一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋
⌈ブエルタ・デ・ローチャ⌋ = 昔のボカの港風景(1835年および1870年)
[アルゼンチン/ブエノス・アイレス]
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南米アルゼンチンのブエノス・アイレスはラ・プラタ川という大河の西岸に発展してきた町である。そのブエノスの中心街の少し南側に
リアチュエロ (Riachuelo)という小さな川(スペイン語で riachuelo とは、小さな川という意味)が注ぎ込んでいる。
ブエノス近辺の河岸にも湿地帯が多く、また川としてはリアチュエロ川くらいしか見当たらなかったので、
この河口付近が船着き場となり、さらに港へと発展し利用されてきたのは自然の成り行きであった。
かくして、ブエノスの港としてボカ港はラ・プラタ川に注ぎ込むこのリアチュエロ川河口域に築かれた (スペイン語でボカ
(boca)とは口 (くち)、入り口などという意味であり、リアチュエロ川の入り口をさして名付けられた地名である;
ラ・プラタ川への出口でもある)。
ブエノスの現在の北港(ダルセナ・ノルテ Dársena Norte; 北の船渠・ドックという意味)などができる以前は、
このボカの港はブエノス最大の港であった。ヨーロッパから大勢の移民がボカ港から上陸して行った。 ラ・プラタ川からそのリアチュエロ川に入り、ボカ港の港内に入域した後、川筋に沿って少し遡上すると、少し広い水域をもつ 港 (あるいは泊地) へといたる。この河川港がボカ港のうちでも最奥にある港であり、その辺り周辺がボカ地区 (La Boca) の中心街 となっている。 この泊地辺りのことが、その昔⌈ブエルタ・デ・ローチャ⌋ (Vuelta de Rocha)と呼ばれていた。ローチャとは この⌈ブエルタ⌋辺りの土地の所有者のうちの一人の名前であった。 ⌈ブエルタ⌋はスペイン語で曲がったところ 曲がり角、川などのカーブ、曲折部などの意味がある。 そして、1880年代に、リアチュエロ川のこの⌈ローチャの曲がったところ(ブエルタ・デ・ローチャ)⌋と称されていたところに、 広く静穏な船舶回頭・停泊用水面を作るべく浚渫されたものである。その川の曲がりが現在でもボカの泊地の形状に 残されているように見受けられる(下の小画像1&2参照)。 画像1には、⌈Vuelta de Rocha año 1870(1870年、ローチャのブエルタ)⌋と手書きで記されている。 画像のブエルタ・デ・ローチャには、少し川幅の広い水面が見られる。ブエルタには曲がったところという意味があるが、 他方でUターン、折り返しなどの意味もある。川を遡上してきた船はここで回頭したのであろう。 画像には、手漕ぎボートで渡しなどの仕事をしているような人たちが写っている。 |
① ②
① & ② リアチュエロ川の正に「ローチャの曲がったところ」で切り撮った、
現在のボカ泊地の風景。 [拡大画像: x26007.jpg][拡大画像: x26008.jpg][拡大画像: x26011.jpg: Vuelta de Rocha] |
2
船が溯上し船荷の揚げ降ろしのできる船着場を確保できる川は、恐らくこのリアチュエロ川くらいなものだったのであろう。
リアチュエロ川は現在のボカの泊地辺りで緩やかに弓なり状に蛇行し、ほんの少し三日月状の水域が形成されていた。
現在見られるように、泊地を確保するため浚渫され半円形の水域が造成されてきた。 画像2には、 "Puerto de los Tachos" Actual "Vuelta de Rocha"---Fotografía de : Una Litografía del Pintor Argentino Carlos E. Pellegrini --- Editada en Buenos Aires en 1835. と手書きで記されている。⌈実際の"ブエルタ・デ・ローチャ"、1835年にブエノス・アイレスで編集された、アルゼンチン画家 Carlos E. Pellegriniのリトグラフ (石板画) の写真⌋と訳されよう。 1835年には、湾曲部に数戸の倉庫らしきものが両岸に見られるが、帆船は一艘のみ泊しまだまだ自然のままの状態が写されている。
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辞典内関連サイト [2014.3.3-31 アルゼンチン/ブエノス・アイレス/ボカ地区の⌈リアチュエロ川の曲がるところ⌋にて] [拡大画像: x26015.jpg][拡大画像: x26016.jpg]
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