⌈ニカラグア大運河、2014年7月、HKND & ERM⌋
Gran Canal de Nicaragua, Julio de 2014, HKND Group/ERM
(2014年7月7日のHKNDグループのワークショップにて公表された資料)

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HKNDグループは、2014年7月7日、マナグアにてニカラグア運河総合開発プロジェクトに関するワークショップを行なった。 同グループは、2013年にオルテガ大統領政権と標記運河建設に関するコンセッション契約を締結したが、今回は、契約締結以来 これまで取り組んできた調査の結果を公表したものである。 以下は報告書の摘要である。報告書は同グループを構成するコンサルタントのEnvironmental Resources Management (ERM) の ネームで作成されたものである。 






* ワークショップと報告書の公表が目的とするところは、運河建設プロジェクトの現況に関する情報を共有し、関係者に 相談を諮るプロセスを開始し、コミュニケーション・チャンネルを創設することである。又、プロジェクトに関しての進言を 得ること、国際的なグッド・プラクティスを通してプロジェクトの履行に関する対話を図ることである。

* ニカラグア運河はより大きな船に対してサービスや便宜を提供し、アジアと米国東岸や欧州の近代諸港とをより短い ルートで結びつける。
・ 将来的には、今後5年から10年の間に、WTO発表の世界の商業的取扱量は、最近の成長率の3倊以上をもってその発展が 見込まれると期待されている(WTO)。その発展は、今後10年間において、船復(la capacidad naviera)についてのより 大きな需要を作り出し、又パナマ運河における混雑をもたらすことになろう。

* 船舶の大型化の拡大によって、現存運河の通航可能容量(la capacidad de los canales existentes)はすでに限界に達してきた。 船腹がより大きくて効率の良いコンテナ船はパナマ運河を通航できなくなって来ている。

* 第二の中米運河は、より低コストの新しい海上輸送ルートとして、世界的規模の需要を満たすことに貢献しよう。




EIASのためのプロジェクト概要
* 両洋間運河について: 
    運河の総延長は、約278km。
    計画船舶は、25,000個積載コンテナ船、40万載貨重量トン(dwt)の石油タンカーおよびばら積み船。
    計画水深は、27.6m~30m。
    計画幅員は、230m。幅員520mの通過待避に供される側湾(bahías laterales de paso)が付帯する。
    閘門: カリブ海および太平洋側に建設される。
    開削されるおおよその最大標高差(máxima elevación aproximada del corte): ~海抜200メートル  (海抜: msnm/metro sobre nivel marítimo)である。

* 港湾: 太平洋およびカリブ海側に建設される。

* その他の施設: 野営(キャンプ)施設、コンクリート製造プラント、エネルギーの補給施設、水の供給施設および排水施設




ルート諸案: 一般事項
* 制約的事項
  ニカラグアの南部地域を通過すること (北部地域では両洋間の地峡距離が大幅に長くなる)、北部地域では標高がより高いこと  (山岳地帯である)、ニカラグア湖を横切るべきであること。

* 繊細な課題(センシティブなテーマ)
  高い生物多様性をもつエリア、先住民族が生活する領域(テリトリー)、国際的に傑出した保護区、ルートに関係するエリア での脆弱な経済、そのエリアに向けての外部からの移住者の流入。




従前からの候補ルート: ニカラグア地峡の東部地域(ニカラグア湖のカリブ海寄り)におけるルート。


● 従前からの候補ルート図: ルート①~⑥  [拡大画像: x26141.jpg]
    ・ ルート1&2: ブルーフィールズ湾(Bahía de Bluefields)とセロ・シルバ保護区(la Reserva Cerro Silva)。
      [注]セロ・シルバ保護区: エスコンディード川(Río Escondido)辺りからプンタ・ゴルダ川(Río Punta Gorda)辺りにかけての、 東部地域の東半分ほどのエリアをもつ。
    ・ ルート3: ブルーフィールズ湾とセロ・シルバの中央地域。
    ・ ルート4: プンタ・ゴルダ(Punta Gorda)とトゥーレ川(Río Tule)。
    ・ ルート5: プンタ・ゴルダ、サン・ファン川(río San Juan)、サン・カルロス(San Carlos)。
    ・ ルート6: インディオ・マイス(Indio Maíz)、サン・ファン川、サン・カルロス。





