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一枚の特選フォト「海 & 船」

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深海底鉱物資源の探査・開発・管理について

● 熱水鉱床の探査・開発・管理

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画像1は、東京・国立科学博物館で開催された特別展「深海」 (2013年7月7日~10月9日) で展示された、「熱水生態系模型」と 題するジオラマである。
画像2は、韓国・釜山の「国立海洋博物館」に展示される深海底熱水鉱床のジオラマである。
画像3は、日本の南方海域における資源分布図。東シナ海の沖縄トラフや小笠原諸島周辺海域のピンク色が熱水活動域、朱色が鉄 マンガン・クラスト、黄色がメタン・ハイドレートの徴候地と図示される。右下方に「拓洋第五海山」、「南鳥島」がある。  [画像出典: 国立科学博物館特別展「深海」][拡大画像: x25571.jpg][縮小画像: z19592.jpg]




[論点1]海底の熱水鉱床とは(総論)
  海底の熱水鉱床は、海底地下の深部に浸透した海水がマグマなどよって熱せられ、その熱水が深海底表面へと上昇し噴出するまでの 地殻通過過程において、金属成分を周囲の地中から融解・抽出・湧出させる。多量の有用金属成分を含有するこの熱水が深海底から噴出した後、 その周辺の海水によって冷却される過程において、鉄・銅・鉛・亜鉛・金・銀などの金属が析出(せきしゅつ)され、沈積(沈殿・堆積)したものである。マンガン団塊と並ぶ有望な深海底鉱物資源として期待されている。

  熱水鉱床は一般的に、太平洋の水深500~3000mの中央海嶺などの海底拡大軸周辺や、西太平洋のニュージーランド~フィジー、 パプアニューギニア~マリアナ諸島~日本列島にいたる島弧・海溝系などに分布している。世界では何百ヶ所もの 徴候地が発見されてきた。 日本周辺海域では、主に南西諸島の東シナ海側の沖縄トラフ、伊豆・小笠原海域などにおいて数多くの熱水鉱床徴候地が知られている。 (画像3の地図参照)


[論点2]海底熱水鉱床を人工的に生成しうるか
  鉱物資源の人工的生成の可能性に関する画期的な知見について海洋研究開発機構(JAMSTEC)より報じられてきた。深海底下の熱水 溜まりに向けて人工的に熱水噴出孔をボーリングした結果、数ヶ月・半年の時間的経過とともに黒鉱成分に富んだチムニーを生成させる ことに成功した。噴出孔の掘削を通じて非生物的資源を人工的に産出し、さらに再生可能な資源へと生まれ変わらせることができることを 実証したものといえる。

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・ 画像1は、「昨年 (2013年) 10月の航海 (NT12-27) で採取した人工熱水噴出孔に沈積したチムニー」と記される、貴重な 鉱物標本である。
・ 画像2のパネルには、「"採る海底金属資源"から"育てる海底金属資源"への転換!? 掘削孔の継続的なモニタリング 調査の結果、海底下の熱水溜まりから直接噴出させた人工熱水噴出孔においては、著しく 黒鉱鉱物成分に富んだチムニーが容易に形成され、短期間で大規模に成長することを発見。特許申請中」と記される。また、 同パネルには、掘削前、5か月後、16か月後のチムニーの形成状況を示す写真が添えられている [拡大画像: x26569.jpg]。
・ 画像3は自然に形成された熱水鉱床のサンプルである。
・ 画像4は熱水鉱床のボーリングコアである [拡大画像: x26566.jpg]。

(注)画像1~4は、海洋技術に関する日本最大の展示会・シンポジウムである「テクノオーシャン2014」(神戸/ 2014年10月2-4日)において、海洋研究開発機構 (JAMSTEC) によって展示された鉱物標本などである。 [拡大画像: x26568.jpg][拡大画像: x26565.jpg]


[論点3]熱水鉱床の探査・開発の進展(現況や動向)について
・ 日本をはじめ、ロシア・フランス・中国・韓国・インドが、「国際海底機構」(International Seabed Authority; ISA)から、 公海海域下のいわゆる「国際海底区域(Seabed)」における探査権を取得し、マンガン団塊などの深海底鉱物資源の権益確保を 追求している。

