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「イヨボヤ会館」のサケのミニふ化場と養殖プロセス [新潟県村上市]

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新潟県村上市の、サケに特化した博物館「イヨボヤ会館」(画像2)では、サケのミニふ化場施設(画像1)が設営され、秋から冬 にかけて、受精卵からふ化し、稚魚に成るまでの生態を観察できる。 毎年秋になると、村上市内を流れる三面川(みおもてがわ)にはサケが遡上してくる。「三面川鮭産(けいさん)漁業協同組合」では、 10月から人工増殖を主な目的としてサケ漁が開始される。捕獲したサケから採卵し、人工授精を行い、稚魚へと生育させた後に、翌年2月 下旬から4月上旬にかけて、三面川へ放流される。

ミニふ化場内では、パネル写真でサケの採捕から、人工授精、ふ化、稚魚放流の全プロセスが紹介されている。以下は同会館にて展示される 主なパネル写真とキャプションの概要である。

* 三面川に遡上してきたサケは、新潟県知事の許可を得て捕獲できる。三面川鮭産漁業協同組合では、 その特別採捕許可を得て、人工ふ化増殖事業が行なわれている。

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1. 捕獲: 三面川で行われる漁としては、主にウライ漁(左画像1-1; 川幅一杯に簀止めする「ウライ」を設置し、 ここに「落とし柵」を設けて捕まえる漁法)である。その他、居繰網漁(いぐりあみりょう; 左画像1-2)、刺網漁、 テンカラ漁によって捕獲される。
2 2. 蓄養(ちくよう): 捕獲された雌サケを成熟魚と未成熟魚に分け、後者については成熟 するまで数日間蓄養され、その後に採卵が行われる。
3 3. 採卵・授精: 雌サケの腹を包丁で切り開き、卵を傷つけないよう慎重に取り出す。この採卵の仕方を 切開法という。取り出した卵に数匹分の精子をかけ、素早くまんべんなく掻き混ぜる。

4 4. 洗浄: 精子とまぜ合わせた卵を水で綺麗に洗浄する。精子は接水直後に活発に動き出し、30秒ほどで活動を終える。その間に 授精が行われる。

5. 検卵: 死卵には水カビが発生し、周りの卵に酸素を行き届かせなくなり死亡させる。 そのため、外部からの衝撃に強くなる発眼の後に、無精卵や死卵の除去を行なう。 無精卵とは授精できなかった卵のこと。死卵の場合は白く濁るが、無精卵は外部からの刺激が ないと赤いままである。そのため、検卵時に分かりづらくさせるので、淘汰(掻き混ぜ)を行ない、 無精卵を白く濁らせてから検卵を行なう。

6 6. 収容: 綺麗に洗浄した卵は吸水させてから、静かにふ化槽へ収容される。卵に直射日光や紫外線が当たらないよう、 室内を暗くして飼育する。

7 7. 発眼: 眼の黒い部分の色素が卵膜を通してはっきり見える状態を発眼という。水温 8度で約30日、積算温度240度くらいで発眼状態となる。授精から発眼までの期間は、衝撃に 弱いので取扱いに注意を要する。

8 8. ふ化: 受精後約2ヶ月でふ化が始まる。ふ化が近づくと卵は赤みを増し、時折卵の中の仔魚(しぎょ) が元気に動く姿を確認できる。ふ化する時に、仔魚は頭部より酵素を出し、卵膜を溶かして 外に出てくる。このようになるまでの積算温度は480度ほどである。生まれたばかりの仔魚は弱く、直射日光に長時間当たると 死亡するので日覆いをする。
* 仔魚とは、さいのう(栄養袋)を吸収し終えるまでの赤ちゃんをいう。

9 9. 浮上: 生まれた仔魚は約1ヶ月間、お腹のところに付いている「さいのう」 という赤い袋から栄養を取る。その後、餌を求めて泳ぎ出す。この状態を「浮上」という。

10. 飼育: 浮上(さいのうが完全に吸収される)したら餌付けを始める。放流までの約2ヶ月間、餌付けをする。 餌付けが進むと水の汚れがひどくなってくるので、通水を良くして環境を綺麗に保ちながら、稚魚の育成に務める。

[参考]「イヨボヤ会館」本館(画像2)から地下道(サーモンロード)を通って三面川に向かった先には、サケの「三面川鮭観察自然館」がある。 同館には三面川の分流に沿ってガラス窓が5メートルほどの間隔で設置され、秋になればサケが遡上するところをガラス越しに 観察できる。

1878年には日本初のサケの人工孵化と放流を行い、6年後には年間73万匹ものサケを捕獲したという記録がある。

    三面川で行われる漁法
    ・ ウライ漁: 三面川の川幅一杯に簀止めする(即ち、ウライという止め簀を川幅一杯に設置する)。ここに落とし柵を設けてサケを 捕獲する漁法
    ・ 居繰網漁(いぐりあみりょう)
    ・ 刺網漁(さしあみりょう)
    ・ テンカラ漁
    ・ 持ち網漁(もちあみりょう): 種川(サケの自然産卵とその増殖を助けるために江戸時代に造営された三面川のバイパス)の柵 を利用してサケが遡上しやすい魚道を造り、そこに持ち網を仕掛ける。サケが網に入ると引き揚げる漁法。現在この漁は行われていない。
    ・ 地曳網漁(じびきあみりょう): 川幅一杯に網を張り一度に多くのサケを獲る漁法。現在も行われている。
    ・ お浚い(おさらい): 種川では産卵を終えたサケを獲る漁のこと。現在この漁は行われていない。

[撮影年月日:2020.10.25/撮影場所: 新潟県村上市の内水面漁業資料館「イヨボヤ会館」/新潟県村上市塩町13‐34/ 電話:0254‐52‐7117/JR村上駅から徒歩で約25分]
1.[拡大画像: x28730.jpg]
2.[拡大画像: x28767.jpg]


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