一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋
英国ウェールズのフレデリック皇子の絢爛なバージ [実物展示]
[英国グリニッジ/国立海洋博物館]
画像は英国グリニッジの「国立海洋博物館」に展示される、ウェールズのプリンス・フレデリックの
絢爛なバージ(実物)である。 展示されるバージは、1732年に、フレデリック皇子 (1707‐51年) のために建造されたものである。 因みに、1731~32年にかけて、W.ケントが設計し、J.ホールが製作し、J.リチャードが装飾を行なったものである。 その設計では、テムズ川を行き来したウェリー* (一種の水上タクシー; 平底の川船、渡船、はしけ) のうちでもより小さいものを ベースにしていたが、中央部にはキャビンが施されフラットになっていた。 漕ぎ手は21人で、一人のバージ・マスターが操舵した。船首部はせり上がりながら長く突き出しており、乗客が濡れずに岸に上がるのを 可能にした。また、高くせり上がる船尾部はバージ・マスターが中央部にあるキャビン越しに前方を見通せるようになっていた。 バージを設計したケントは、身分の卑しい画家であり、建築家、庭園・内装のデザイナーでもあった。そして、当時裕福で影響力の あるいく人かの人々のために働いた。フレデリック皇子はロンドン西郊のキュー (Kew) の自宅の建築のためにケントを選び、また カールトン・ハウスにある庭園のデザイナーにも指定した。 ケントはグロテスクなものに興味があって、バージの舳先に飾り付けられたアニメのようなイルカの頭にそのことが読み取れる**。 彼はまたバージの船頭たちのそろいの制服をもデザインした。 なお、フレデリック皇子は、芸術愛好家であり、アマチュアの音楽家でもあった。成人した後の多くの時間を父親のジョージII世国王と 過ごした。そして、彼のバージは父親のいずれのそれよりも速く、また美しいものであった。 18世紀においては、テムズ川をボートで移動するやり方は最も速く辿り着く方法であった。 19世紀中期よりロンドンの道路事情は改善され、テムズ川が移動のために用いられることは少なくなったが、公式行事の際にはテムズ川は 重要な舞台となった。フレデリック皇子のバージがテムズ川で最後に用いられたのは1849年であり、ヴィクトリア女王の夫である プリンス・アルバートによるものであった。 展示説明パネルには次のように記されている(概要は上記の通りである)。
Designed by William Kent and built by John Hall, with carved decoration by James Richards, 1731-32.
Fit for a King Prince Frederick was a leader of fashion. The eye-catching splendour of his barge enhanced his royal status. Its carved decorations symbolize his position as the heir to the British throne and suggest the maritime power of the nation.
Who designed this barge?
Why was this barge the limousine of its day? From the mid-19th century, as London's roads improved, the Thames was less used for travel but it remains a significant stage for public occasions. Frederick's barge was last used on the river by Queen Victoria's husband, Prince Albert, in 1849. ・ wherry: n.(pl. -ries)ウェリー [ディンギー(dinghy)よりも小型のスカル(あるいは艫櫂・ともがい)で漕ぐボート(sculling boat)]; [米国][競漕用]一人乗りのスカル; [川で用いる]軽い漕ぎ船; [英国]平底の大型川船; [英国][川で人・荷物を運ぶ]渡船(とせん)、渡し舟、 はしけ、vt.はしけで運ぶ [参照] scull. ・ wherryman: n.平底荷舟の船頭・水夫. * "Dolphins: stylized versions of these mammals, based on designs first used in Roman art. They often appear in William Kent's furniture designs." [2013.6.3-4 英国グリニッジ・国立海洋博物館にて][拡大画像: x25735.jpg][拡大画像: x25736.jpg][拡大画像: x25741.jpg] |
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1. バージの舳先に飾り付けられたアニメのようなイルカの頭。 [拡大画像: x25738.jpg][拡大画像: x25737.jpg] 2. キャビンの周囲にはいろいろな意匠が凝らされている。例えばホタテガイの貝殻→ "Scallop shells: associated with Venus, goddess of love, and Neptune, god of the sea." [拡大画像: x25742.jpg] 3. 船尾に施された人魚の意匠→ Mermaids: here in the role of nereids, companions of the sea god Neptune and his wife Amphitrite. [拡大画像: x25743.jpg] |
4 4. [拡大画像: x25739.jpg] |
5 5. [拡大画像: x25740.jpg] |
* [拡大画像: x25744.jpg: 説明書き"Prince Fredecick's Barge-Fit for a King"][拡大画像: x25745.jpg: "Who designed this barge?"] [拡大画像: x25746.jpg: "Why was this barge the limousine of its day?"] |