・ 因みに、韓国は、トンガやフィジーの200海里排他的経済水域(200EEZ)内における鉱物探査鉱区を取得し、掘削調査などを実施している。 また、民間事業体の「ノーティラス・ミネラルズ社 (Nautilus Minerals) 」が、パプア・ニューギニアの領海内での熱水鉱床の開発を 目指して、その採鉱システムの開発を行っている。

・ 日本における熱水鉱床の「採鉱・揚鉱パイロット試験」として、2017年(平成27年)8月~9月に、沖縄近海の水深1,600メートルの海底に 賦存する熱水鉱床を掘削し、その集積した鉱石を水中ポンプと揚鉱パイプをもって、海水とともに連続して洋上に吸い上げることに 世界で初めて成功した。
[参照文献]JOGMECウェブサイト「https://www.jogmec.go.jp/metal/technology_013.html」。


[論点4]熱水鉱床の探査・開発を巡る諸課題、将来展望について/視座を求めて
・ 日本の200海里EEZの深海底にも賦存する熱水鉱床は、いわば準国産または国産資源であるが、政府が熱水鉱床の海底鉱区を設定し、 民間事業体に対して認可し、実際の商業的生産への第一歩を踏み出すまでにはまだ遠い道のりがある。克服すべき数多くの諸課題が横たわる。

    ① 資源開発に当たっては、政府は、探査・採鉱の鉱区を設定し、入札を実施し、民間開発事業体を決定することになる。鉱区内の賦存 推定量などの経済的価値につき、応札する民間事業体へ開示される必要があろう。
    ② 商業的採鉱(掘削・揚鉱)技術を開発ししてきた民間事業体は、精錬を含めて採鉱事業の経済的採算性につき見極めることになる。
    ③ 製錬によって抽出された有用金属の市場価格の動向が、事業の採算性の評価や当該事業の継続性に大きな影響をもつ。
    ④ 海洋環境アセスメント: 採鉱による海洋生物、その生態系や海洋環境への負荷はどこ範囲まで許されるべきか。採鉱技術の開発段階に おいて、環境への負荷等を最大限に抑制するための技術的工夫、並びに負荷の許容範囲に関する規制などが求められよう。また、 採鉱に当たって適用されるべき環境保全に関する基準をはじめとする採鉱関連規制が制定され開示されることも重要テーマとなろう。 「国際海底機構ISA」による開発関連規制の有り様につき大きな関心が集まる所以である。

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深海底の熱水鉱床(ねっすいこうしょう)について

関連参考資料

1.熱水鉱床/チムニーの破片を見る

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1. 説明パネルの概略として、「熱水鉱床は、深海底の地中から湧出する金属成分を多量に含む熱水が冷やされ、その金属が析出(せきしゅつ )し堆積したものである。この中には鉄や亜鉛、鉛、金、銀、銅など重要な鉱物が多量に含まれており、マンガン団塊と並ぶ有望 な深海底の鉱物資源として期待されている」旨が記される。
[拡大画像: x21909.jpg][拡大画像: x21911.jpg][拡大画像: x21912.jpg][2010.03.画像出典: 東海大学海洋科学博物館] 

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2. 説明書きには、 「チムニーの破片:アメリカの深海潜水艇「アルビン号」が、東太平洋海嶺の熱水 鉱床より採取した金属硫化物です(提供:堀部純男博士)」と記されている。  [拡大画像: x21910.jpg][拡大画像: x21913.jpg][拡大画像: x21914.jpg][拡大画像: x21915.jpg][画像出典: 同上博物館]

3. ブラック・スモーカー (ベント vent) と呼ばれる噴出口から黒く、激しい熱水が噴き上げている。説明書きによれば 「海底の噴煙: 水深2,700メートルの海底より突き出した噴出口から噴(ふ)き出る、350Cをこえた熱水」と記されている。  [拡大画像: x22167.jpg][画像出典: 同上博物館]



