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大航海時代、ポルトガルはイベリア半島から西アフリカ沿いに南下し、喜望峰を迂回するアジアへの航路を開拓し、要所要所に
海外拠点・植民地を築いて行った。他方、スペインは南米大陸南端のホーン岬を迂回するアジアへの航路を開拓し、
またヌエバ・エスパーニャ副王領 (現在のメキシコ) からアジアへの航路を開拓する一方で、カリブ海地域および中南米大陸を植民地化した。
要するに、喜望峰迂回とホーン岬迂回のアジアへの2つの大海道は両海洋帝国によって支配される時代が長く続いていた。
他方、オランダ、フランスと共に、英国は両航路から締め出されていた新興国の一つであった。
英国がユーラシア北方や北アメリカ大陸のどこかにアジアへ辿り着ける短距離のルート
が存在するに違いないと考えても不思議ではなかった。事実、英国はそれを探し求め続けていた。そのルートには当時から2つあると考えられた。
一つはヨーロッパから北西方向に航海して北米大陸の北方海域を経てアジアにいたる「北西航路」。
ヨーロッパから北東方向に向かい、ユーラシアの北方海域を経てアジアにいたる「北東航路」である。
英国は、北西航路の発見者に賞金を授けるという1745年の議決の期限を1775年になって延長し、かつその賞金額を2万ポンドまで引き上げた。
英国時計職人ハリソンが1761年にいわゆるクロノメーター (船舶時計) を完成し、1773年に賞金2万ポンドを受け取ったが、現在の価値にすると
10億円の大金といわれる。同航路の発見者への賞金はまさにそれに匹敵する大金であった。かくして、ジェームズ・クック (1728-79年) は、
英国海軍本部からの要請として第3のアジア航路の発見を依頼された。
彼にとっては3回目の大探検航海 (1776-79年) であった。
ヨーロッパ人としては初めてハワイ諸島に着達したクックは、その後ヌートカ湾(現在のカナダのブリティッシュ・コロンビア州
バンクーバー島)を北上し、アラスカ湾、アラスカ半島を迂回して、ベーリング海に至ったが、北緯70度あたりで氷海に行く手を阻まれた。
探検航海の立て直しのためにいったんハワイ諸島に戻ったが、島民との小競り合いで戦死してしまった。残された乗組員たちは再度
ベーリング海峡への探検航海に挑戦したものの、その成果は北西航路が氷に閉ざされていることを確認できたのみであった。
その後、英国海軍士官ジョージ・バンクーバー (1757-98年) が、1791-95年にかけて、ブリティッシュ・コロンビアを
中心に、北米西岸沿いに詳細な調査を行い、その結果ベーリング海峡以南の北米西岸には北西航路につながる海道は存在しないことを最終的に
確認するにいたった。
画像はバンクーバー船長の旗艦「ディスカバリー号」の模型である。説明書きには次のように記されている。
Discovery
The Discovery was Captain Vancouver's flagship. Discovery was classified as a sloop carrying fourteen guns and was
rated in navy records as sixth rate. This type of vessel was originally a coal carrier refitted for exploration work.
Her length was just under one hundred feet and she had a crew of one hundred.
Hull: 99.2 keel × 28.3 breadth ×15.5 depth (30.2m × 8.6m × 4.7m). Wt: 330 tons. Hull: wood. Compliment (crew): 100.
Armament (Cannon): 10 × 4 pdr, 10 swivels. Built: Randall & Brents, London; 1789.
[参考]
* 1600年代中期以降、北米東海岸のセントローレンス湾が「アニアン海峡」という海道によって北米西岸につながるという伝説が流布していた。
バンクーバーの調査結果によって、「アニアン海峡」は実在せず、この伝説は誤ったものであることが明らかにされた。
* バンクーバーはクックの第2回探検航海 (1772-75年) に参加した経験をもつ。また、クックはこの第2回航海でクロノメーター
(船舶時計) を用いて正確な経度を割り出し、科学的な船位測定を行ったことで知られる。
[参照文献] 宮崎正勝・著 「海図の世界史」(新潮選書)、新潮社2012年、pp.255-259.
[2015.2.2-17 カナダ&キューバの旅/2015.2.3 博物館訪問/2015.06.04 記][拡大画像: x26865.jpg][拡大画像: x26866.jpg]
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