一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋
カツオ一本釣り漁船
A skipjack pole and line fishing vessel
宮城県気仙沼漁港には年間10万トンほどの旬の魚介類が水揚げされるという。特にカツオ、サンマ、サメ、
メカジキなどは全国屈指の水揚げ高をもつ。 漁港エリアはとてつもなく広く、リアス式の狭湾に沿って漁船係留岸壁が細長くのびる。岸壁には出漁準備にいそしむ多くの カツオ漁船が居並ぶ。
カツオ一本釣り漁船はカツオの群れを見つけると、船の周りに「蝟集(いしゅう)」させるために活き餌のカタクチイワシなどを撒いたりする。
さらに、舷側上縁のいくつもの放水口から水を射る。カツオは水しぶきをイワシと見間違って追い続けるのであろう。
射水はカツオの群れが船から離散しないよう、いわば船に釘付けにさせておくための工夫でもある。 「1982年国連国際海洋法条約」からすれば、カツオはマグロとともに「高度回遊性魚種」ということになる。広大な大洋を、人間が線引きした 200海里排他的経済水域 (200海里EEZ) の境界線に全く無頓着に、かつダイナミックに、その経済水域や公海を自由に行き来する。 マグロについては、世界にはその国際的な保存・管理のために「地域漁業機関」がいくつか存在する。2010年3月カタールの首都ドーハで 開催された「ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)」締約国会議で、大西洋・地中海産 のホンマグロの国際取引禁止案が提出され、マグロ消費大国・日本を顔面蒼白にさせた。 同案は否決されたはしたが、今後、漁獲量の一層の削減などの国際的規制の強化にかかわらず資源量の減少が続くようなことに なれば、国際社会からの国際取引禁止圧力は急速に増すこともありうる。 太平洋産ホンマグロについても、同条約上の国際取引禁止対象魚種の指定に向けた動きが出てこないとも限らない。 他方、マグロの世界最大消費国である日本にとっては、将来における国際規制の強化を見越しつつ、マグロの安定供給を 確保するため、国内外でのマグロ養殖事業への多岐の取り組みは必然的となろう。 カツオについては、今のところ資源は世界的に安定しているとされる。カツオは一生の間におおよそ地球20周以上の距離を 回遊すると言われる。その回遊などの生態、資源状態に不明な点が多い。太平洋におけるカツオの最大持続可能生 産量 (Maximum Sustainable Yield) は正確なところは分かっていない。 カツオ資源の次世代における適正な国際資源管理の基礎とするためにも、カツオの標識放流と再捕獲による回遊実態把握 をはじめ、恒常的な科学的調査・研究が必須である。
海の中のことは分からないことだらけであるが、21世紀初頭の現在はっきり見えているのは、人類は今や世界の魚を
枯渇させようと思えばさせることができるくらいの近代的な漁獲能力を持ち合わせていることである。カツオ資源も他の海洋
生物も「乱獲の挙句に枯渇させる」という愚を犯すことは決して許されないのである。
辞典内関連サイト ・ 世界の海洋博物館 ・ 日本の海洋博物館 ・ 日本の海洋博物館-「気仙沼リアスシャークミュージアム」 |