海洋総合辞典 Comprehensive Ocean Dictionary, 特選フォト・ギャラリーPhoto Gallery, 北極海白地図&視座標

一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋


One Selected Photo "Oceans & Ships"

Back to: Top Page | 特選フォト⌈海&船⌋目次 (Ocean and Ship Photos) | ご覧のページ


北極海を俯瞰(ふかん)する白地図
[付属資料: 北極海をめぐる新聞記事ヘッドライン (2012‐2014年)]

1

2

英国グリニッジの国立海洋博物館で目に留まった(2013.6.3-4)2つの画像である。画像1は北米大陸上空から北極海を俯瞰したもので、 画像2は欧州大陸辺りの上空からのものである。2画像を眺めると、北大西洋の北端に浮かび北極圏との境にあるアイスランドと、 北極海をはさんでほぼ反対側に位置するアラスカやベーリング海峡との間の距離がどれほどのものか、想像することができよう。

特に2013年頃から最近まで、新聞紙上において、北極海に関連した記事 (海氷面積の減少、北極海航路の開拓、 海洋エネルギー・資源開発など) が、目立って多く掲載されて来た。 因みに、2012年~2014年にかけての新聞記事ヘッドラインを例示すると、以下のようなものがある。


新聞記事ヘッドライン

    ・ 「中国、北極点通過の最短航路開拓へ。温暖化で氷減少、通航料など削減」、産経新聞2012.9.7.
    ・ 「中国、北極圏開発狙いアイスランドに照準。進む蜜月関係、「拠点化」着々」、産経新聞2012.9.7.
    ・ 「正論: 新しい北極海、いそぎ国家戦略を。日本財団会長 笹川陽平」、産経新聞2012.10.19.
    ・ 「北極圏調査強化へ。拠点整備や砕氷船新造。文科省検討」、読売新聞2012.12.14.
    ・ 「露、北極圏開発を加速。国家の収入源 石油・ガス狙い。技術不足 外資に協力要請」、産経新聞2013.3.3.
    ・ 「ロシア、造船業再建へ。北極海の資源開発視野」、日経新聞、2013.3.4.
    ・ 「インド 狙うは北極海。「北極評議会」にオブザーバー申請」、読売新聞、2013.4.6.
    ・ 「シェル、ロシアで開発拡大。ガスプロムと提携。北極圏で資源探査。シェールオイル、西シベリアで」、日経新聞2013.4.10.
    ・ 「アイスランド 中国と接近。FTA締結。輸出拡大へ期待感、北極圏進出警戒も」、読売新聞2013.4.30.
    ・ 「米、権益拡大狙い「北極圏戦略」」、日経新聞2013.5.12.
    ・ 「米、北極圏開発を推進。国家戦略発表。権益確保、中露を牽制」、産経新聞2013.5.12.
    ・ 「日中韓、北極論議に参加。資源や航路、評議会オブザーバーに」、日経新聞2013.5.16.
    ・ 「日中、オブザーバーに。北極評議会が承認。中国、新航路開発に関心」、朝日新聞2013.5.16.
    ・ 「中ロ、石油ガス共同開発 国営2社が合意。5地域 北極海大陸棚など」、日経新聞2013.5.31.
    ・ 「北極開発、日本の技術示せ。クルチャトフ研究所副所長ヴァチェスラフ・クズネツォフ氏」、日経新聞2013.6.3.
    ・ 「北極海の氷、減るとどうなる? 今までで一番せまい面積に。気象に変化 船は「近道」」、朝日新聞2013.7.20.
    ・ 「北極の海氷最小に。温暖化の影響。気象情報会社予測」、日経新聞2013.7.24.
    ・ 「温暖化 北極海を漁場に」、日経新聞2013.7.27.
    ・ 「北極圏のメタンガス放出なら全世界に5900兆円の損害」、日経新聞2013.7.30.
    ・ 「中国海運 初の北極航路。欧州向け最大15日短縮」、読売新聞2013.8.13.
    ・ 「中国、北極海を商業利用。欧州への航路2週間短縮。大連、ハブ港めざす」、日経新聞2013.8.13.
    ・ 「中国の海運会社 北極海航路乗り出す。背景に温暖化 最大で15日短縮」、朝日新聞2013.8.13.
    ・ 「北極海航路 資源に「近道」。旭化成など、北欧からナフサ、機動的調達可能に」、日経新聞2013.8.16.
    ・ 「航路の利用進む北極海。軍事機密、共通海図阻む」、日経新聞2013.8.28.
    ・ 「北極海航路 中国商用船が初航行。欧州到着2週間短縮、「海洋国家建設に重要」。露「大動脈」目指す、インフラ整備など 課題山積」、産経新聞2013.8.29.
    ・ 「北極海の露軍基地復活へ、20年ぶり資源に注目、航行量増加」、産経新聞2013.9.18.
    ・ 「露、北極圏に軍事基地、中国の進出警戒」、読売新聞2013.9.18.
    ・ 「"北極開発 環境と調和" 露、主導権の確保狙う」、読売新聞2013.9.26.
    ・ 「ロシア 北極圏関与強化、資源にらむ、環境保全や軍事施設」、日経新聞2013.9.26.
    ・ 「北極航路通航料 国際的枠組みを フィンランド外相」、日経新聞夕刊、2013.10.19.
    ・ 「海氷減少 北極から氷消える恐れ 気候変動パネルIPCC」、読売新聞2013.10.20.
    ・ 「始まるか、北半球の寒冷化」、産経新聞2013.10.20.
    ・ 「北極開発で連携。外相、北欧など8ヵ国と会合」、日経新聞2013.11.4.
    ・ 「露 北極圏での資源開発を重視、産業躍進チャンス 6兆円投資」、産経新聞2013.11.9.
    ・ 「露軍「北極部隊」創設へ。米中けん制狙う」、読売新聞2013.12.12.
    ・ 「北極海で油田探鉱 国際石油開発などメジャーと組む」、日経新聞2013.12.22.
    ・ 「北極海の氷、縮小鈍る」、産経新聞2013.12.25.
    ・ 平成26年早々に産経新聞(2014.1.4.)はフルに2面を使って北極関連特集記事を組んだ。主要な見出しは次の通り。
      「北極圏に熱気、露「極夜」の港町一躍脚光」、「進む温暖化、消える海氷」、「日本「検討」、出遅れ感、北極評議会、規制及び腰」、 「米、戦略立て直し急ぐ」、「北極海沿岸国の排他的経済水域(EEZ)まど、新たな未開地、 航路・地下資源めぐり激突」、「沿岸国と連携、足場築く中国」、「開発ブーム到来、北欧小国に商機」、産経新聞
    ・ 「コッキョクグマ 危機一段と、海氷が縮小 狩りできない期間長く、人工的な給餌など求める声」、日経新聞夕刊2014.1.6.
    ・ 「海の動脈 北極に熱視線、貨物船1.5倍 ロシア開拓へ本腰、凍る島 航路研究に新施設、動く軍存在感示す狙いも」、朝日新聞2014.1.23.
    ・ 「北極観測船 政府が新造検討、航路活用 出遅れ挽回」、産経新聞2014.1.26.
    ・ 「海氷増は寒冷化の胎動か」、産経新聞2014.1.29.
    ・ 「北極海航路の利用促進 官民で協議会、リスク情報を共有」、日経新聞2014.2.3.
    ・ 「北極海 商機広がる、温暖化 解ける氷、国際帝石 初の石油鉱区、ウェザーニューズ 航路観測衛星」、読売新聞2014.2.10.