国際的な保護区


● 従前からの6つの候補ルートと自然保護区などとの位置関係を示す。 [拡大画像: x26142.jpg]

 [拡大画像: x26142.jpg]
a b c
a[拡大画像: x26143.jpg] b[拡大画像: x26144.jpg][拡大画像: x26145.jpg] c[拡大画像: x26146.jpg]


ルート1&2の除外について(その理由)
    ・ ナグーナ・ペルラス (Laguna Perlas) とブルーフィールズ湾には、絶滅が危惧される海ガメ4種の棲息地が存在する。
      [注]ナグーナ・ペルラスはブルーフィールズ湾の少し北方に隣接する潟。
    ・ ブルーフィールズ湾はラムサール(RAMSAR)の登録湿地(Humedal)になっている。
    ・ ブルーフィールズ湾、および同湾に注ぎ込む河川の河口域における水の力学的特性(la hidrodinámica)への潜在的インパクト。
    ・ エコシステム関連サービス産業に対する潜在的なインパクト。
    ・ 近隣の珊瑚礁(arrecifes de coral)。
    ・ 先住民族の重要な存在。
    ・ 多い人口。
    ・ 工学面とコスト面への配慮。





ルート5&6の除外について(その理由)
* ニカラグア行政府が下した決定によって(decisión ejectiva del Gobierno de Nicaragua)、サン・フアン川が絡むルートは 除外された。[注・参照]
    [注] ニカラグア外務省は、2014年5月13日にコスタリカ外務省に対して一通の書簡を送った。ニカラグア政府は、その書簡の中で、 予備調査に基づき国境河川(サン・フアン川のこと)に沿って運河を建設するという諸計画を放棄するとの決定を下した旨の 説明を行なった。

* 環境上の理由: 

    ・ インディオ・マイス生物保護区(Reserva Biológica Indio Maíz)へのインパクト。
    ・ エル・コラル(El Coral)における海ガメの営巣(anidamiento)上の重要場所。
    ・ サン・フアン川のエコシステムへの考慮。





ルート3&4との比較について
* 生物多様性: 保護区、ラムサール条約の登録湿地、陸上棲息域の性質、河口域(estuarinos)、サンゴと海ガメの絶滅危惧種 の存在。
・ 社会・経済的なインパクト: 人口、先住民族、社会的な混乱(alteraciones)、文化的な感受性(繊細性、センシビリティ)、その他の資源。


● ルート3&4との比較  [拡大画像: x26147.jpg]


ルート3の除外について(その理由)
* IFC PS6/エコシステム・サービス産業関連: 運河の影響を受ける村落(コミュニティ)はエコシステム関連のサービス提供産業に 高い優先順位を与えていることから、ルート3は、そのサービス提供産業に強いインパクトをもたらすことになる。 ブルーフィールズのコミュニティは、ブルーフィールド湾によってもたらされる エコシステム関連のサービス提供産業に大きく依存している。

* IFC PS6/危機的な状況下にある(クリティカルな)棲息域: ルート3は、ブルーフィールズ湾にあるラムサール条約に関係する区域にインパクトもたらし、 又クリティカルな棲息域であることを宣言する動議付けにもなった生物多様性の価値に対して重大な負の影響をもたらすことになる。又、生物多様性の 価値の源泉となり、かつ維持する役割を果たしている生態学的プロセスに対して負の影響をもたらすことになる。

* IFC PS7/先住民族: ルート3は、ブルーフィールズ湾、即ちラマ・キー(Rama Cay)を含むラマ族の伝統的な領域(テリトリー)であり、さらに ラマ族の伝統の中心地であり、且つ人口と文化の中枢部であるところに影響をもたらすことになる。
[注]ラマ・キー: ブルーフィールズ湾の南部水域に浮かぶ小さな島で、ラマ族の重要な居住地となっている。




修正されたルート4: 選定されたルート


● 修正されたルート4  [拡大画像: x26148.jpg]


選定されたルート: 全体の展望

● 選定されたルート: 全体の展望/GoogleMap  [拡大画像: x26150.jpg]

