海洋総合辞典 Comprehensive Ocean Dictionary, 特選フォト・ギャラリーPhoto Gallery, 木造2本マストの韓船Korean wooden 2-masted ship, 国立海洋文化財研究所National Research Institute of Maritime Cultural Heritage, 国立海洋博物館National Maritime Museum, 木浦Mokpo, 韓国Korea

一枚の特選フォト⌈海 & 船⌋


One Selected Photo "Oceans & Ships"

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二本マストの木造韓船

韓国・南西部の全羅南道にある漁港町・木浦 (Mokpo・モッポ)。そこに文化財庁所属の有名な国立海洋文化財研究所 (National Research Institute of Maritime Cultural Heritage) がある。研究所には国立海洋博物館 (National Maritime Museum)が併設されている。

画像の船は、その博物館の地先海面に展示されている、復元された木造の韓船である。博物館には、この船とほぼ同型あるいは 類似すると思われる船の模型が数多く展示されている。それらの模型船にまつわる史実や技術仕様などについては、 いずれも韓国語(プラス簡略な英語)表記であったり、時に説明書きがなかったりである。

この木造韓船の説明書きにはついにお目にかかれなかったが、外観から捉えられるこの韓船の特徴としては、

    (1) 船の全長と同じくらい長いマストを2本もつ。
    (2) 船首の形状としては、鋭角に尖った水切りではなく、現代の強襲揚陸艦のように平面的で、少し丸みを帯びている。
    (3) 船首甲板に木製の大きな錨と、それを揚げ降ろしする横胴型車地(キャプスタン、巻き揚げ装置)をもつ。横胴の両端には いくつかの回転棒をそなえる。
    (4) 船尾には木製の大きな中央舵が据え付けられ、その舵軸が甲板上に長く突き出ている。
    (5) 右舷側上縁に沿って幅1mほどの張り出し部をもつ。左舷も同じと推測される。この張り出し部は、船乗りが帆を操作したり、 櫂を漕ぐなどのために利用されるのであろう。
[2011.09.27 木浦・国立海洋博物館 (National Maritime Museum) にて][拡大画像: x24350.jpg]

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1. 別の方角から撮った「二本マストの木造韓船」。船尾の中央舵の様子が分かる。 [拡大画像: x24407.jpg]
2. 海洋博物館正面玄関前の広場に展示される巨大な木製錨 (エビ・トロール船用に復元された もの)。 [拡大画像: x24406.jpg]

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3. 朝鮮通信使船 (Chosontongsinsason/Diplomatic Ship, 1607年~1811年: 全長33.58m、幅9.52m、高さ5.15m、縮尺1/10)。 上甲板に通信正使などの高貴な人々用の船室らしき館をそなえている。 [拡大画像: x24408.jpg]
4. 「漕運船」(Cago Ship (reduced model) Joseon Dynasty, SC.: 1/25) と記される。「漕運船」とは英語表記からして貨物運搬船 のことであろう。 説明書きは韓国語表記のため詳細不詳。「二本マストの木造韓船」とほぼ同形と見受けられる。 [拡大画像: x24409.jpg][拡大画像: x24410.jpg: 説明書き]

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5. マストが一本であること以外は、「二本マストの木造韓船」に類似している。 [拡大画像: x24422.jpg]

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[雑記帳] 国立海洋文化財研究所&国立海洋博物館について
全羅南道の光州から南西方向へ70kmほどの距離にある木浦。研究所には国立海洋博物館 (National Maritime Museum) が併設されている。

研究所の主な活動は、水中文化遺産の発掘・保存・展示・教育である。過去の古い沈没船、伝統的な韓船の復原、海洋 文化遺産の収集・保存、海洋交流史や民族学的研究とともに、海に隠された文化遺産の再発見よって韓国の海洋の歴史・文化を 再評価するなどの研究活動を行っている。

    ○ 第1展示室: 高麗時代の青磁宝船である「莞島船」が引き揚げられ、その部材や高麗青磁、航海用具、船上生活品などが展示される。 高麗青磁の大部分は康津、扶安、海南などで生産されたもので、海路を通じて地方と開京に運送する際に沈没したものである。
    ○ 第2展示室: 中国の商業貿易交易船の「新安船」は、1323年に中国から日本への航海途中新安沖で難破したものである。 船には中国の多様な工芸品、高麗の青磁、日本の陶器、東南アジアの香辛料、薬剤など積載されていた。沈船の船底・船側の部材も 展示されている。
    ○ 第3展示室: 各種の伝統的な沿岸漁具、豊漁祭りなどの漁村民族学的な資料、1814年著の海洋水産生物辞典などが展示される。
    ○ 第4展示室: 先史時代から近代までの韓国の船舶史を紹介する。古代船形土器、高麗から朝鮮時代、近代にいたるまでの 韓国の伝統船の模型などが展示されている。
* 辞典内関連サイト: 世界の海洋博物館-韓国


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