海洋総合辞典Japanese-English-Spanish-French Comprehensive Ocean Dictionary, 「海&船」特選フォト・ギャラリーOcean and Ship Photo Gallery, 沖ノ鳥島の北小島・南小島Oki-no-Tori-Shima, 東京Tokyo

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一枚の特選フォト「海 & 船」

One Selected Photo "Oceans & Ships"

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沖ノ鳥島と海洋課題について

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[論点(その1)]
  東京から遥か南方の太平洋上の絶海に浮かぶ「沖ノ鳥島」(東京都小笠原村に属する)の過去・現在・未来 における自然地形、社会生活・活動(人間の営み)の有り様が問われている。 サンゴ礁の海面での広がりは、東西約4.5km、南北約1.7kmである。約2000万年前よりも以前に形成された火山島が海没し、その上部 に形成されてきたサンゴ礁であるところ、風波によって浸食の影響を受け続けている。平均海水面より上に常時に露出している 事物は2つの岩である。その面積は4畳半ほどであるとの指摘もある(日経新聞2022.08.28)。2つの岩礁は「東小島」と「北小島」と 呼ばれる。

[論点(その2)]
  二つの岩礁は平均海水面からいかなる高さ(標高)であるか。 国会の議事録には、「北小島」の高さは平均海水面から1メートル、「東小島」のそれは0.9メートルという、政府側の証言が残されている。

  海上保安庁には、同島の最高位は平均海水面から0.84メートルという記録がある。単純計算で岩礁の陸地の高さは一つに16㎝、他は6㎝ (同上の日経新聞2000.08.28)ということになる。

  簡潔に言えば、現在の正確な高さについて誰も知らないのではなかろうか。公式の満潮位の記録の公表がなく、それらの高さについての 正確な数値が見えない。政府はそれを知り得る立場にあろうが、それを公にするメリットはない。 公表は国益に沿わないということか。記録がないこと、イコール「岩礁は沈むことがない」ことに国益上のメリットがあるということか。

[論点(その3)]
  「島」、特に2つの岩礁の海没防止のため、いかなる護岸土木工事などが施されてきたか。その詳細は 添付の関連資料の「沖の鳥島の北小島・東小島について」の通りである。

[論点(その4)]
  今後の自然現象が岩礁にもたらすプラス・マイナスの物理的インパクトはいかに。予見される将来においていかなる 海洋地形学的リスクがありうるか。

  サンゴ礁の上に砂などが堆積し、陸地が極緩慢に自然形成され、陸地が広がるという現象はありうるのか。 地球温暖化による海面上昇の圧力は強くなっても弱まることはない。地球温暖化がさらに進行すれば、海水はさらに膨張し、 海水面は上昇を続けることになる。同島は堆積作用を受けるどころか、海没するリスクが圧倒的に大きい。南太平洋のバヌアツなどでは、 海水面の上昇によって島が浸水・水没する危機に瀕しており、国民は他所への移住を余儀なくされるという。南洋諸国・国民の苦悩は 深刻かつ真剣である。

[論点(その5)]
  国連海洋法条約第121条第1項によれば、「島」とは「高潮時にも海水面上にある自然にできた陸地」をいう。 同条約規定上、沖ノ鳥島が「島」とみなされない場合は、国際法上の法的権利を主張することはできない。法的権利が消滅する。即ち、 離岸200海里の排他的経済水域(EEZ)、およびその水域下にある大陸棚に対する管轄権を失うことになる(現在、同島の存在によって、 EEZや大陸棚に関する管轄権が及ぶ面積は、日本の国土面積を少し上回る約40万㎞2も有する)。繰り返しになるが、「島」とは、 自然に形成された陸地であって、満潮時でも水面上にある(常に水没しない)地物であり、それを論拠にして島は領海さらにEEZと 大陸棚に対する権原を生む。

