海洋総合辞典 Comprehensive Ocean Dictionary, 特選フォト・ギャラリーPhoto Gallery, パラグアイ船籍押し船Paraguay-registered pusher, ブエノス・アイレス港Buenos Aires port, アルゼンチンArgentine

一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋


One Selected Photo "Oceans & Ships"

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パラグアイ船籍の押し船
[アルゼンチン/ブエノス・アイレス港]

南米アルゼンチンのブエノス・アイレス港の埠頭、それも⌈ボカ地区⌋にごく近い埠頭にてたまたま見掛けた 一風変わった船について記す。 埠頭で初めて見た時は何用の船なのか理解できなかった。 船のファンネルマークや、特に船首の形状を観察するうちに思い当たった。ブエノスから1,000kmほど北に位置する内陸国のパラグアイ 周辺を流れる大河で何度か遠目に見たあの押し船 (pusher, push boat) に相違なかった。 パラグアイの最重要輸出産品である大豆を積載した大型平底のいくつもの艀 (はしけ) を縦列につなぎ合わせ、 それらのうちの最後部の艀を押しながら航行する押し船 (プッシャー) のことで、その特徴として角ばった船首をもって いるのを思い出した。
[参考] pusher barge: 押されて運ばれる艀、押航艀/pusher barge system: プッシャー・バージ方式 [押し船で艀を押航して 輸送する方式].

パラグアイは南米大陸の中ほどに位置し、南米のへそと呼ばれる。ブラジル、アルゼンチン、ボリビアに囲まれ、海をもたない 内陸国である。 南米大陸南部を北から南へと流れ下る大河ラ・プラタ川(ブエノス・アイレスの少し南方で大西洋に注ぎ出る)を上流へ遡ると パラグアイ川という名に変わる。 そして、パラグアイの国土を東西に二分する。東部域 (Paraguay Oriental) はかつて亜熱帯樹林で密に覆われていた。 だが、今ではほとんど開墾され大農牧地帯へと変貌している。国民のほとんどはこの地域に居住する。 他方、西部域 (Paraguay Occidental) はチャコ地方と称され、気候・水資源・土壌などの諸条件からして余り農業に適さず、 その開発は後発的で人口も極めて希薄である。このチャコ地方のごく一部がパンタナルと呼ばれる大湿原地帯と重なっている。

ラ・プラタ川の上流部における本流であるパラグアイ川に合流するのが支流のパラナ川である。パラナ川には世界でも有数の 巨大ダム・イタイプダム(パラグアイ・ブラジルとの国境上にある)およびジャシレタダム(パラグアイ・アルゼンチン との国境上にある)があり、水力発電所が稼働する。 パラグアイの最重要産業は農業であり、その最大の輸出産品は大豆であるが、電力の大輸出国でもある。

内陸国のパラグアイにとっては、道路による陸上輸送に加えて、パラグアイ川とパラナ川の大河を利用しての水上輸送は、 特に大豆・小麦などの海外への輸送において極めて重要である。パラグアイ川は大河であっても浅瀬などの難所があるといわれ、 また河川水量が少なくなる時季もあり、吃水の深い普通の大型貨物船は通航に支障をきたすこともあるという。 最も実際的な輸送方法は、平底のバージを縦列に仕立てて、それを後ろから押すというプッシャー・バージ方式である。 ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイとの協定によりパラグアイはそれぞれ自由港をもつ。画像はパラグアイの重要な物資 輸送手段である押し船の繋船風景である。

[2014.3.3-31 アルゼンチン/ブエノス・アイレス港にて] [拡大画像: x26023.jpg][拡大画像: x26021.jpg][拡大画像: x26022.jpg]


パラグアイ国周辺地図: パラグアイ川とパラナ川が合流する地点から1000kmほど下るとブエノス・アイレスにいたる。 ラ・コルメナ、イグアス、ラパスなどの日本人移住地も記されている。
[2013年10月13日開催のパラグアイ・フェスティバルにおいて、パラグアイ日本人会連合会が出展したパビリオン内で展示されたパネル ⌈パラグアイ移住70年の旅: 1936パラグアイ日本人移住2006⌋より][拡大画像: x25542.jpg]




パラグアイの関連画像 [いずれの画像も2000年3月~2003年3月に撮影されたもの]


パラナ川(手前)に注ぎ込む支流。この支流の少し上流に世界三大瀑布であるイグアスの滝がある。
2つの河川のそれぞれの中央線がパラグアイ、ブラジル、アルゼンチン3国の国境となっている。
手前の陸地がパラグアイ領、左がブラジル領、右がアルゼンチン領である。 [z/z-otra/py14.jpg]

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1. チャコ地方のパラグアイ川沿いにあるフエルテ・オリンポ(Fuerte Olimpo)という村での夕暮れ風景。 川の真ん中がパラグアイ (手前側) とブラジル (対岸) との国境となっている。左方向が上流で、ボリビア、ブラジルに広がる パンタナルへと繋がる。1,000kmも溯上しないうちにアマゾン河との分水嶺となる。 [拡大画像(x8306.jpg)][拡大画像1(x8307.jpg)]
2. 同じくフエルテ・オリンポ村での朝方の風景。港に艀などが繋がれている。港といっても桟橋・岸壁はなく、 堤防を利用した船着き場があるだけである。右方向が下流で、アスンシオンやブエノス・アイレスにいたる。 [拡大画像1(x8308.jpg)]
3. プッシュ型のタグボートに押されて3連の艀が航行する。 [拡大画像(x8309.jpg)]

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4. パラグアイのアスンシオン港(Puerto de Asunción)。左の白亜の館は国家航海港湾庁。撮影: 2000.8.7 [拡大画像(x6575.jpg)]
5. パラグアイ川辺には水草がへばりついている。対岸はアスンシオンの摩天楼風景。 [拡大画像(x7880.jpg)][拡大画像(x7881.jpg)] [拡大画像(x7882.jpg)]

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6. パラグアイ川のほとりに位置するアスンシオン港。中央の建物 (2階建て )は国家航行港湾庁。この右側に沿ったところに、 小規模ながらコンテナーヤードがある。 [拡大画像(x4626.jpg)]

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7. パラグアイ川にかかるレマンソ橋からアスンシオンのダウンタウン (下流方向) を遠望する。 [拡大画像: x4588.jpg]


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