    ・ 計画船舶: 25,000TEU積載コンテナ船、又は40万載貨重量トン(dwt)の船。
    ・ 計画吃水: 27.5-30m。
    ・ 計画幅員: 230~520m (通過待避のための側湾を含む)。
    ・ 2つの閘門: カリブ海・太平洋側に各1基ずつ。





選定ルートの実現可能性(viabilidad)への挑戦
・ 生物多様性
    保護区: 
     ・ 自然保護区、ラムサール条約の登録湿地、ユネスコの生物圏(Biósfera)保護区。
     ・ 種―国際自然保護連合(UICN)およびニカラグアのレッドリスト(lista roja)、その他の種。
     ・ メソアメリカの生物回廊(Corredor Biológico Meso-America)。
    水資源: ニカラグア湖。
    先住民族の領域。
    非自由意思による再入椊(強制的な再定住化・再移住)。





生物多様性―保護区
    ・ 運河がいくつかの保護区を横切ることは上可避的である。
    ・ 多くの保護区は生存のための農業 (la agricultura de subsistencia) によって脅かされ、又は影響を受けている。
    ・ 対策のための戦略としては、
        緩和(軽減)の階層(jerarquía de mitigación)を適用する。
        避けがたいインパクトについていかに緩和し相殺(オフセット)するか、その実現可能性についてニカラグア政府・諸機関 および重要なNGO(ラムサール、国際自然保護連合、ユネスコ、FFI、バードライフ、WCS)からの協力をえる。
    ・ 救済の可能性が残される区域において森林伐採・乱伐を防止する。そのためにも、未だ残存している資源を増殖したり、又制度的な対応策 (キャパシティ)の強化を図る。





生物多様性―絶滅の脅威にさらされている種
* 国際自然保護連合(EN/CR)のリスト中の12種以上が調査対象区域内に潜在的に棲息している。
    ・ 海洋域: 海ガメ3種(A/P)。
    ・ 淡水域: ニカラグア湖では魚類につき高い生物多様性が見られる。
    ・ 陸域: ミドリコンゴウインコ(lapa verde)、ダント(danto)、ニカラグア・クモザル(mono araña nicaragüense)。
    ・ カエル(rana)の新種。
    [注] lapa: f.[貝]カサガイ(笠貝); [中米][鳥]コンゴウインコ.

* 戦略として

    ・ 詳細な生態学な調査。
    ・ 自然のクリティカルな棲息域に関する確認(同定)作業。
    ・ 緩和の階層(jerarquía de mitigación)を実施すること。
    ・ 自然保護機関の協力をえながら、避けがたいインパクトを緩和し相殺(オフセット)するための計画を策定すること。





ニカラグア湖および水資源
* ニカラグア湖では水が備蓄される (貯水する溜め池である)。
* プンタ・ゴルダ川は堆積物に関して強い負荷をもたらす。
* 塩分の浸入に関して潜在的リスクがある。
* 追加的な水資源の必要性に関して評価を行う。
* 戦略について:
  ・ 運河システムのオペレーションにおいて、ニカラグア湖の水の消費量を最小限にする。
  ・ 塩分の浸入および水の消失をコントロールできるような閘門設計を行なう。
  ・ 水文地質学、水文学、および地球物理学的な調査研究を行なう。
  ・ 流域管理についての向上を図る。特にプンタ・ゴルダ川の流域管理を向上させる。





先住民族について
* 運河はカリブ海側のプエブロ・ラマ(Pueblo Rama ラマ族)の伝統的な領域(テリトリー)の一部を横切り、またリーバスにある ナウア(Nahua)・コミュニティの領域の近くを通過する。

* 戦略について:
  ・ プエブロ・ラマ(ラマ族)との直接的な相談および参加を図る(意見交換を行なう)。
  ・ 太平洋側に存するナウアの領域に被害(搊害)をもたらすことを避ける。
  ・ 地域のコミュニティからの「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意《(consentimiento previo, libre e informado; FPIC)を得る ために取り組む。