2.海底の熱水鉱床周辺の生物群集・生態系について

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画像1・2は東京・国立科学博物館にて開催された特別展「深海」 (2013年7月7日~10月9日) での「熱水生態系模型」と題する展示である。 説明パネルには、「熱水噴出孔のまわりに作られる熱水噴出孔生物群集。300oCを超す熱水が噴き上がりゴエモンコシオリエビ、  シロウリガイ類、イソギンチャクなどが大量に群がる。一見過酷な環境にも、そこに適応した生物がパラダイスを作る」と記される。 [拡大画像: x25540.jpg][拡大画像: x25539.jpg]

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3. 同特別展の展示説明パネルには次のように記されている。

    シロウリガイ類 Calyptogena okutanii の棲息模式模型
    シロウリガイ類は、泥のなかにある硫化水素を必要とする。硫化水素は、海底の5㎝くらい下の層にあるので、そこに足を 伸ばし吸収している。そのため小さな個体は海底境面には出てこない。

    なお、展示物のガラス面には次のように書かれている。 左: 微生物がメタンと海水から硫化水素を作る。中: 足から硫化水素 を吸収する。右: 硫化水素を含む地層は黒くなる。 [拡大画像: x25655.jpg]  [参考]硫化水素: H2S。腐卵臭の無色・有毒の気体。

4. ユノハナガニ 学名 Gandalfus yunohana 分類:節足動物門ユノハナガニ科 深度:400-1600m。

    説明書きによれば、熱水が沸き出す岩・石のある場所に大量に生息する。眼が退化している。色素がないため白く、 ゆでても赤くならない。圧力をかけなくとも水槽で飼育できる。 [拡大画像: x25656.jpg][拡大画像: x25657.jpg: 説明書き]



太陽光が届く海洋の表層では、光合成を行なう植物プランクトンが繁殖し、それを動物プランクトンが捕食し、それを小さな 生き物が捕食し、更に大きな生き物がそれらを食べるという食物連鎖が形成されている。海洋における光合成生態系も陸上に おけるのと同じ生態系にて営まれている。ところが、1970年代後期になって、光合成生態系とは全く異なる生態系にて生活を営む 生物群集が深海底に存在していることが発見された。化学合成生態系といわれるものである。

今日、そのような生態系を形成する生物群集には3つあるとされる。即ち、(1)熱水噴出孔生物群集、(2)冷水湧出帯生物群集、 (3)鯨骨生物群集である。

画像はその3つの生物群集のうちの「熱水噴出孔生物群集」を模したものである。300度以上の高温熱水を噴出する、金属硫化物から なる煙突状の突起物の周辺の深海底に形成される生物群集である。
[参考] 突起物は「チムニー」と称される。黒い熱水を噴き上げる「ブラックスモーカー」、透明の熱水を噴き上げる「ホワイト スモーカー」がある。

(1)熱水噴出孔生物群集はプレート (岩板) の拡大軸である大西洋中央海嶺、東太平洋海膨、インド洋中央海嶺などに沿って存在する。 日本近海においては、火山フロントや背弧海盆の拡大軸に見られる。例えば、沖縄・南西諸島西側に沿った「沖縄海盆 (沖縄トラフ)」の 「伊平屋凹地 (おうち)」 や「伊是名海凹 (かいおう)」、小笠原諸島海域の「水曜海山」など。画像の模型に見られるように、熱水噴出孔周辺 には二枚貝、巻き貝、チューブワーム、イソギンチャクなどが群がり生活し、それらの生物群集は熱水に含まれるメタンに依存している。

(2)冷水湧出帯生物群集は、プレートの「沈み込み帯」で見られる深海生物群集である。沈み込み帯の堆積物中の有機物が分解してメタン や硫化水素が形成され、それをバクテリアらが使うことを起点とする化学合成生物群集である。 日本近郊では、1984年、相模湾初島沖で見つかった。その他、南海トラフの「天竜海底谷」の出口、 日本海溝の「第一鹿島海山」付近、三陸・宮古沖、日本海の「奥尻海嶺」などで発見されてきた。 バクテリアマット、炭酸塩チムニー、シロウリガイの存在がその生物群集の最も代表的な特徴とされる。