[論点(その6)]
  国連海洋法条約第121条第3項によれば、「島」であるためのもう一つの要件が定められている。島は 「人間の居住または独自の経済生活を維持できる」という事物であり、それができないものは「岩」である。更に、近年の中国・フィリピン 国際仲裁裁判(2016年7月)の裁定では、「島」であるための解釈上の新基準が初めて明らかにされた。即ち、同条約にいう「島」と「岩」 とを区別する国際法上の基準が追加されることになった。

  同仲裁裁定によれば、満潮時に水面上にあっても、人間が居住や経済活動を維持できないものは「島」ではない。人間が住めず経 済的な生活を送れない地物は「岩」と定義され、12海里領海を設定する権原は認められるが、200海里EEZや大陸棚の管轄権の設定を伴う ことができない。そして、「島」か「岩」のいずれであるかは、その自然状態において、外部の資源に依存したり、自然を収奪する ことなく人間の定住や経済活動を行える「客観的な収容能力に基づいて」判断される、と結論づけている。

  中国は沖ノ鳥島は「島」ではないと公にチャレンジしたことは既に知られている。日本は反論をもって応じてきた。中国は国際司法の 場で「勧告的意見」を求めるであろうか。

[論点(その7)]
  過去における沖ノ鳥島の保全・活用戦略はいかなるものであったか。今後いかなる戦略をもって臨んでいく のか。日本政府の海洋基本計画・政策の中で、どう具体的に論じられているか興味あるところである。あるいは「海洋白書」 (民間研究所の定期的刊行物)などではどう記述されてきたか。今後とも諸国の類似の慣行を注意深く考察すべきであろう。例えば、「フランス、米国領には高潮時に海没疑いのある陸地でもEEZを維持する例がある」という。

  第121条は曖昧な規定となっており、幾つかの疑義がある。その第1項と第3項はどのような連関性をもち、「島」は両項を 同時に満たす必要があるのか。第3項は「島」と「岩」との区分を示すだけの条項であるのか。いずれにせよ、先の仲裁裁定は「島」 と「岩」との区分の判断に重要な意味をもつに違いない。

  いかなる具体的な経済活動や措置が継続的に講じられれば、「島」であるための要件の充足性が促進されるのか。 厳しい海洋環境の中、浮魚礁の設置などを含む漁場開発、周辺海域での海底鉱物資源の探査・揚鉱活動、温度差発電の実証施設の 維持、同島や周辺海域での環境保全活動など、いろいろな営みがありうる。だがしかし、それらは周辺海域での 活動であり、同島での持続的陸上居住を伴わない経済活動を重ねたとしても、要件を充足するに足りるものと見なされうるのか。

  国際法上の権利を守り続けるための国家(政府・民間)の実践的活動を戦略的にどう推し進めて行くのか。戦略と計画を案出し、 継続的に実践することが死活的に求められる。さもなくば、海没の進行だけでなく、岩礁上での人間の居住や経済活動が営まれず、 またそれを支える客観的収容能力も見られないとして、EEZと大陸棚権原を失うリスクが高まることになりかねない。

[To be continued for updating the contents; March 18, 2025]

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関連参考資料 [雑感・雑論/追補・追記]

● 沖ノ鳥島の北小島・南小島について (縦断面図を見る)

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1  沖ノ鳥島は、東京からはるか2,000km南方の西太平洋に浮かぶ、日本領土の最南端にある島である。島全体が楕円形をしており、干潮時に おけるその長径は1.7km、周囲は11㎞である。

2  同島において高潮(満潮)時に海面から露出しているのは、2つの自然の小岩(隆起石灰岩・upheaved limestones)だけである。 一つは横幅4.7メートル、高さ3メートル。もう一つは横幅2.6メートル、高さ1メートルである。
二岩はマッシュルーム形をしている。
政府は、先ずは、1977年7月1日施行の「漁業水域に関する暫定措置法 Law on Privisional Measures Relating to the Fishing Zone」 によって、その領海基線から200海里までの漁業水域を設定した。同水域は、40万平方kmの面積を有するが、それは日本の国土 面積37万平方kmを上回るものである。その後200海里排他的経済水域(EEZ)を設定した。