    [参考]
    * FPICについて、英語版ウィキペディアの定義によると、⌈Free, prior and informed consent (FPIC) refers to the rights of local communities, particularly indigenous peoples, to participate in decision making about issues impacting them. Examples include natural resource management, economic development, uses of traditional knowledge and genetic resources, health care and education.⌋ と記されている。
    * 又、 「Forest Peoples Programme《の定義によれば、⌈‘Free prior and informed consent’ (FPIC), is the principle that a community has the right to give or withhold its consent to proposed projects that may affect the lands they customarily own, occupy or otherwise use. FPIC, for years advanced by FPP, is now a key principle in international law and jurisprudence related to indigenous peoples.⌋ と記される。
    http://www.forestpeoples.org/guiding-principles/free-prior-and-informed-consent-fpic
    * ⌈世界の森林と持続可能な森林管理⌋(REDDのためのFPICガイド ライン作成プロジェクト)。
    www.gef.or.jp/activity/forest/world/redd_fpic.html
    森林減少及び土地利用の変化に対応するための仕組みとして最近注目されているREDDを紹介するサイト。
    提供: 財団法人⌈地球・人間環境フォーラム⌋ (Global Environmental Forum)





非自由意思による再定住 (強制的な再移住 reasentamiento involuntario) について
* 運河ルートは主に農村地方を通過する(運河が通る西部地域の区間では農村地方を通過する割合は少ない)。
* 非自由意思による再定住(強制的な再移住)の割合はまだ把握されていない。
* 戦略について:
  ・ 調査研究の対象エリアにおいて詳細に社会・経済的な調査を行なう。
  ・ 運河プロジェクトの直接的な影響を受けるエリアにおいてセンサスを準備する。
  ・ 再定住(再移住、再入椊)という選択肢によって影響を受ける家族らに対し直接的な相談を諮る(意見交換を行なう)。





熱帯森林の被覆傾向について


● 熱帯森林の被覆傾向: 伐採パターンは北西から南東方向へ進んでいる。  [拡大画像: x26149.jpg]

    ・ 1983年~2014年の間における森林の消失。
    ・ 調査対象エリア: 23,773平方km。
    ・ 年間145平方㎞の消失。
    ・ 40%以上の消失。
    ・ 森林伐採のパターンとして、北西から南東方向へ進んでいる。
    ・ 森林伐採の割合は増加傾向にあると見られる。
    ・ 保護区周縁の土地においては、伐採が漸次増加しつつある。





ネット(正味)のプラス(正)のインパクトの概念について
* 森林伐採の傾向に関し、次の方策によって元の状態に戻す:
    ・ インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダの自然保護区へ伐採がさらに広がり侵入して行かないように防止する。
    ・ インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダの自然保護区において悪化する傾向にあるエリアのリハビリテーション(再生化)を図り、流域管理を 改善する。
    ・ 生活上のより良い条件や代替の条件を編み出す。
    ・ サン・ミゲリートのラムサール条約の登録サイト(Sistema de Humedales San Miguelito)を改善するために、埋め合わせの措置を施したり、 財政的措置を講じる。
    [注]サン・ミゲリート登録湿地サイトはニカラグア湖に注ぐトゥーレ川の河口域とサン・フアン川のそれとの間に位置する。





インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダ保護区を保全すること
* 戦略について:
    ・ インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダ保護区へのさらなる椊民 (入椊・移住・定住) を防ぐために、運河を防壁(防柵)として活用すること。
    ・ インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダ保護区を再生復活させるために、関連する資源やキャパシティを整える。又、さらなる悪化を 防止する観点から、天然資源を保全するためのパトロールを強化する。
    ・ ラマの土着でない人々については、農牧生産のための新しいエリア内において設置される保護区の内側ではなくて外側での再入椊 (再定住・ 再移住) を認めるものとする。





サン・ミゲリートのラムサール条約登録サイトについて


● サン・ミゲリートのラムサール条約登録サイト
[拡大画像: x26151.jpg]

* 提案されているルート (赤線表示) はラムサール条約の登録湿地を通過する。
* 当該エリアは、農業・牧畜業や侵入種(侵略的外来種)によってすでに影響を受けてきた。
* 戦略について:
      ・ サン・ミゲリートの複合的な湿地を埋め合わせ元に戻すための措置につき計画を策定するために、ラムサール条約およびニカラグア政府 と相談する。