(3)クジラ骨生物群集は、深海底に沈んだ鯨の死体を栄養源にして生息すると考えられる生物群集である。現在まで発見された事例は 極めて少ない。 [参考文献]「imidas 2007」、909~910ページなど。



3. 地球生命を誕生させた深海底の熱水噴出孔

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画像は、東京・国立科学博物館で開催された特別展「深海」 (2013年7月7日~10月9日) において陳列された深海の熱水噴出孔 (チムニー)の岩石片の実物標本である。標本のキャプションによれば、「チムニー (Chimney): 沖縄トラフ水深1500mの熱水噴出域 から採取。矢印で示した付近が生命を誕生させたような場所だと考えられる」と記される。

さらに、「生命の起源にせまる」と題する説明書きが添えられている。地球上の生命は約40億年前に誕生したと考えられているが、果たして どこで誕生したのであろうか。生命の存続に必要なエネルギーが十分かつ安定して存在すること、生命活動に必要なさまざまな元素の 存在が、生命誕生の重要な条件であるとする。 「その条件を満たすのは、深海の熱水噴出孔しか考えられず、この環境こそ地球生命誕生の場である可能性が最も高い」、と論じられている。

画像では、生命を誕生させたであろうと推測される、チムニー (煙突状の噴出孔) の場所が矢印にて指し示されている。 


[画像: 東京・国立科学博物館「特別展」][拡大画像: x25563.jpg][拡大画像: x25573.jpg][拡大画像: x25564-2.jpg][拡大画像: x25572.jpg: 説明書き「生命の起源にせまる」]



4.韓国「国立海洋博物館」における深海底熱水鉱床のジオラマ展示

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[拡大画像: x27379.jpg][拡大画像: x27380.jpg][拡大画像: x27381.jpg: 説明書き][画像撮影: 2016.9 国立海洋博物館 /釜山]

画像は、韓国・釜山の「国立海洋博物館」に展示される熱水鉱床のジオラマである。鉱床に蝟集するチューブワーム、 深海エビなどの生物の模型縮尺は、チムニー (ホワイト・スモーカー) に比してかなり拡大されているが、 これは一般見学者にとって、鉱床に蝟集する生物やその状況をイメージしやすく、また視覚的によく理解できるようにとの配慮からであろう。 見る人々を未知の深海フロンティアへと誘いワクワクさせる展示となっている。

説明パネルには次のように英語表記される。
そのポイント: 熱水鉱床は潜水調査船「アルビン号」による1977年の潜水航海において、ガラパゴス諸島 近くの水深2,640mで海底火山活動を調査していた地質学者によって初めて発見された。噴出孔の周辺にはチューブワーム、二枚貝、深海 性イガイ、目のないカニ類など多くの生物が棲息する。これは熱水に含まれる硫化水素を食し有機物を生成することによって生態系 を維持するバクテリアが生息しているからである。科学者たちは熱水鉱床の環境は地球上に最初に生物が生まれた時のそれと 酷似していると推察している。

    Underwater hydrothermal deposits
    Underwater hydrothermal deposits are metal lumps that are formed by underwater volcanic activities, which contain gold, silver, copper, lead, zinc, and cadmium. They have the form of a conical stalagmite or a chimney. They have high resources value. They were first discovered at 2,640m underwater by geologists who were studying underwater volcanic activities near Galápagos Islands, while sailing through in the Alvin, a submersible, in 1977.

    Many living organisms live a lot more around hydrothermal vents than around any other places. They include tube worms, bivalves, deep-sea mussels, bent-back shrimps, blind crabs, dahlia-shaped jellyfish, and various other fish species that swim around them. The reason for this is that there are sulfur bacteria that maintain the ecosystem by creating organic matter from the hydrogen sulfide contained in the thermal water. Scientists speculate that the environment of underwater hydrothermal deposits would be very similar to that of when living organisms were first created on earth. So, they believe that underwater hydrothermal deposits will reveal important information about the entire pattern of the world's marine organisms and the origin of all the living organisms on earth.

[参考] stalagmite: n.石筍(せきじゅん)

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