海底地形、底質、深浅状態 などによって異なる。また、海水の水平移動に伴う流れ(潮流)の速さ水量もそれらによって異なってくる。 潮が島嶼間などの狭い水道に集中すると、流れの速い潮流が生み出される。 日本周辺での速い潮流は、根室海峡や津軽海峡周辺、瀬戸内海や九州西方海域などの海峡・狭水道などで見られる。

因みに、神戸・明石と淡路島との間にある明石海峡の幅はわずか4㎞ほどと狭く、潮の干満によって東西方向に海水の水平 大移動が起こる。明石海峡での最も速い潮流は秒速4.5m (時速16.2km=時速8.75ノット; 1ノット=1海里=1,852m) である。 その強さを風速に換算すれば秒速120m以上になり、地上では起こりえない風速レベルになるという。

    [参考] 明石海峡大橋の建設に先だって、橋桁を支える2本の主塔の基礎建設予定周辺海域にて実施されたドップラー式流向流速計 (Doppler current meter) での潮流観測によると、最大流速は明石側の主塔基礎で秒速3.5m(時速12.6km)、淡路島側のそれで秒速4m(時速 14.4km)であったと記されている(「橋の科学館」)。

潮流発電にはいろいろな発電装置のアイデアがあるが、同記事で紹介されているのは、潮流の流れそのものを利用して巨大な 海中水車(プロペラ、あるいはローター)を回転させ発電するものである。 陸上(あるいは洋上)に設置される巨大な2~3枚翼をもつ風力発電装置をいわば海中に設置するような方式である。発電原理そのものは すこぶるシンプルである。 潮流ローターは風力ローターよりもずっと遅く回転する。だが、潮流の海水密度がずっと大きいので発電量も多い。

同記事はローター装置の繋留・設置方法についても紹介している。

    (1) 海底に支柱を立て、その頂部に2~3枚翼の海中ローターを設置するもの(海底支柱に固定・単体ローター設置型)。 外観は陸上設置型の通例の風力発電装置と同じ。
    (2) 海面上に突出するくらい長大な支柱を海底に立て、その支柱に2基の海中ローターを双発プロペラ機のように 取り付けるもの(海底支柱に固定・双発ローター支持型)。
    (3) ワイヤの一端を海底にアンカリングし (係置 anchoring) 、他端に海中ローターを繫ぎ留めるもの(ワイヤ係留型)。
    大凧が風で吹き流され空中を漂うが如く、ワイヤに繋ぎ止められた海中ローターが海中の潮流の中を漂い流されながら回転する。 潮流の向きが変われば、ワイヤーとローターはそれに合わせるように自身の向きを調整できるというもの。

日本では潮流発電方式についていろいろなアイデアが創案され、試作・実験されてきたが、まだ商業電力を供するまで実用化された 事例はない。同記事によれば、政府(環境省)は企業に研究開発を委託し、2018年度に1メガワット級潮流発電を実海域にて 実用化することを目指したい方針であると記される。

    ・ 潮流発電の開発可能性に大きな影響を与える技術課題としては、海流発電と同じく、エネルギー変換効率に優れたローター 装置のさらなる開発と実証が欠かせない。ローター装置のメンテナンスの容易さの向上、海底での装置設置・係留技術の開発、 電力の海底集積ハブ装置や陸上グリッドへの送電の構成要素および全体システムの技術開発、それらの実証の進展などが今後 さらに求められよう。
    ・ また、漁業と船舶航行・海上交通との利害調整、その調整に関する実際的な好事例などの積み上げなどの今後の進展が期待される。

潮流発電に関する研究開発、実証試験や実用化に向けた今後の取り組みにつき注視を続けることにしたい。
潮流発電の幾つかの視座・キーワードについて: 海洋エネルギー発電としての優位性・経済的採算性(建設コスト試算および 発電効率性・長期収支バランスなど)・実現可能性の見極め、発電システムの要素および全体の技術開発、実証試験へに向けた ロードマップ、実海域での立地条件調査、環境影響評価、実海域での利害調整ルール、国家基本計画・政策における位置づけ、国家の 果たすべき役割、その他克服されるべき長期課題など。
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辞典内の関連リンク

英国の海洋エネルギーに関するパネル展示「英国の海からのパワー とエネルギー」

1. ラ・ランス潮汐発電所(フランス)

2. 温度差発電 (OTEC) について [構造図]

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11. 波力利用揚水装置「アクアブイ」&発電

12. 波のエネルギー&波力について

14. 洋上風力発電

[出典] 英国プリモス/国立海洋水族館 (National Marine Aqurium, Plymouth, UK)での海洋エネルギー関連パネル展示 →  [国立海洋水族館ホームページ] www.national-aquarium.co.uk

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