再定住(再移住・再入椊): 土地から⌈より良い⌋土地へ
    ・ 現在居住する村落に再入椊(再定住・再移住)させる。
    ・ より良い土地、即ちより生産的な土地をもって、生活上のより良い諸条件を提供する。
    ・ 森林の破壊を招いている現実の生存農業に対する代替となりうるような雇用を提供する。
    ・ 運河開削後の浚渫土をもって農業利用に適するような緩やかな起伏をもつ土地を造成する。
    ・ 道路を良くすることによって市場への輸送条件を改善する。
    ・ 生存農業から近代的で生産性があり持続可能な農業へ移行するよう促進する。





実際の活動―生物多様性および水質
    ・ 生物多様性が見られる領域での取り組み―雨期(10月~12月/2013年)。
    ・ 生物多様性が見られる領域での取り組み―乾期(3月~5月/2013年)。
    ・ 海洋環境、淡水、および陸域における生物多様性、水および堆積物に関する完全なサンプリング。
    ・ 主要な集団(グループ)のサンプリング―椊物相、鳥類、大小の哺乳類、爬虫類の両生動物、陸棲の甲殻類、魚類、水生無脊椎動物、 椊物・動物プランクトン、昆虫。
    ・ フィールドでの研究活動(フィールドワーク)では、WCSやFUNDAR(保全や環境保護活動を行うニカラグアの主要なNGO団体)との協力を図る。
    ・ 良く知られている多数の地方在住専門家を含んで、ERMの30人の専門家やニカラグアの80人以上の生物学者や専門家が参加した。





進行中および将来の活動
    ・ 文化的資源に関するベースライン。
    ・ 相談会(意見交換会・協議会)およびR/D(協議に当たっての諸条件 términos of referencia, (英語)terms of reference)。
    ・ 影響を受けるエリアの社会・経済的な特性。
    ・ 再定住(再入椊、再移住)のためのセンサス。
    ・ 運河プロジェクトのルートおよびその潜在的なインパクトに関する精査。
      カリブ海側の入り口、アトランタ閘門~トゥーレ、ニカラグア湖、太平洋側の入り口。





● 関連資料編
ルートの精査: カリブ海側の入り口

1
● カリブ海側の入り口  [拡大画像: x26152.jpg]

* 提案されているルート(赤線表示)は、セロ・シルバ自然保護区(Reserva Natural de Cerro Silva)、メソアメリカの生物回廊の一部、運河によって影響を 受けることになる生物学的により重要なエリアを横切ることになろう。

* 環境および社会的な主要インパクト

    ・ メソアメリカの生物回廊: より良い状態にあるカリブ海寄りの15~20㎞、回廊(ジャガーなどの棲息)、椰子の森林(ラフィア Rafia)、 プンタ・ゴルダの北方にある⌈ヨリリャル(Yolillal)⌋(カエルの新種)。
    ・ プンタ・ゴルダ低地(Bajo Punta Gorda): 水生属種に関する高い生物多様性、およびインディオ・マイス保護区における影響の緩和・軽減 (amortiguamiento)。
    ・ 先住民族のテリトリーの十字路(交差点): 伝統的な先住民族の土地がおおよそ15㎞わたって交差する― プンタ・アギラ(Punta Aguila)と モンキー・ポイント(Monkey Point)との間にあって、先住民族の人々が直接あるいは間接的に影響を受けることになる2、3の小さなコミュニティが存在する。
    ・ ブービー・キー(Booby Cay)における潜在的影響: バードライフ・インターナショナル(Birdlife International)によれば、鳥類にとっての 重要なエリアが存在し、海鳥類、カメ類、魚類、およびサンゴにとっての重要な棲息域となっている。
    ・ 海ガメに関する潜在的な影響: わずかな営巣地(anidamiento)ではあるが、飼料(forraje/飼い葉、まぐさ)となるものの重要な棲息地であり、 4つの絶滅危惧種の回遊ルートになっている。浚渫作業(dragado)、港湾建設、および船舶の通航のような諸活動は、生息域に影響をもたらし、 又海ガメとの衝突の可能性を増大させる。
    ・ グヤマ(Guyama)のイルカに対する潜在的な影響: モンキー・ポイント近傍で発見された一つの珍種である。ニカラグアでは初めてその遠方視認 がなされた。同様な影響が海ガメについてもあてはまる。

