海洋総合辞典Japanese-English-Spanish-French Comprehensive Ocean Dictionary, オーシャン・アフェアーズ・ ジャパンOcean Affairs Japan, 日本と海洋法制、日本の200海里排他的経済水域(EEZ)

Page Top




日本と海洋法制: 日本の200海里排他的経済水域(EEZ)/[視座]EEZの質量

拡大画像  [船の科学館訪問&画像撮影: 2011.2.27, 2011.4.28, 2011.8.31][拡大画像: x23682.jpg]

画像は日本の200海里排他的経済水域 (200-mile exclusive economic zone; 200-mile EEZ) を図示するものである。 「船の科学館」(東京)で「わが国の海の現状」と題する特別パネル展示が行なわれた(2011年・平成23)。 国際海洋法制の概説、日本の海の管轄権の地理的範囲や近隣諸国との海の境界線などに関する説明がその主な内容であった。 画像の図絵はそこで展示されたものである。



1. 「海の憲法」と称される国連海洋法条約は、10年以上にわたる第三次国連海洋法会議における協議の末、1982年(昭和57年)に 採択され、1994年(平成6年)に発効した。 日本は、1996年(平成8年)6月に批准した。国内関係法令の整備として「領海及び接続水域に関する法律」、「排他的経済水域及び 大陸棚に関する法律」などが定められた。

2. 条約上、沿岸国の経済水域は領海基線から200海里(約370km)の範囲内で認められる。近隣国との間で経済水域が重複する場合 (相対する国との間の距離が400海里未満である場合)、その境界画定は、衡平な解決を達成するために、国際法に基づき合意により 行なわれる。合理的期間内に合意が得られない場合には、同条約第15部にいう紛争解決に定める手続きに付すものとされる。

3. 太平洋側においては、経済水域が相対で重複する国は北マリアナ諸島連邦のみである。翻って、条約の規定に則って日本の経済水域の 外側の限界線を画定しうる水域については、図上のオレンジ・ラインで示されている。だがしかし、東シナ海、日本海、オホーツク海側では、 近隣諸国との間で経済水域が重複する。従って、日本は、ロシア、北朝鮮、韓国、中国 (および台湾)、米国 (北マリアナ諸島連邦) との間で、その境界線 (海の国境線) につき合意する必要がある。

4. 北方領土、竹島、尖閣諸島については、関係国が展開する論拠や島嶼の領有・占有実態はまちまちであるが、 それらの帰属や返還をめぐって争われてきた。争いが未決着のままであれば、経済水域の互いの境界線について合意をみることは 不可能である。

5. 因みに、日本の領土面積は約38万平方㎞で、世界では第61位である。だがしかし、領海 (内水を含む) の面積は約43万平方㎞、 領海と経済水域 (接続水域を含む) を合わせた面積は約447万平方㎞で、世界で第6位の大きさである。 また、領海と経済水域を合わせた海中空間 (インナースペース inner space) の体積は約1,580万立方kmで、世界第4位である。

6. 沿岸国の大陸棚とは、沿岸国の領海を超えて、その領土の自然の延長をたどって、大陸縁辺部の外縁まで延びている 海底およびその下をいう。その外縁が200海里未満である場合は、領海基線からその外側200海里までの海域(領海の除く)の海底 およびその下まで認められる。従って、沿岸国に認められる大陸棚の地理的範囲は、例外はあるが基本的には、 経済水域のそれと同じであることが殆どと言える。沿岸国は大陸棚を探査し、その天然資源を開発するための主権的権利をもつ。 海洋法条約によれば、一定条件と限界の下で、200海里を超えて大陸棚を延伸することが認められる可能性がある(日本は、実際に、 200海里以遠の大陸棚に対する管轄権が認められてきた)。

7. 経済水域や大陸棚に関する重要な視座の一つは、その質量(質的・量的価値)に関するものである。 日本の経済水域の大きさ(面積)は既述のとおり、国土面積に比して11.7倍もあり、世界で第6位である。この大きさは自然地理的偶然 によってもたらされたものである(日本の国土が細長い島嶼にて形成されること、太平洋側では離島が多く散在し、かつ隣国の 経済水域との重複がほとんどないことなど)。経済水域の面積という量的価値以上に重要なのは、その質的価値である。 経済水域の海中、海底、およびその下がもつ質的価値である。この質的価値も自然地理的偶然によるものである。

8. 日本の経済水域内では、その一次的基礎生産力 (動植物プランクトンなどの量) は極めて高く、古来より世界有数の 漁場が形成され、高い漁業生産量が維持されてきた。だがしかし、日本周辺海域における海底石油・ガスの生産量は、 その消費・需要量に比してごく僅かなものであった(現在でも、国産の海底石油・ガスは極少量であり、需要のほとんど を輸入に依存する)。 アラブ首長国連邦、クウェート、バーレーン、カタールなどは、国土面積は日本よりずっと小さく、また経済 水域面積もはるかに小さいが、海底石油・ガスの埋蔵量は豊富である。

9. だがしかし、日本は経済水域において、海底鉱物やエネルギー資源の高い潜在的開発可能性をもつ。 沖縄海盆・小笠原諸島周辺での熱水鉱床 (海底噴出孔の掘削による人工鉱床の形成可能性を含む)、南鳥島周辺でのレア メタルなどの堆積物、四国・中部地域沖合などでのメタン・ハイドレート、その他コバルトリッチ・マンガンクラストなど、 鉱物・エネルギー資源の賦存が注視されている。商業的レベルの開発はまだ実現にいたっていないが、探査・分析評価の データが蓄積されていけば、経済水域のもつ質的価値はより明晰なものとなろう。 下図はそのポテンシャルを概略図示している。

10. 日本の大陸棚に関する延伸、太平洋でのマンガン団塊の探査鉱区、沖ノ鳥島の「島」問題などについては、別の機会に 触れてみたい。 [To be continued]


日本の南方海域における資源分布概図
拡大画像
東シナ海の沖縄トラフや小笠原諸島周辺海域のピンク色が熱水活動域、朱色が鉄マンガン・ クラスト、黄色がメタン・ハイドレートを図示する。右下方に拓洋第五海山、南鳥島が示される。  [画像出典:東京・国立科学博物館で開催された特別展 「深海」 (2013年7月7日~10月9日)][拡大画像: x25571.jpg][縮小画像: z19592.jpg]

このページのトップに戻る /Back to the Pagetop [2017.02.26 記]