一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋
海底の熱水噴出孔鉱床とその周辺の生態系(模型) [東京・国立科学博物館]
東京・国立科学博物館にて特別展「深海」 (2013年7月7日~10月9日) が開催された。画像は「熱水生態系模型」と題する展示である。
展示物の説明パネルには次のように記されている。
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1. 展示物の説明パネルには次のように記されている。
シロウリガイ類は、泥のなかにある硫化水素を必要とする。硫化水素は、海底の5㎝くらい下の層にあるので、そこに足を 伸ばし吸収している。そのため小さな個体は海底境面には出てこない。 2. ユノハナガニ 学名 Gandalfus yunohana 分類:節足動物門ユノハナガニ科 深度:400-1600m。 説明書きによれば、熱水が沸き出す岩・石のある場所に大量に生息する。眼が退化している。色素がないため白く、 ゆでても赤くならない。圧力をかけなくとも水槽で飼育できる。 [拡大画像: x25656.jpg][拡大画像: x25657.jpg: 説明書き] 太陽光が届く海洋の表層では、光合成を行なう植物プランクトンが繁殖し、それを動物プランクトンが捕食し、それを小さな 生き物が捕食し、更に大きな生き物がそれらを食べるという食物連鎖が形成されている。海洋における光合成生態系も陸上に おけるのと同じ生態系にて営まれている。 ところが、1970年代後期になって、光合成生態系とは全く異なる生態系にて生活を営む生物群集が深海底に存在していることが発見された。 化学合成生態系といわれるものである。今日、そのような生態系を形成する生物群集には3つあるとされる。即ち、熱水噴出孔 生物群集、冷水湧出帯生物群集、鯨骨生物群集である。
画像はその3つの生物群集のうちの熱水噴出孔生物群集を模したものである。300度以上の高温熱水を噴出する、金属硫化物から
なる煙突状の突起物の周辺の深海底に形成される生物群集である。 熱水噴出孔生物群集はプレート (岩板) の拡大軸である大西洋中央海嶺、東太平洋海膨、インド洋中央海嶺などに沿って存在する。 日本近海においては、火山フロントや背弧海盆の拡大軸に見られる。例えば、沖縄・南西諸島西側に沿った沖縄海盆 (沖縄トラフ) の 伊平屋凹地 (おうち) や伊是名海凹 (かいおう)、小笠原諸島海域の水曜海山など。画像の模型に見られるように、熱水噴出孔周辺 には二枚貝、巻き貝、チューブワーム、イソギンチャクなどが群がり生活し、それらの生物群集は熱水に含まれるメタンに依存している。 冷水湧出帯生物群集は、プレートの沈み込み帯で見られる深海生物群集である。沈み込み帯の堆積物中の有機物が分解してメタン や硫化水素が形成され、それをバクテリアらが使うことを起点とする化学合成生物群集である。 日本近郊では、1984年、相模湾初島沖で見つかった。その他、南海トラフの天竜海底谷の出口、 日本海溝第一鹿島海山付近、三陸・宮古沖、日本海の奥尻海嶺などで発見されてきた。 バクテリアマット、炭酸塩チムニー、シロウリガイの存在がその生物群集の最も代表的な特徴とされる。 クジラ骨生物群集は、深海底に沈んだ鯨の死体を栄養源にして生息すると考えられる生物群集である。現在まで発見された事例は 極めて少ない。 [参考文献]「imidas 2007」、909-910ページなど。
[参考] /熱水鉱床: hydrothermal mineral deposits; hydrothermal vent ores [略: HVO]. /熱水[性・起源]硫化物鉱床: hydrothermal sulphide deposits [文例] Hydrothermal sulphide deposits have been discovered in the Pacific and contain high proportions of industrially valuable metals.
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