|
大阪メトロ御堂筋線「本町駅」の北北改札出口でのこと、通りがかりにたまたま目に留まった電光式広告モニター画面に釘付けとなった。
我が国有数の海運会社「商船三井(MOL; Mitsui O.S.K. Lines)」の広告モニターであった。同社が大阪商船として歩み始めた直前・直後の
発展の歴史や、取り組んできた造船・海運関連の最新の技術革新などについて広報する。
商船三井は他社と連携・協業して、地球温暖化効果ガス二酸化炭素(CO2)のゼロエミッション船の建造を目指す技術研究
開発プロジェクトに取り組む。画像1は同プロジェクトの中核をなすCO2ゼロエミッション実証船の「Wind Hunter」である。
モニターには同船も繰り返し映し出される。
「Wind Hunter」は「ウインドチャレンジャー型セール」と称される硬翼帆(画像2・3「WIND CHALLENGER」参照)を、
その甲板上部に12基備える。そして、
いわば全装帆船の総帆に風を受けるが如く、ウインドパワーにて帆走・推進する。開発を目指す近代テクノロジーはそれだけではない。帆走時に
船底に生じる水流でもって、その船底に施された発電用水中タービンを回転させ起電する。
更に続きがある。船内で起電された電気をもって水を分解しグリーン水素を生産・貯蔵するという。グリーン水素と
は、自然再生可能エネルギー(ウインドパワー)をもって起電された電気(即ちCO2を発生させることなく生産された電気)
をもって水分解して得られた水素である。
生産された水素は、例えば、トルエンと化学反応させメチルシクロヘキサン(MCH)という液体に変換させ貯蔵・輸送される。
水中タービンで得られた貯蔵電気で当該船の推進プロペラを回転させたり、グリーン水素を燃料にして推進させることができれば、
「WIND HUNTER」号からのCO2排出はゼロということになる。
船舶が従前のC重油燃料から究極の水素燃料の利用へと転換するまでにはまだまだ道のりは長い。だが、アンモンニア・メタノール・LNGなど
の燃料を中継ぎ的に利用し燃料転換を図る時代が今まさに到来している。何十年かの将来にはCO2を排出
しないゼロエミッションの商用船の出現が期待される。海洋に吹く風を利用した硬翼帆による現代船の帆走 → 船底設置の発電用タービン
による起電 → 船上での水の電気分解と水素製造 → 水素の貯蔵および水素燃料による発電 → 電動プロペラ駆動による船の推進。そんな完全
な脱炭素サイクルをもつ完全ゼロエミッション船の実現も夢ではない。
海運界における究極の脱炭素船の運航の実現へのハードルは極めて高いが、目指すべきベクトルの方向性は正しいものである。
日本の海運業界の国際競争力の再生・復活への扉を開かせる一つの画期的な技術開発戦略であるに違いない。
ところで、海では絶えず波が発生する。かつて東海大学海洋博物館で、その波の動きを利用して(=動力源にして)船を前進・後進させる
という夢のような浮体模型を観たことがある。
模型は波の力だけで前後移動し、他の何の機械的動力装置もたない。今回「ハンター号」の推進原理とゼロエミッションの
ことを知った時には、かつてそんな自立航行船舶模型から受けたような強い衝撃を受け心を大きく揺さぶられた。
2 3 硬翼帆をもつ「ウインド・チャレンジャー」
[撮影年月日:2025.08.02/場所: 大阪メトロ御堂筋線「本町駅」の北北改札出口にて]
|