* インパクトの緩和(軽減)戦略

    ・ メソアメリカの生物回廊: 運河の両側10kmにおける最小限の開発; 物を処分しないこと、又ブルーフィールズ湾の南東にある湿地と運河とを 連結させないこと。
    ・ パルマ・フォーレスト(椰子の森林)または⌈ヨリリャル⌋: ⌈ガラスのカエル (rana de vidrio)⌋という新種などのために必要とされる 水文および生息域を維持する。
    ・ インディオ・マイス保護区: 同保護区から出来る限り遠ざかること、さらなる入椊(colonización)を避けること、プンタ・ゴルダ川の南側に 居住する人々には再びその地に留まってもらうこと(relocalizar)、および同保護区についての効果的な公園管理サービスを強化すること。
    ・ インディオ・マイスおよびプンタ・ゴルダにおいて質的低下が認められるエリアついて、その再生を図ること。又、森林管理およびアグロフォレストリー (agroforestería)を促進すること。
    ・ プンタ・ゴルダ川: 閘門よりも下流の水域において、運河と同河川との統合化(一体化)を図ること。
    ・ ブービー・キーおよび礁105(Banco 105): 無線通信を3kmの範囲まで緩和するエリア。
    ・ 浸水エリア: ダム(堰、embalses)の規模を最小限にする。
    ・ 海ガメ保護のための努力を向上させるためにNGOと協力する。
    ・ 影響を受ける先住民族についてコーディネートし、生存のための対策を改善し、彼らの伝統を尊重する。
    ・ 哺乳動物や海ガメ、および礁105のような重要なエリアに対する影響を最小限にとどめるために、船舶の通航に関する計画を立てる。





ルートの決定: アトランタ ~ トゥーレ
* 環境および社会的な主要インパクト
    ・ 高さ30mの閘門はおおよそ395平方㎞のエリアを浸水させる; 棲息域の消失や、これらゾーンの陸域動物相の属種移動(入れ替え)を引き起こす ことになる。
    ・ 魚類の大変高い生物多様性をもつプンタ・ゴルダ川は、棲息域の消失と水文学的な変化によって影響を受けるであろう。
    ・ アトランタ(Atlanta)の北東に存在する、潜在的に新しいカエルの一属種の棲息域は、浸水することになろう。
    ・ 運河が通過する地帯は、クモザル(mono araña Ateles geoffroyi)の個体数を養っている(UICN-CR)エル・ロブレ (El Roble) 近傍の森林 のいくつかのエリアに対して、インパクトをもたらす可能性がある。
    ・ 特に運河建設期間中における人間の存在の増大、および狩猟や漁労の増大。
    ・ アトランタやポーロ・デ・デサロージョ(Polo de Desarrollo)を含むさまざまなコミュニティにおける土地の取得や再入椊(再定住)。
    ・ 主に農牧業によって質的な低下が認められ、又起伏が多い陸上のエリアについては、浚渫土の管理の在り方が影響をもたらすことになろう。
    再定住を余儀なくされるコミュニティを支援するという観点から、持続可能な農業に向けた土地利用の整備を図ることも可能となろう。















● アトランタ~トゥーレ [拡大画像: x26154.jpg] [拡大画像: x26153.jpg]


アトランタ閘門 ~ トゥーレ
* インパクトの軽減戦略
    ・ 徐々にプンタ・ゴルダの自然保護区を再生する。
    ・ セロ・シルバ自然保護区内において、流域と椊林の管理を統合的に(一体的に)行なう。
    ・ 運河がもつ美観や観光資源としての潜在力を増大させるために、又運河が果たす分割化/防壁化の効果を最小限に抑えるために、 土着種(土地固有種 especies nativas)をもって運河の廻廊の再生を図る。
    ・ 科学的に見て潜在的な新種であるカエル、あるいは運河の回廊の保護区内において発見されるその他の希少種、あるいは絶滅危惧種に対する インパクトを軽減する。
    ・ クモザルの棲息域に対するインパクトを最小限にする。それが上可能な場合には、適切な埋め合わせの措置(代償措置、償いの措置)を策定し実施する。
    ・ 浸水によって溺れる危険があると認められる動物相(例えば、ナマケモノ/perezosos、サルなど)を移動させるために、動物移転(reubicacion)に経験の あるNGOに加わってもらう。
    ・ 移転を余儀なくされた家族を再定住させ、彼らの生存の術(すべ)を保証する。





