海洋総合辞典 Comprehensive Ocean Dictionary, 特選フォト・ギャラリーPhoto Gallery, 「カニング・ドック」サイド風景"Canning Dock"side-scapes, リバプールLiverpool, 英国UK

一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋


One Selected Photo "Oceans & Ships"

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英国・リバープールのドックサイド風景(船首斜檣の
若者二人)+オールド・ドックについて


国・リバプール市内を流れるマージー川 (River Mersey) 沿いには現在でもいくつもの大規模なドック (船渠)が連なる (最下の画像「ドック周辺概略図」参照)。画像はそのうちの一つである「カニング・ドック」 (Canning Dock) で 見かけた風景を切り撮ったものである。船名「ネクスト・ウェーブズ (Next Waves)」という2本マストの小型帆船がドックに停泊する。 船首には長大な斜檣 (バウスプリット) を突き出している。 土曜日の昼下がり、二人の若者が、円材 (スパー) にまたがり、慣れた手つきで、のんびりムードで、その円材に磨きをかけ始めた。
[拡大画像: x25337.jpg][拡大画像: x25398.jpg: 拡大画像]




ックのすぐ近くに、リバープールにおけるドック建造創成のことにふれたタウン史案内パネルがあった。 それによると、1700年代初期において、リバプールの若い実業家たちの海外貿易拡大への大きな志は、先ずもって大きな船を必要とした。 更には、マージー川の速い流れや大きな潮位差を克服してそんな大きな船を安全に泊渠させるための大規模な船溜まりや船着場の 建設へと突き動かした。まさにドック建設が、リバープールを世界的な商業の町・港へと発展させていった原動力であった。 ウィリアム・ハッチンソン (William Hutchinson) という一人の男が、約30年間にわたりマージー川の潮位を観測・記録した。 その積年の努力がいくつもの近代的ドックの建設に多大な貢献をなしたという。さらにその科学的知識は1770年以来200年間 にわたり出版・公表され、世界へと広がって行った。先人たちの志と業は連綿として現在へと続き、現代のリバプール、 そしてイギリスを支えて来た。

パネルには次のように記されている(抜粋)。

    "At the beginning of the 1700s Liverpool's ambitious young merchants wanted to enter into large-scale foreign trade. They needed shelter from the fast-flowing Mersey for bigger ships and devised a scheme to build a huge dock with gates, in the mud of the Pool. Showing great vision, they borrowed as much as they could and recruited Thomas Steers, a Dutch engineer."

    "The Old Dock, the first ever of its kind, was at the heart of Liverpool's commercial activity for almost a hundred years. Within a generation, the obscure little town had been transformed into one of the world's greatest ports."

    "Thomas Steers spent the rest of his life in Liverpool, promoted canals, built a church and the first "playhouse". He also had a business, as anchor smith, which his wife took over when Thomas died in 1764.

    "William Hutchinson was a privateer captain, ship-owner, boat builder, commercial trader, inventor, author, philanthropist and the Dock-Master of the Old Dock. ... For 29 years from 1764, day and night, he measured the heights and times of every high tide at the entrance to the Dock. His records are still being used in scientific research."

    "William Hutchinson's measurements of the tides were used by Richard and George Holden to derive the first reliable, publicly available tide table in the UK. They first appeared in 1770 and were published for over 200 yars. Liverpool is still one of the world's principal centres of sea level science, with the Proudman Oceanographic Laboratory"





[パネル概略] ウィリアム・ハッチンソンは、私掠船長であり、船主、ボート建造者、 商業貿易家、慈善家、、、、またリバプールの昔のドック「Old Dock」のドックマスター (ドック長、船渠長、船渠運用責任者) 「Dock-Master」を務める人物であった。彼は、1764年から29年間も、その古いドックの入り口で昼夜 上げ潮の高さと時刻を測った。 月の相と共に、潮の満ち引きを記録した彼の観測データは今でも科学研究に用いられるという。

リチャード&ジョージ・ホルデン (Richard and George Holden) は、ハッチンソンの潮位観測記録を用いて、英国で最初の信頼おける 潮汐表を作り、また公の利用に供した。 1770年のことで、以後200年間も出版された。リバープールは、「Proudman Oceanographic Laboratory」のような研究所を生み、現在でも 海水準に関する科学研究の世界的中心地の一つである。

他方、1700年代初め、リバプールの大志を秘めた若い事業家らは、大きく外国貿易に乗り出すことを希求した。マージー川の 流れは速い。従って、外国貿易を発展させるためには、より大きな船をその流水からうまく退避させておくことが必要とされた。 かくして、プール(Pool) と称される沼地の中に、水門付きの大規模なドックを建設することを計画した。 そして、トーマス・スティアズ(Thomas Steers)というオランダ人技師を雇い入れた。

  スティアズは削岩を行いドックを造った。今日「オールド・ドック」と呼ばれるそれは、この種の物では最初のものでる。 ドック建造の結果、リバプールが大西洋貿易における世界の大港へと急成長することを可能にした。即ち、おおよそ100年間に わたりリバプールの商業活動の中核を占めることになり、一世代のうちにこの小さな町は世界最大の港の一つへと発展を遂げて行った。 スティアズはリバプールにドック建設後も留まり、運河建設を進めたり、錨製造の鍛冶屋を経営したりしたが、1764年にその生涯を閉じた。

[2013.6.1 英国リバプール、マージー川沿いのカニング・ドックにて]

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1. 「Old Dock Entrance circa 1809」 (1809年頃のオールド・ドック入り口)。船がマージー川から狭い水路を通ってドックに 入ろうとしている。右端の構造物は水門兼歩道橋であろうか。ドックは300年前にスティアズが岩を掘削して造ったのが最初である。 そして、ドックは、その後リバープールをして大西洋貿易の拠点にまで発展させ、さらには世界貿易港への急速な発展を可能に したといえる。 [拡大画像: x25393.jpg]
2. 画像中央部には、帆船がドック内に泊渠するのが見える。画像下部にはマージー川が流れる。ドックと川との間には 水路のようなものが見える。 [拡大画像: x25394.jpg]
[出典] 1 & 2: 公設のタウン史案内パネル.

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3.  マージー川は引き潮のために水位が数メートルほど低下している。画像背後にはカニング・ドックがあり、 この水路で結ばれている。画像は水路に架けれれた水門兼歩道橋から撮影したもの。マージー川の対岸に見えるのは、 アイルランドの首都ダブリンとの間を結ぶフェリーターミナルである。 [拡大画像: x25395.jpg]
4.  カニング・ドック。左側の峡部の先には「カニング・ハーフ・タイド・ドック」 (Canning Half Tide Dock) があり、 更にその先にマージー川へ通じる狭い水路 (画像3) がある。
[参考]half tide: 半潮 [満潮と干潮の中間; 高潮と低潮の間] [拡大画像: x25396.jpg]

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5.  アルバート・ドック。 [拡大画像: x25397.jpg]
6. 「Salthouse Dock」には数多くのロング・ボートが横付けされている。 [拡大画像: x25399.jpg]


* ドック周辺概略図。図の上方のドックがカニング・ドック、下方のそれがアルバート・ドック (Albert Dock)。 両ドックの間にあるNo.18が「マージーサイド海洋博物館」 (Merseyside Maritime Museum) である。そのすぐ隣には「国際奴隷博物館」 (International Slavery Museum) がある。  [拡大画像: x25212.jpg]


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