北極海をめぐる動向について多様な観点や視点から論じられ報道されている。果たして何をどう想いめぐらし、どのような視座・ 座標軸をもって注視していけばいいのか。多くで言及されているように、今世紀中頃までには、夏季における海氷は完全に消滅するのか。 今後海氷溶解がさらに進行し、冬季において多年氷ではなく1年氷だけで覆われることになるのか。

北極海沿岸諸国の大きな関心の一つは、自国の海洋管轄権の範囲画定であろう。とりわけ関心が高いのは、沿岸から200海里 (約370km) 幅の 排他的経済水域 (EEZ) よりも、むしろ大陸棚の200海里以遠への延伸である。 自国管轄権の海域内での海底石油・天然ガス資源、漁業資源への関心が第二である。非沿岸諸国は、資源開発の権益にあずかるために、 投資・パート―ナ―シップ関係を構築して行くことにさらに腐心しよう。

世界の海運諸国は、海氷溶解過程が一層進行すればするほど、東アジアと欧州とを結ぶ「北極海航路(特に北東航路)」の一層の開拓利用に 取り組むに違いない。且つ、「通航の自由」、より少ない通航規制を求める一方、沿岸諸国による過不足のない商業的航行関連サービスを 望むことであろう。また、北極海での産業的活動が活発化すればするほど、壊れやすく繊細な自然環境への特別な配慮が沿岸諸国の 国益として、また「全地球的・国際的共益/公益」としても求められる。

北極海には南極と異なって巨大な大陸がなく、またそこには南極のような統治(ガバナンス)を司る国際管理のレジームはない。 北極海においてはいかなる全地球的・地域的レジームの形成が求められていくべきか。 北極海のガバナンスを注視していくための視座標とはいかなるものかを思索し見定めながら、北極海における開拓・開発の動向や そのガバナンスの行方について注視していきたい。

[画像撮影: 2013.6.3-04 英国国立海洋博物館/グリニッジ; 2014.02.27記][拡大画像: x25530.jpg][拡大画像: x25532.jpg]

1 2
1.[拡大画像: x25531.jpg] 2.[拡大画像: x25533.jpg]


Back to: Top Page | 特選フォト⌈海&船⌋目次 (Ocean and Ship Photos) | ご覧のページ