一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋


One Selected Photo "Oceans & Ships"


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世界の200海里経済水域図 [釜山/国立海洋博物館]


拡大画像(z21142.jpg)はこちらです。

1973年の第1会期から1982年の第11会期まで10年近くかけて開催された国連第3次海洋法会議の成果として、世界海洋を めぐる法秩序が固められ、「海の憲法」と位置づけられる国連海洋法条約が成立した(1994年11月発効)。

人類史上初めて成文の多国間国際法をもって、領海の幅は最大12海里まで認められた。日本は明治維新以来、 領海幅を3海里と主張し、それ以遠の海は公海であるとの立場を堅持してきた。領海を狭く、出来る限り公海を広くすべしとの 主張である。より広大な公海における漁業と航行の自由をえることによって、国益を最大限化したいということであった。

日本は第3次海洋法会議では、領海以遠の海を公海とし、幅200海里におよぶ排他的経済水域 (200-mile exclusive economic zone; EEZ) の設定に関して、先進国では最後まで反対の立場を貫徹しようとした。会議では「Mr. Except One」と呼ばれた。 結局、米国およびソ連 (会議当時) が、1970年代中期に国内法にて200海里経済水域の設定に踏み切り、日本もやむなく追従する 結果となった。

大陸棚の範囲、即ち海底およびその地下の石油ガスや鉱物資源などに沿岸国の管轄権が及ぶ範囲は原則として沿岸から 200海里までであるが、地質的諸条件が満たされれば延伸することが認められる。 だが大陸棚の最大範囲は沿岸から350海里を超えることはできない。それ以遠の海底とその地下は「国際区域」とされ、 そこに賦存する非生物資源は人類の共有財産とされ、「国際海底機構」によって管理される。

画像は世界海洋において諸国が200海里経済水域を設定した場合の海図である。 世界海洋のうちどの程度が経済水域として国家管轄権の下に置かれ、公海はどう残されていることになるかを総観することができよう。

国連海洋法会議では、ボリビアやネパールのような内陸国、シンガポールのように狭い海峡に面し相対国によって海への間口は 塞がれ、経済水域あるいは大陸棚を広げられない国、アルゼンチン、チリ、ペルーのように海岸線が細長くのびる国、 豪のような大陸国家、地中海やカリブ海に面する沿岸諸国のように互いに近接し経済水域が複雑に重複して広げようのない国々、 南太平洋諸国のように島嶼が散らばり陸地面積に比して圧倒的に広大な経済水域をもつ国々。その地理的諸条件はすべて異なる。

異なるのは広さだけではない。経済水域の質そのものが大きく異なる。海洋生物の基礎生産性の高い国、ペルシャ湾岸に面し 国土面積は小国であるが豊富な海底石油・ガス資源をもつバーレーン、カタール、アラブ首長国連邦など。 アルゼンチンやブラジルは経済水域の面積は大きく、また地理的大陸棚の面積は極めて大きい。 日本の国土面積は小さいが、世界でも6番目の広さの経済水域をもつ。その水域での基礎生産力は極めて高く、 世界三大漁場の一角を占める。だが、経済水域内での海底石油・ガスの産出量はその消費量に比べればなおも微々たるものである。 だが、メタンハイドレートのポテンシャルは大きく、将来経済水域の価値は急激に高まる可能性を秘めている。

経済水域や大陸棚に関して重要な設問がなされてきた。世界海洋の水産資源、鉱物や化石燃料資源などを沿岸国のもつ地理的な偶然性 によって配分する結果となるが、国際社会はそれを受け入れるのか。沿岸諸国が支配する経済水域や大陸棚の面積、およびそこに 賦存する生物および非生物資源の質は、すべて偶然の要素によって決まる。1994年11月にそれでよいとする法制度が諸国の妥協で 創設された。

画像の経済水域図は国連の全加盟国の政治的妥協の結果を示している。翻って、国際区域の非生物資源は人類の共有財産として 管理され、国際的ルールの下で資源配分や収益配分がなされることになっている。だが、現在も非加盟の米国は遠い将来それに 異議を唱え、新しい法的枠組みへの改変を主張するかもしれない。 [To be continued]

[画像撮影: 2016.9.15 韓国・釜山の国立海洋博物館 (National Maritime Museum) にて][拡大画像: x27423.jpg]


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