ルートの決定: ニカラグア湖


● ニカラグア湖 [拡大画像: x26155.jpg]

* 環境および社会的な主要インパクト
    ・ ニカラグア湖の水位についての起こりうる結果、およびサン・フアン川からの流出(descarga)。
    ・ ニカラグア湖中での運河の浚渫は、湖水の混濁(turbidez)レベルを上昇させ、魚類の生産性や湖底の棲息域(ベントス、底生動物)に インパクトをもたらすことになる。
    ・ ニカラグア湖内のさまざまな場所で浚渫された泥土の置き方や置き場所によって、湖水の循環に干渉を引き起こし、その混濁を増大させることになる。
    ・ バラスト水(agua de lastre)の流出リスク、石油やその他の滲出(しんしゅつ)、侵入種(especies invasoras)の入り込み。
    ・ Amphilophus citrinellusという族種の集団に関する潜在的影響。
    ・ 運河建設期間中の諸活動の結果としての、ソレンティナメ諸島(el Archipiélago de Solentiname)、オメテペ島、ロス・グアトゥソス 野生の命のシェルター(Refugio de Vida silvestre Los Guatuzos)への間接的なインパクトの潜在性や滲出のリスク。

* インパクトの軽減戦略

    ・ ニカラグア湖へのインパクトを避けるため、より良いプラクティスに関して最大限の努力を払う。
    ・ 湖水の消費量を最小限にする (ニカラグア湖水レベル(水位)の変位、およびサン・ファン川の流出による変動についてごくわずかな影響にとどめる)。
    ・ 浚渫では細微な堆積物を取り除くために水圧利用技術が用いられるが、その浚渫による影響を最小限にする(もって混濁を軽減する)、および 又、十分な工学上の設計をもってそれらの堆積物を境界の隣接地またはその区域内にて処分する。
    ・ バラスト水の排出を禁止したり、石油の滲出を防止したりする、船舶の運航期間中における管理計画。いずれの滲出についても管理 するに十分な機器と方策を執る。
    ・ ニカラグア湖水の水質を改善するためのグローバルな (地球的規模の) 管理計画を策定するために、ニカラグア政府および関連機関と連携を図る。
    ・ ニカラグア湖を横断するルートを運河ルート全体に組み込んだ上で、浚渫泥土の受け入れ者および繊細性をもつ居住区に対する負担の軽減を最大限に 図るべく、浚渫泥土を貯留するエリアにつき位置選定を行なう。





ルートの決定: 太平洋側の入り口


● 太平洋側の入り口 [拡大画像: x26156.jpg]

    * 環境および社会的な主要インパクト

      ・ ラ・アンシアーナ(La Anciana)(北へ3kmほど)という提案されている海洋保護区; 珊瑚エリア、魚類の棲息域、およびフレガタ(Fregata)という ニカラグアではより大きいコロニア(colonia 開拓地、居留地、入椊地)への潜在的なインパクト。
      ・ ブリット(Brito)の海浜および河口域への重大なインパクト; カメ、鯨、イルカの3種のための営巣と餌料。それらの全てはブリット湾に集まる;  ブリットの水生鳥類のコロニア(繁殖地)を含む動椊物の高い生物多様性を養い保全しているマングローブおよび近隣の乾燥林(クモザルの棲息域の 歴史的な登録に向けて準備中である)。ラ・アンシアーナ、ブリットの海浜、マングローブや乾燥林は、一つのまとまりとして、 ニカラグアの太平洋岸におけるこの種のより良い棲息域を提供する、生物学的に重要なゾーンであることを示している。
      ・ 運河の建設およびオペレーションに際しての人間の存在の増大、並びに漁労、狩猟、およびカメの捕獲(卵および成体)の拡大に伴う 人間の存在の増大について。
      ・ 流域における水文学的変動(乱れ、変調)、および水を自由に利用・処分できること(disponibilidad)の低下について。
      ・ 海洋哺乳動物や海ガメと船舶との衝突。