3  同島の二岩が倒壊したり、浸蝕されたりして、島が高潮時に海面下に没するようなことになると、現下にあっては、 幅員200海里のEEZも大陸棚も保持できなくなる。 (1982年国連海洋法条約第121条1-3項には「島」の定義がなされている)。長期的に見て、図2、3にあるような護岩工事による両岩の 保全措置がサンゴ礁基盤に悪い影響を与えはしないか危惧される。

4  中国はその後、沖ノ鳥島は国連海洋法条約上にいう「島」ではないと主張した。日本はこれに即座に反論した。また、日本は、同島周辺の 大陸棚の一部が200海里以遠に延伸しているとして、その科学的根拠を携え、国連の「大陸棚限界委員会」に申請をしていたところ、 日本の排他的管轄権が及ぶ延伸大陸棚として認められた。日本政府は同島が「島」であることが国連によって認められていることの証左とする。

5  今後も中国は島でないことをクレームし続ける可能性がある。クレームに対抗する上でも、「島」の定義にまつわる他諸国による 適用事例研究を積み重ねることも重要となろう。中国に同調する国が出現しないとも限らないので要注意である。 他方、「島」ではないとの主張に日本は真に反論できるのか。これまで如何なる論拠・理論武装を展開してきたのか、注視して いきたい。

6  さて、政府は緊急措置として、1987年年度から岩の周囲に直径50メートルの円形防波堤・護岩堤を造作し、1989年11月に完工した。 画像1-3は、1987~1988年の新聞に掲載された沖の鳥島の岩の断面図、護岩堤の断面図、その工事想像図である。




    [参考]沖ノ鳥島の保護壁築造に関する緊急措置について

    Emergency Measures for Protecting the "Oki-no-Tori-Shima" Island agaist waves

    Outlined here is a current focal issue related with a Japan's uninhabited island of coral reef (semi-table reef in terms of topography, ellipse-shaped, about 1.7 km long in diameter and 11 km round at ebb tide(1)) lying in the west Pacific. The island is named "Oki-no-Tori-Shima" in Japanese, which is the Japan's southernmost one (location: 200 25' N. latitude, 1360 05' E. longitude)(2), about 2,000 km south of Tokyo.

    A crucial issue has been raised as a result of the recent observations made by its competent authorities. That is, only two small rocks (upheaved limestones) lie above sea level at high tide: As shown in attached Figures 1, one rock is merely 4.7 m wide and 3 m high and another is 2.6 m wide and 1 m high.(3) And, both rocks are nowadays mushroom-shaped due to the longstanding abrasions by waves.

    In accordance with the Law on Privisional Measures Relating to the Fishing Zone, enforced on July 1, 1977, Japan extends its fishery jurisdiction in its surrounding waters up to 200 miles from the baselines from which the territorial seas are measured. The 200-mile fishing zone's jurisdiction in waters surrounding the island is to cover a total area of about 400,000 km2. This maritime zone is considerably larger in area than the total land of the country's own.

    A most serious issue which the government most fears to occur is: For isntance, if the rocks fell fall down and did not lie above sea level, it would fail to claim its excludive jurisdiction related to not only the continental shelf but a 200-mile exclusive economic zone (EEZ) in waters around them.

    Despite such a foreseeable claim of the government, the 1982 UNCLOS provides that:
    - An island is a naturally formed area of land, surrounded by water, which is above water at high tide (Paragraph 1 of Article 121).

    - Rocks which cannot sustain human habitation or economic life of their own shall have no exclusive economic zone or continental shelf (Paragraph 3 of Article 121).

    The government has proceeded to an emergency measures for the purpose of territorial integrity since 1987 of Japanese fiscal year (JFY). As shown in attached Figures 2, as one of the planned protection methods,(4)
    (1) A wall of antiwave steel-made blocks is constructed as a breakwater in waters around each rock (The round-shaped wall is 50 m in diameter).
    (2) The inside of the wall is filled with special underwater concrete. Thus, the foot of each mushroom-shaped rock is consolidated firmly.

