一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋
海洋哺乳動物の楽園バルデス半島&ペンギン営巣地プンタ・トンボ
[アルゼンチン・パタゴニア]
南米アルゼンチンの首都ブエノス・アイレスから南西方向に国道を下る。⌈パンパ(La Pampa)
⌋と呼ばれる大草原(パンパ)を500km以上も斜めに横切って、パタゴニアへのゲートウェイである港町バイア・
ブランカ(Bahía Blanca)へいたる。
バイア・ブランカの少し南には、アンデス山脈を源とする大河コロラド川 (Río Colorado) が大西洋に注ぐ。その
辺りから自然風景は徐々に変化をみせる。荒涼とした野生的風景が南方へ1500kmも続くパタゴニア地域の始まりである。 バイア・ブランカから大西洋岸沿いにさらに500kmほど南下を続けると、バルデス半島(Península Valdés; 右図参照)の付け根にあり、半島への拠点であるプエルト・マドリン(Puerto Madrin)にいたる。 大西洋に大きく突き出るバルデス半島には、その中央部辺りの北側と南側を大小2つのスプーンで大きくえぐったかのような、 奥行きの深い湾が形成されている。北側の湾をサン・ホセ湾(Golfo San José)、南側の湾をヌエボ湾(Golfo Nuevo)という。 両湾にはさまれて細長くのびる地峡は、その最狭部においてわずか5㎞ほどである。 半島の陸(おか)風景は、ほとんど低灌木がはえ茂るだけの、荒涼・殺伐としたものである。 半島の海べりの多くは断崖に取り囲まれている。半島周辺海域はまさに海洋哺乳動物の楽園で、クジラ、イルカ、オタリア、シャチ、 ゾウアザラシの他、ペンギンなどを探索することができる。 画像 (右上) は断崖に縁どられた海辺と、低灌木の荒涼とした大地の広がる陸の風景をスケッチしたものである。 陸では、グアナコ (ラクダ科)、ニャンドゥ、野生ウサギ、アルマジュロ、ビクーニャなどのパタゴニア地域独特の動物を探索できる。 半島は1999年にユネスコ世界自然遺産に登録された。また、プエルト・マドリン市内には ⌈海洋・自然科学博物館 Museo de Ciencias Naturales y Oceanográfico⌋ (博物館: 右下画像の白亜の館) があり、パタゴニア/バルデス半島の自然を学習することができる。
プエルト・マドリンから空港のあるトレレウ(Trelew)という町を経て、海岸沿いに120kmほどさらに南下すると、
ペンギンの営巣地があることで知られるプンタ・トンボ(Punta Tombo)がある。無数のマゼランペンギンが、餌を求めて
巣穴からヨチヨチと歩いて水際にたどりつき、海中へジャンプして潜って行く。海辺まで歩く姿は実にユーモラスで、
見ていて飽きない。海岸沿いにぎっしりと何万羽というペンギンで埋め尽くされる風景は壮観である。ペンギンを観察できる時期は、
9月から3月頃までである。
[参考] バルデス半島を含めパタゴニア沿岸域は潮の満ち干が激しいところである。また、バルデス半島のサン・ホセおよび ヌエボ両湾の潮位は異なるということもあって、両湾にはさまれた地峡に水路あるいは暗渠を貫通させて、その間にタービン 発電機などを設置して、潮流利用の発電を行なうという、アルゼンチン海軍の研究開発プロジェクトがかつて計画された ことがある。だが、実現することはなかった。 アルゼンチン海軍管轄下の国立漁業学校勤務時代 (1984-87年) に副校長ジアベドニー氏から直接聞かされた。海洋エネルギー 開発関連読本などでも紹介されている話でもある。
[参考][西語] |