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中米ニカラグア運河のルート選定 (2014年7月7日)/ルート4
(太平洋側ブリット~ニカラグア湖~トゥーレ川~カリブ海側プンタ・ゴルダ)

[ニカラグア・マナグア]

1



ニカラグア政府は、2006年8月に、⌈ニカラグア大運河計画概要書⌋ (略称:GCIN) なるものを発表した。 同概要書は、ニカラグア政府によって組織された委員会が行なったニカラグア運河建設に関するいわばプレ・フィージビリティ調査 (実現可能性に関する事前調査、プレF/S調査、pre-feasibility study) の結果を取り纏めたものである。 建設に関する技術・工学、法律、環境、財務的分析などを扱っている。
⌈ニカラグア大運河計画概要書⌋ (略称:GCIN)/スペイン語公式サイト
同上の概要書/部分的和訳

同報告書では、最大25万重量トン級船舶の通航が想定され、6つの運河ルートが比較検討された。そして、最有望候補ルートとして、 いわゆるルート3、即ち太平洋側のリーバス地峡(太平洋に注ぐブリット川→ ニカラグア湖に注ぐラス・ラハス川)→ ニカラグア湖→  同湖東岸に注ぐオヤテ川→ エル・ラマ川上流部→ カリブ海に注ぐククラ川を結ぶ、総延長距離 286km (パナマ運河の3倍以上。 ニカラグア湖を通過する区間を含む) を推奨してきた。

その後、ニカラグア政府ダニエル・オルテガ大統領は、2013年6月14日に、香港系企業の⌈香港ニカラグア運河開発投資会社⌋ (HK Nicaragua Canal Development Investment Co. Limited; 略称HKND Group) の Chairman Wang Jing 会長との間で、運河建設プロジェクトおよびその他のサブプロジェクト (⌈ニカラグア運河&開発プロジェクト⌋と称される) に関する計画立案・設計・資金調達・建設・オペレーション・維持管理などの事業権 (コンセッション) を取り決めた排他的商業協定 を締結した。 事業権の付与期間は50年間であり、その後50年間延長も可能とされ、最大100年間である。ニカラグア議会は、調印の前日(2013年6月13日)に、 同協定の締結について承認したという。




2014年7月7日、HKNDワークショップが首都マナグアで開催され、⌈ニカラグア大運河総合開発プロジェクト に関する設計計画報告書⌋:(西語: Informe de Plan de Diseño, Proyecto de Desarrollo Integral del Gran Canal de Nicaragua」、⌈ニカラグア大運河、2014年7月、HKND & ERM⌋ ( 西語: Gran Canal de Nicaragua, Julio de 2014, HKND Group/ERM) などが公表された。以下は、同報告書の運河構想部分のうちの 重要ポイントである。
* ERM: Environmental Resources Management.

    先の概要書(GCIN)において6つの候補ルートが選定されていたが、今回HKNDはそのうちのルート4を選定した。その選定理由は、 ルート3については水資源の観点や投資額が少なくて済むことなどの観点からルート4よりも優位ではあるが、環境・社会的インパクト への配慮からルート4としたもの。
    ルート4は、太平洋側のリーバス地峡→ ニカラグア湖→ 同湖東岸テューレ川→ カリブ海に注ぐプンタ・ゴルダ川である。 総延長距離は278km(ニカラグア湖を通過する区間の105kmを含む)。

    運河の計画幅員は230~520m(船舶待避用の側湾部は幅員520m)、計画水深は27.6m~30mである。25,000TEU積載コンテナ船、 40万トンのばら積み船、32万トンの石油タンカーの通航を可能とする。年間通航可能量は、5,100隻を計画する。船舶の運河通過の 所要時間は、30時間を予定する。

    運河には2つの閘門が建設される計画である。太平洋側では、ブリット閘門(la esclusa Brito)(リーバス県内の村落リオ・ グランデ近くに建設される)。カリブ海側では、カルニロ閘門(la esclusa Carnilo)(カーニョ・エロイサ(Caño Eloisa) およびリオ・プンタ・ゴルダの合流地点近くに建設予定)。

    閘門は一つのレーンからなり、船は3つの連続した閘室(3 escaleras continuas)、即ち3つの連続した水の階段を昇ることになる。 閘門での水消費量 (閘門操作に伴う排水量) を減じるため、各閘室につき3つの節水槽(3 estanques de ahorro de agua para cada escalera) が設けられる。

    カリブ海に注ぐプンタ・ゴルダ川を堰き止めて、パナマ運河のガトゥン湖と同じような人工湖(湖水面積は395平方km。約20×20㎞の広さ。 アトランタ湖と称される)を造り、運河のオペレーションにその水を利用する。その水量はオペレーションに十分である。 人工湖の水位はニカラグア湖とそれと同じに維持される。運河のオペレーションによってニカラグア湖の水位に実質的な変位をもたらす ことはない。また、ニカラグア湖流域の住民らの生産活動、家庭への水供給においても影響をもたらさすことはない。




2
1=両洋間運河ルート図、アトランタ人工貯水湖、その他空港、港湾、自由貿易区、観光コンプレックスなどの主要サブプロジェクトを示す。
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3=閘門(水の階段)は、3つの連続した閘室(チャンバー)、および閘門での水消費量 (閘門操作に伴う排水量) を減じるため、 各閘室につき3つの節水槽からなる。
4
4=従来からの6つの候補ルートと自然保護区などとの位置関係を示す。
* 画像の出典:1=下記参考資料の(1)の⌈ラ・プレンサ⌋ネット記事。2~4=(2)の付属資料



[参考資料]
(1) ニカラグアの新聞社⌈La Prensa⌋のネット記事、 ⌈HKND presenta ruta del Gran Canal de Nicaragua⌋, 7 julio, 2014.
執筆者 Leonor Álvarez.
http://www.laprensa.com.ni/2014/07/07/ambito/202195-hknd-presenta-ruta-gran

(2) ⌈Confidencial⌋社のネット記事、 ⌈Aunque aún no tienen estudios de viabilidad técnica, económica o ambiental Gobierno da OK a ruta del Canal⌋, 7/7/2014.
執筆者 Wilfredo Miranda Aburto、
http://www.confidencial.com.ni/articula/18340/hknd-le-da-ok-a-ruta-del-canal

[2014.8.1 初記]


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