    The island's topographical situation in future must be determined principally by the following natural conditions' interaction: rises and falls of not only corals but bedrocks lying beneath them, and abrasion by waves. Thus, another important issue is raised. That is, such a protection or reinforcement measures might have a gravely adverse effect on the island in the long run, i.e. leading it to a submerged sea mount by destroying the corals.

    [Footnotes](1), (2) and (3): Japanese daily newspaper "Nihon Keizai Shimbun", September 3, 1987. (4) Ibid., November 27, 1987.




    The Oki-no-Tori-Shima's rock-protection works having been carried out with a multibillion dollar budget of the Japanese government since the spring of 1988 were eventually accomplished at the beginning of November 1989. If the island is left as it is, there remains nothing but two tiny mushroom-shaped rocks (named "Hokuro-gan" and "Touro-gan") which project their tops several meters above sea level at flood tide. Accordingly, each of the rocks was double-embanked circlewise with heavy steel-made tetrapods totaling 9,900 pieces as a prime measure for protecting them against wave erosion. The total expenditure for the works amounted to \28.5 billion equivalent to more or less US$200 million. Some marine scientific observation-purpose instruments, e.g. tide gauge, were installed on the concrete structures. The neck of each rock had been washed persistently and eroded gradually by waves. Those rock-protection works have been based on the following belief of the gavernment: any legal grounds for justifying its claim over a 200-mile zone around the island, the sea area of which amounts to about 400,000 km2 and is no less than the country's total land area (that is, about 370,000 km2), would be no longer maintained at all if both of them happened to fall down and come to submerge completely at flood tide.

    Figure: Oki-no-Tori-Shima Island and Protection Measures
    1. Section of Two Mushroom-shaped Rocks of Oki-no-Tori-Shima. Source: Japanese daily newspaper, Nihon Keizai Shimbun, September 3, 1987. [拡大画像: x28618.jpg]
    2. A Plan of Civil Works for Territorial Integrity of the Oki-no-Tori-Shima Island. Source: Japanese daily newspaper, Asahi Shimbun, November 27, 1987. [拡大画像: x28619.jpg]
    3. Asahi Shimbun, June 3, 1988. [拡大画像: x28617.jpg]


    Source of English Version: Research report "Japan Ocea Affairs - Ocen Regime, Policy and Development -, 7th edition updated and revised on Decenmer 31, 1989,
    authored by Kiyofumi Nakauchi in cooperation with the Law of the Sea Institute Japan.
    However, the English version was reviewed grammatically for "One Selected Photo 'Oceans & Ships'" on May 24, 2020.
    英語版出典: 研究報告書「日本の海洋政策 -海洋制度、政策、開発-」、1989年12月31日改編版(第7版)、中内清文著、 海洋法研究所発行。
    (注: 2020年5月24日に「一枚の特選フォト「海 & 船」」掲載時に、文法上の部分修正を加える)。

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    1. 「わが国の海の現状」:  [拡大画像: x23652.jpg][拡大画像: x23675.jpg][拡大画像: x23676.jpg][拡大画像: x23677.jpg][拡大画像: x23679.jpg][拡大画像: x23681.jpg]
    2&3. 「海の範囲の画定」、「海の境界線」、「海洋国家-日本」: [拡大画像: x23673.jpg][拡大画像: x23674.jpg]
    [画像1&2: 船の科学館訪問&撮影 2011.2.27, 2011.4.28, 2011.8.31]




    ● 沖ノ鳥島について(「島」か「岩」かの重要課題)

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    (1)沖ノ鳥島の地理的ファクトなど
      沖ノ鳥島は、我が国の領土総面積(約38万km2)を上回る、約40万km2もの排他的経済水域(EEZ) を擁するきわめて重要な島である。同島は「準卓礁」に分類されるサンゴ礁から成り、その広がりは東西4.5km、南北1.7kmである。 沖ノ鳥島の周囲の海は急に深くなっており、水深は4,000~7,000mに達する。

