神戸のJR元町駅を六甲山側に降りる。「鯉川筋」(Koikawasuji Ave.) という、JR東海道線と直角に交差する通りが
六甲山麓へとのびる。緩やかな登り坂である。駅から数百メートルも上らないうちに、画像に写る鯉に出会う。
歩道の真ん中に数匹の鯉が敷石にはめ込まれている。鯉川の改修を記念したものである(平成5年度竣工という)。
鯉川筋と命名される通りを川に見立てれば、鯉が勢いよく遡上するごとくである。
1、2本の国道を横切りながら鯉川筋に沿ってまっすぐ上る。15~20分ほど上ると、 T 字路に行き着く。その正面にひときわ大きな
建物が立つ。建設された1928年以来何度も改称され今日にいたる⌈旧神戸移住センター⌋の館である(1928年国立移民収容所
として創建された; 現在は「神戸市立海外移住と文化の交流センター」と称される)。
全国から集まった移住者は、南米ブラジルなどへの船出に先立って、出航前1週間から10日間ほど、日本での最後の生活をここで過ごした。
現地生活事情の講義や語学研修、身体検査などを受け、出国の諸手続きを行なった。そして、未知の異国へ向かう期待と不安を胸に、
移住者は自身の手荷物をもって、通称「移民坂」と称される坂道を下って行った。それが鯉川筋である。
異国への旅立ちは、まずこのセンターから移民船が停泊する神戸港の波止場へ向けて歩くことから始まった。
鯉川筋を下り行く移住者らは、時に移住センターを振り返ったであろう。振り返れば六甲山の山並み、神戸の街並みが
次第に遠ざかって行く。そして、下り切ったところにあるメリケン波止場手前で東に折れて、移民船の待つ第3・4突堤へと向かった。
既に移住者一人一人の人生ドラマが始っている。
[画像撮影 2016.5.28 通称・移民坂と呼ばれた鯉川筋にて][拡大画像: x27199.jpg]