一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋
英国リバープールの海と船のある風景(4)
/「ソルトハウス・ドック」のナローボート船溜まり
英国の港湾・産業都市リバプールは、英国本島とアイルランド島との間にあるアイリッシュ海に流れ出る
マージー川の河口域に発展した街である。
マージー川の流れは速く、また潮位差が激しい。リバプール実業界は、それを克服してより大きな船を安全に係留させ国際貿易に
進出したいとの想いから、1700年代にウイリアム・スティアズというオランダ人技師を雇い入れ、河口から少し遡った川岸の沼地
(その当時、プールPoolと呼ばれていた)にドックを初めて建設した。顧みれば、このドック建設が、その後リバプールをして世界の
国際貿易都市へと歩み始める上での原点、あるいは起点であったといえる。 画像は、リバプールの「ソルトハウス・ドック (Salthouse Dock)」のナローボートの溜り場風景である。 土曜日の昼下がり、ボートを訪ねて来た友人や親戚らしき人々、あるいは最後尾の狭いボートデッキ上で談笑する人々の姿がみられた。 あるボートでは、船側の覆いを開けっぴろげにしてキャビンに陽光と外気を取り込みながら衣類の繕いごとをする老人の姿があった。 また、すぐ傍の係留桟橋上で洗濯物を干しているボートもあった。ボートを眺めていると、ボートの主というか住民の生活の様子が 僅かながらも垣間見ることができた。 ナローボートは、現在ではもっぱら娯楽に利用されているが、産業革命時代の石炭運搬船だったものである。 当時のエネルギー源は石炭であり、それを輸送するのに英国では産業都市と炭田地帯とを結ぶ運河網が発達した。その運河の幅員は船に 物理的な制約をもたらした。 即ち、運河の幅に合わせて船体の大きさ、特に幅が決められた。かくして、石炭運搬船は独特のスタイルをもつにいたり、 幅は2mほど、全長は長いものでは25mほどで、極端に細長い船型をもつ。 現在では主に娯楽や生活に用いられるナローボートは、一般家庭がもつ設備備品が一揃い保有しており、 いわば一軒家がそのまま水上を移動するかのようである。 船内にはダイニング、キッチン、トイレ、シャワー室、ベッドルーム、クローゼットなどが備わる。 最後尾の操船デッキには、舵板 (ラダー) を左右に動かす舵棒 (ティラー) とスロットル (アクセルレバー) が備わる。ボートの速度は 時速3マイル、約4.8kmほどで、歩行速度をわずかに上回る程度であるという。
[2013.6.1 英国リバプール、マージー川沿いのソルトハウス・ドックにて][拡大画像: x25400.jpg] |
1 2 1. 係留桟橋の上には洗濯物が干してある (左最下端)。ボートでの生活の匂いが漂う。 [拡大画像: x25407.jpg] 2. 隣人か、友達か、あるいは家族とで、土曜日の昼下がり、ティータイムを楽しんでいるようだ。 [拡大画像: x25408.jpg] 3 4 3. 良く見ると、船側のカバーを開けて陽光と外気を取り込みながら、老人が何か繕いものをしていた。屋根には太陽パネルが自家 発電に供されている。 [拡大画像: x25409.jpg] 4. 操船用の2つの座席の間には舵棒 (ティラー) が見える。操船はこの最後尾で行なうようだ。 [拡大画像: x25410.jpg] 5 5. 2艘のカラフルなボートはアパートメント・ボート (Apt. boat)。長期生活が可能な設備備品が各部屋に備わっているのであろう。 数百㎞長の運河を旅すれば 1 週間ほどはかかるであろうから、そんな船旅経験をもつ人からすればここでの長期滞在も苦ではない のかもしれない。 [拡大画像: x25411.jpg] * ドック周辺概略図。図の上方のドックがカニング・ドック、下方のそれがアルバート・ドック。 両ドックの間にあるNo.18が「マージーサイド海洋博物館」である。 アルバート・ドックの右側にはソルトハウス・ドックがある。 [拡大画像: x25212.jpg] |