      そのサンゴ礁の周縁部において少し高みをもって縁取っている部分は「礁嶺」と称される(白く泡立っている島の周縁部の浅い場所) (画像1参照)。この礁嶺の内側にある水深3~5mの部分は「礁湖」と称される。さて、この礁嶺が、同礁湖内でわずかに海面上に 突き出ている2つの小岩を太平洋の激浪から自然保護して来た。 現在、これらの小岩は高潮時においても水没することはない。

      画像1の礁湖内の二つの小岩のうち、最左中央の岩が「北小島」、 そのすぐ上方にある岩(薄っすらと小さく写る)が「東小島」である。礁湖の中心部にあるのが観測施設(高床式)と観測所基盤(同施設のすぐ 右下)である。画像3では「北小島」は最左上に、「東小島」は最右上に、観測施設と観測所基盤は両島の中間下方に写る。 「北小島」の住所は、東京都小笠原村沖ノ鳥島1番地、「東小島」は同村沖ノ鳥島2番地となっている。

      画像4,5で見る通り、「北小島」、「東小島」ともに、それらの小岩が台風などの激浪によって倒壊しないように、それぞれに直径50mの円形状のコンクリート ブロックでもって、またその周囲に多量の消波ブロック(通称、テトラポッドという)が設営され人工的に強固に防護されている。 (画像2では、「北小島」は左上方の円形護岩壁内に、「東小島」は右上方のそれに存在する)。

      沖ノ鳥島は日本で唯一熱帯地方にある島。年間の気温が24~30oC、台風の発生する海域に近く、毎年多くの台風が 通過する。押し寄せる波の高さは、年平均で1.3m、台風通過時には最大は16mを越える波が発生するという。日本で最も厳しい海域の一つ といえる。


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    4の拡大画像5の拡大画像 [画像出典: 2011.01/東京「船の科学館」での「沖ノ鳥島フォーラム2011」と題する展示にて]


    (2)周辺海域での社会経済活動に関する事例など
    ・ 沖ノ鳥島の海域における漁業資源はどの程度豊富であり、漁場として有望であるか。過去における活動の事例について触れる。 同島周辺海域での漁場の造成・開拓がなされた。 東京都では、漁業操業や漁業資源の維持増大に対する支援をはじめ、漁場の調査、沖ノ鳥島で獲れる魚の加工品の製造、漁獲物の 販路拡大などに取り組んできた。また、都立大島海洋国際高校が海洋観測を実施した。サンゴの増殖技術開発の実証実験なども 行なわれた。
    ・ 周辺の海域にはコバルトやマンガン(いずれも特殊鋼の材料等に使用される)など貴重な海洋鉱物が賦存すると理解されている。
    ・ 周辺の表層海水温度が年間を通じて摂氏28度ほどあり、深層の冷海水との温度差で発電する「海洋温度差発電」(OTEC)の適地 と考えられている。
    ・ 深層水の深海からの汲み上げによる島周辺海域での漁場の造成、開拓の可能性がある。 都では2007(平成19)年度から沖ノ鳥島周辺海域で、海洋深層水の汲み上げによる新たな漁場の造成に向けた研究に取り組んだ実例がある。 この研究では、「ストンメルの永久塩泉の原理」を応用して、海洋深層水を自然の力だけで汲み上げるための装置が検討された。 実用化が実現すれば他の海域での活用などが可能となり、水産業発展への貢献が期待される。
    ・ 浮魚礁の設置による「藻場(もば)」あるいは漁場の造成事例がある。例えば、都では、沖ノ鳥島周辺海域における漁業操業支援の一環 として、大型回遊魚などの漁場を造成することを目的に2006(平成18)年度に「大水深中層浮魚礁」を設置した。


    (3)国際海洋法上、岩が「島」とみなされる要件
      同島周辺での社会経済活動が活発化することは重要なことであるが、その活動が島における「人間の居住」にどう結びつくか、また島での 「独自の経済的生活の維持」にどう結びつくのか、それが最大の関心事である。活動とそれらの要件との繋がりを確かなものにすることで、同島の「島」としての 法的地位を強固にして行かねばならない。