    * 環境および社会的な主要インパクト

      ・ 運河開削のためのエリア、および浚渫泥土を貯留するためのエリアについて、価値の高い土地や農業生産用地を取得することが必要となる。
      ・ リオ・グランデを含むさまざまなコミュニティからの再定住(再入椊)。
      ・ このエリアにおいて再定住を余儀なくされることになる人々の総数は未だ割り出されていない。
      ・ 遠洋や沿岸水域におけるバラスト水の排出、および油あるいはその他の物質の滲出についての潜在的可能性。
      ・ 先住民コミュニティへの潜在的なインパクト― ナウア族(Pueblo Nahua)。

    * インパクトの軽減戦略

      ・ 潜在的なこれらのインパクトに関し、あるものについては回避するか、若しくは最小限にするために、NKHDは、現在もなお設計上2つの代替案 について評価を行なっている。
      ・ 第一の代替案としては、ラ・アンシアーナ、および乾燥林・マングローブ・ブリット海浜のコンプレックス(総合施設区域)へのインパクト を最小限にするという目的で、港湾そのものを内陸部の方へ移動させるというものである。この代替案によって明瞭に生物多様性へのインパクトを 軽減することができるとしても、ブリットの山間部にある農業コミュニティへのインパクトは本質的には同じままに留まろう。
      ・ 第二の代替案としては、運河ルートを南の方へ(サン・ロレンソ)ずらすことであろう。このオプションはブリットの重要な生物学的エリアを完全に 避けようというものである。ラ・アンシアーナに対する相当な緩和をもたらし、ブリットの山間部にある農業コミュニティへのインパクトを軽減し、かつ リオ・グランデのコミュニティの再定住化を回避し、土地取得のコストを軽減することにつながろう。
      ・ しかしながら、サン・ロレンソに関する代替案は、評価中ではあるが、高いコストがかかる可能性がある。又、現在ある観光施設に影響を もたらすことにつながろう。

    * 追加の軽減策について

      ・ 浚渫、港湾開発、船舶標識の観点から、ラ・アンシアーナにおいて5kmの緩衝地帯を設ける。
      ・ 海ガメを保護する努力を向上させるために、NGOsの活動を支援する(個体の捕獲や卵の採集)。
      ・ 太平洋沿岸のこの辺りにおける乾燥林棲息域内の残りのエリアについての保全や改善を支援する。
      ・ 運河建設による地域の分割化/防壁化の効果を最小限に抑え、運河の美観や観光資源としての潜在性を増大させるために、運河廻廊において 土地固有種をもって椊林再生する。
      ・ 海洋哺乳動物や海ガメに対するインパクトを最小限にする船舶通航計画を策定し実行する。

    * 内陸部の港湾

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    ● 内陸部の港湾  [拡大画像: x26157.jpg]


    要約: 結論(仮)

      ・ ニカラグア大運河は、経済活動の活発化および雇用の観点から、ニカラグアにとって意義のある経済的恩恵をもたらすであろう。
      ・ ニカラグアにとってのこれらの恩恵は、生物多様性、ニカラグア湖、および影響を受けることになるコミュニティに対する最小限のインパクト をもってもたらされるはずである。
      ・ プンタ・ゴルダを通過するというルート案は、数多くの潜在的なインパクトを回避し、且つ最小限に抑えるものであり、 環境および社会的に観てより好まれるルートである。しかし、適切なやり方をもって取り扱いされねばならないリスクを含んでいる。
      ・ ESIAのプロセスにおけるニカラグア政府および関係者らによる示唆は、プロジェクトの進捗工程を洗練させる上で、又既述のリスクを 軽減させる上での一助となるにちがいない。
      ・ プロジェクトの推進者(HKND)は、ニカラグア国の持続可能な発展に向けて前進するために、又残されたままのインパクトを埋め合わせるために、 ニカラグア政府および関係者らと共に働くという責務を負っている。
      ・ 野生の生き物の保全、南東域にある熱帯湿潤林における棲息域の拡大、影響を被るコミュニティの生活条件の改善、先住民族の自決などに関する いろいろな約束事が、「ネット・ポジティブ・インパクト《(Impacto Positivo Neto)、即ち「プラス(正)のインパクトのみ《を作り出すことを通して 実現されることになる。



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