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「国際海峡」には同条約に規定する「通過通航権」(right of Transit Passage)の制度が適用される。公海における自由通航
(あらゆる船舶・航空機の航行または上空飛行の自由)でもなく、また領海における無害通航でもない第三の通航制度である。
これは、海峡通航国の通航上の利益と、海峡沿岸国の利益との合理的な
調整をめざして、10年以上におよぶ第三次国連海洋法条約会議において政治的妥協が図られ、参加国のコンセンサスを得ることに
成功したことの結果である。
その制度の重要ポイントとしては、
* すべての船舶および航空機は妨げられない通過通航の権利を享受する。
通過通航とは、「公海またはEEZの一部分と公海またはEEZの他の部分との間の海峡における」、「継続的かつ迅速な通過の目的のみの
ために」、航行および上空飛行の自由が行使されることである。
* 船舶・航空機は、通過通航権を行使している間は、海峡の通航または上空飛行を遅滞なく行うこと、武力による威嚇または
武力の行使を慎むこと、海峡沿岸国の事前許可なく調査活動または測量活動を行うことはできない。
* 海峡沿岸国は海峡内を航行するための航路帯を指定すること、また分離通航方式を設定することができる。
海峡沿岸国は、海峡の通航に関する法令、因みに通航の安全、海上交通の規制、汚染の防止、漁獲防止などに関する法令を制定する
ことができる。船舶は当該法令を順守しなければならない。
* 海峡利用国・海峡沿岸国は、航行・安全の援助施設などの海峡における設置、船舶汚染防止につき協力するものとする。
* 海峡沿岸国は、通過通航権を妨害してはならない、また通過通航は停止してはならない。
国際海峡では、かくしてすべての国の潜水艦は、国際海峡(の航路帯)を浮上することなく、また国旗を掲揚することなく、
潜航したまま「継続的かつ迅速な通過の目的のみのために」航行する自由を享受できる (ただし、マラッカ・シンガポール海峡の場合、
水深が20-40mしかない航路帯があるので、潜水艦が同海峡のすべての航程を完全に潜航したまま通り終えることは物理的に不可能である。
だが、例えば空母艦隊などが通過通航権を行使できることには
軍事・安全保障上の大きな意義がある)。また、軍用・民間航空機も上空飛行の自由を享受することができる。
マレーシア・シンガポール海峡は同条約に定める「国際航行に使用される海峡」に当たり、そこを通航する船舶は通過通航権を
行使できる、と広く認識されている。
他方、スマトラ島・ジャワ島間のスンダ海峡、あるいはジャワ島・ロンボク島間のロンボク海峡は、同条約第三部が適用される
国際海峡ではない。これらの海峡は群島基線によって囲い込まれた群島水域内に存在する海峡と位置づけられ、
インドネシアが「群島航路帯」(Archipelagic sea Lanes)を設定し、群島航路帯通航権(Right of Archipelagic Sea Lanes Passage)なるものを
鼓吹する。同条約第54条により、通航中の船舶の義務、群島国の義務、
群島航路帯通航権に関する法令などについて、国際海峡に関する規定が準用されるので、実質的な違いはないといえよう。
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辞典内関連サイト
・ 世界の海洋博物館
・ シンガポールの海洋博物館
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