      浮魚礁設置や深層水の汲み上げによる漁場の造成、マンガン団塊の採鉱などは、同島の陸上における活動ではなく、同島周辺 「海域」における活動であり、「自然に形成され満潮時でも水面上にある」自然の陸地上における「居住や独自の経済的生活の維持」とは 見なしうるものではない。

      居住や経済的生活を行なうにも、同島には岩2つしかないので、(1)人工の高床式による居住や経済的生活のための基盤を「礁湖」内に築造 する他ないかもしれない。あるいは、(2)礁湖を一部埋めたてて、地盤を確保するしかないかもしれない。(現在の直径50mの 護岩堤の拡大版の築造を意味する;しかし、台風による10~15メートルの高波にも耐える人工地盤や建築構造物である必要がある)。(1)・(2)の人工 構造物の建設維持は、将来的に「島」としての法的地位にいかなる影響を及ぼすことになるのか、慎重に吟味される必要がある。

    ・ 国連海洋法条約第121条は次のように定める。
      第1項 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ満潮時においても水面上にあるものをいう。
      第3項 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。



    (4)「人間の居住又は独自の経済的生活の維持」を直接的に強固にしうる具体的かつ実現可能な活動が今後も求められるが、それらは 如何なる活動であるか。そして、「島」としての法的地位を強固にする如何なる活動計画が実行されてきたのか、 あるいは策定されているのかが、重要な視座である。

    (1)沖ノ鳥島の2岩が倒壊したりして、低潮時になおも海面上にあるとしても満潮時には海没してしまう場合、岩礁は 「低潮高地」とみなされる。その場合は、EEZや大陸棚を擁することはできない。そして、「低潮高地」の小岩をいくら埋め立て ても「島」にはならない。「低潮高地」上に人工的に形成された陸地であるとみなされ、人工陸地がいくら水に囲まれ満潮時 に海面上にあっても「島」とはみなされない。

    (2)さすれば、2つの小岩が満潮時でも海面上にあって「島」とみなされているという現下において、小岩周辺にさらに強固な コンクリート護岩堤を築造し陸地を拡張するのか。かつ、その護岩堤周囲の礁湖を一定程度埋め立て陸地を拡張するという方策も 理論上はありうる。予見される将来大きな政治的決断が求められるかもしれない。


    (5)地球温暖化と海水面上昇によって起こりうる一つのシナリオについて

      低潮時さえも海没するような「岩」は「暗礁」であり、それを埋め立てて陸地を造成しても、領海、EEZ、大陸棚も有しない。 将来地球温暖化のさらなる進行のために、西太平洋の海水面が常時1メートル上昇するなら、これらの小岩はまずは「低潮高地」 になりかねない。海水面が2メートルも上昇すれば、「北・東小島」は「暗礁」になりかねない。「低潮高地」や「暗礁」を いくら埋め立てても、国際海洋法上の「島」にはならない。そのような人工的に形成された陸地は、いくら海水に囲まれ満潮時海面 上にあるとしても「島」とはみなされない。また、そのような埋立人工島で人間の居住または独自の経済的生活を維持した としても、EEZや大陸棚は認められることはない。温暖化と海水面上昇の進行に伴って、いずれは政治的選択に迫られる 時期がやってくるかもしれない。




    [参考]
    1.「ストンメルの永久塩泉の原理」
      上層が高温・高塩分濃度、下層が低温・低塩分濃度の海中において、パイプを鉛直に設置する。パイプ内の深層水は、パイプ外の 海水温に温められ、やがて内外の水温差がなくなる。パイプ内外の水温差がなくなると塩分濃度差による密度差 が発生し、パイプ内には浮力が生じ、上昇流が起こるというもの。

    2. 浮魚礁とは
    ・ 魚類などの水産生物が、水中の物体に集まる習性があることを利用して、漁業の対象となる魚類を 特定の海域に誘導することにより、漁獲の効率化を図る目的で設置する人工の構造物。
    ・ 魚類などが水中の物体に集まる習性は古くから知られており、孟宗竹などを数本束ねて係留し魚を集める 漁法が営まれている。日本では江戸期に始まると言われる「シイラ漬け」、東南アジアや沖縄の「パヤオ」などがある。

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