一枚の特選フォト⌈海 ＆ 船⌋

いつでも運航可能な世界最大の蒸気フェリー 「South Steyne号」

世界三大美港と謳われるオーストラリアのシドニー。その中心街の一つはダーリング・ハーバー (Darling Harbour) 沿いに広がっている。 ダーリン・ハーバーの最奥部は「クックル・ベイ (Cockle Bay)」と称され、そのウォーターフロントは再開発されて、娯楽施設、 高級レストランやバーなどが建ち並んでいる。大勢の観光客や一般市民らが憩いを求め、海辺を散策し、時にディナーやランチを楽しむ。 また、海沿いにはボードウォーク (boardwalk; 板敷きの遊歩道) が施され、夕暮れともなれば華やかでロマンティックなムードを醸し出す。 「South Steyne号」はそんなウォーターフロントに錨を下ろし、レストラン・ボートとして今なお活躍する。ブラック&ホワイトの二色の ファンネルがシンプルにして美しい。 「South Steyne号」は、いつでも動かせる (運航可能である) という、世界最大の蒸気フェリーである。1938年スコットランドの Leithで建造された後、スエズ運河を経由してオーストラリアへと蒸気機関をもって渡って来た。Port Jackson & Manly Steamship Companyの船として、「サーキュラー・キー」(Circular Quay; フェリーボートの中央発着ターミナルがある) から「マンリー」 (Manly; 郊外の高級住宅地区で、有名な水族館がある) までの、シドニー湾を横切る 「7マイル・ラン(航程・走程)」 に就航した。 オーストラリアに初めて入植した年 (1788年) から150周年を迎えた1938年の10月24日に、その就航は開始された。 それ以後シドニー湾を10万回以上も横断し、人気の高かった「Showboat」というブロークン湾への外洋航海時代を含めて、36年間の 就役中に1.92億人の旅客を輸送した。 「South Steyne号」は1974年に起こったBalmainにおける火災によって破壊されてしまい、就役から身を引いた。 そして、ニューキャッスルに長年滞船の状態に置かれ、 1988年までには解体業者によって解体準備が進められようとしていた。入植200周年記念行事の一環として、ビクトリア政府は、 アール・デコ全盛への復古となる、同船修復のための巨額プロジェクトを始めた。1988－1989年にはチャーターボートおよび浮き レストランとしてメルボルンで就役した。1990年には現在の所有者によって購入され、ニューサウスウェールズへと戻って来た。 案内パネルには次のように記されている　（その要旨は上述した通りである）。 "Seven Miles from Sydney.......a thousand miles from care" Welcome Aboard.... South Steyne The World's Largest Operational Steam Ferry South Steyne was build at Leith, Scotland in 1938 & steamed to Australia via the Suez Canal to operate on the famous Sydney Harbour "Seven Mile Run" from Circular Quay to Manly for the Port Jackson & Manly Steamship Company. It entered service on October 24, 1938 throughout Australia's 150th centenary year and crossed Sydney Harbour more than 100,000 times carrying in excess of 192 million passengers throughout the 36 years it operated, including the popular "Showboat" ocean going cruises to Broken Bay. Fire destroyed the vessel in 1974 at Balmain and it was withdrawn from service. It lay idle for many years in Newcastle ready for the shipwreckers breaking yards until in 1988, the Victorian Government as part of its Bi-Centennial program, commenced a multi-million dollar restoration of the ship back to its original 'Art Deco' glory. South Steyne operated in Melbourne from 1988 to 1989 as a charter boat and floating restaurant. In 1990 the steamship was purchased by its present owners and returned to NSW. Classified by the National Trust and the Heritage Council, South Steyne is deemed to be one of the 14 icons of Sydney. South Steyne Technical Details Port of Registry: Sydney (Darling Harbour) NSW Builders: Henry Robb Shipbuilders, Leith Scotland, 1938 Machinery: Harland & Wolfe, Belfast Same builders as the legendary "Titanic" Class: Lloyds 100A1 Length: 224ft (68.32m) Breadth: 40ft (12.2m) Speed: 17 knots (speed trial) Interior: Art Deco Passengers: 1781 Harbour, 998 Ocean Home Port: Newcastle, NSW [2011.04.04-12 オーストラリア海洋博物館にて][拡大画像: x23437.jpg] 1 2 3 4 1. 背景は「コックル・ベイ」のウォーターフロントとダウンタウンの摩天楼風景。　[拡大画像: x23438.jpg][拡大画像: x23544.jpg: 説明書き] 2. 「ダーリン・ハーバー」をまたぐ大橋(Pyrmont Bridge)と、その湾奥に広がる「クックル・ベイ」。そこに錨を下ろす「South Steyne号」。　 [拡大画像: x23498.jpg][拡大画像: x23545.jpg] 3. 「South Steyne号」は煙突二本の蒸気船である。フェリーに多くみられる構造的特徴の一つといえるが、船首尾は同じ船形をしているようだ。　 [拡大画像: x23499.jpg] 4. 航海ブリッジは木造り。積年の風雪に耐えてきたという堂々の風格をもち、その歴史の重みを感じさせる。　[拡大画像: x23500.jpg] 辞典内関連サイト ・　世界の海洋博物館 ・　海洋博物館－オーストラリア ・　オーストラリア国立海洋博物館・訪問記 [2012.4.4-12]