漁業技術の画像集・FishTech
著作者/水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘
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第 5 部 15 オマーンの漁業 [ 1 ][ 2 ][ 3 ] Oman (Sultanate of Oman) 政府は水産研究所(Muscat旧市内の近くのSidabにある)に政府職員の再教育機関 を解説する意向を持ち、日本に協力を求めてきた。この計画を検討するためには、魚の消費法を含めた漁業の実態 ―どのような魚がどのような船と漁法によって漁獲され、どのような形で消費されるか―を知らなければならない。 その基礎資料を収集するために、1992年4月から6月にかけて60日間滞在した。以下はその際に撮影した写真である。 Oman01からOman08までは、対象の範囲をやや広げ撮影した写真を、ほぼ地域別に整理したものである。 Oman09では、Sultan Qaboos大学の水産部門と水産研究所の写真を参考として示した。 また、各漁村の位置と地勢概況を示すために、Sir Donald Hawley著のOman & its Renaissance(Stacey International London and New Jersey発行)に掲載されている地図を参考資料として付加えた。 同書(159-160p)によればOmanでは船は次のように定義されている。 船舶(一般)Boat (general).....khashab 機関付きの船舶 Boat with engine.....launch 直立船首・角型船尾の船(ポルトガル語のjalbutaに由来する)Boat with upright stem and transom stern. The word probably derives from the Portuguese jalbuta (cf. Jolly boat 船舶に備え付けた小雑用艇) .....jalbut 船首尾ともとがった大型船 Larger boat with beak, prow and sharp stern.....bum (beakとは衝角、prowとは 船首のこと) 真珠採集船 Pearling boat.....sambuk 船尾甲板が高い小舟(釘止めする代わりに一部は縫い合わされた) Small high-pooped boat (partly sewn together instead of nailed).....badan サンブークに似た型の小型漁船 Small fishing boat similar in shape to sambuk.....sh'iy 小型の丸木舟(手漕ぎの小舟) Small dug-out or dinghy.....huri フエリー Ferry.....abra 軽い平底の舟 “Pram”.....shahuf ヤシの葉で作った船(バティナ海岸で見られる。バティナ地方とはMuscatから北の地方) Palm-frond boat, found on Batina Coast.....shasha
漁獲物の消費は 漁法は刺網が最も目立つ。一本釣は当然見られるが、その他にも曳縄・延縄・投網・地曳網・かごのような小規模 のものがある。しかし、4のための外国船(韓国)によるトロールの他には、底曳網類は見られない。小型表層魚類 の干物は各地で見られるが、巻き網類は見られなかった。
このCDには次のファイルが入っている: No.101−No.130 Mutrah港 (地図3右端近く) に向かって左にある魚市場
No.101 No.101 No.101 入り口は左、海は右。 手前の漁船に関する説明はNo.126からNo.130にある。 この型の漁船(FRP製の和船型、 船外機付き)が最も普通に見られる。
No.102
No.103
No.104
No.105
No.106
No.107
No.108
No.109
No.110
No.111
No.112
No.113
No.114
No.115
No.116
No.117
No.118
No.119
No.120 No.102−No.120 魚は高さ約1mのタイル張りの台に並べられ、売り手はその台の上に座る。買い手は回教国の特徴 として大部分は男性である。しかし、No.112では女性が見られる。 ほとんどの売り手は白い民族衣装を着ていない。マグロ類・カツオ・キングフィッシ等比較的大型の表層魚が多い。 店ごとに 多少専門化している。同じ店でも魚は種類と大きさで分けられている。No.116とNo.119には秤が見られるが、 切り身の専門店でも秤は見られない。No.102に見られるように、台上の白い四角の柱には水栓がある(地方の魚 市場ではこのような設備は見られない)。魚には水を打ってあるが、氷はほとんど使われない。 No.105 少量の磯魚類が見られる。 No.107 磯魚類とカレイが見られる。 No.110 粗製塩をまぶした切り身 No.111 乾物 No.112−No.113 大型のカジキ・マグロ類の専門店 ここで切り身にすることもあれば、 No.114―No.115 でも切り身にされる。 No.114−No.115 市場の海側にある処理場。残滓は画面左にある大きなカンにまとめられる。 No..116 磯魚類の専門店で、エビとイカが見られる。(他の市場ではごく稀にイカが見られるが、それ以外の 無脊椎動物は見られない)。
No.121
No.122
No.123
No.124
No.125 No.121−No.125 魚市場の外側の屋根の蔭では、魚を地面に置いて売っている。
No.126
No.127
No.128
No.129
No.130 No.126−No.130 市場に隣接する船溜り 刺網一杯に刺さったイワシ類、魚が網に刺さったまま船溜りまで もって帰る。魚はそこで網から外されるが、その作業には女性たちは加わらない。 網から魚を外す作業には子供は見られないが、船の掃除には見られる。
No.130 No.130 刺網の錨には大きな石が使われる。石は古い綱で結ばれ、底にかかったとき には切れるようになっている。
No.131
No.132
No.133
No.131−No.133 魚市場に隣接する野菜市場
No.201 No.201 水産研究所の玄関 回教国では一般に絵は見られないが、ここでは玄関先の壁面に見られる。 斜面にあり、ここから入る部分は地階の感じで、主な事務室・研究室はその上の階にある。
No.202
No.203
No.204
No.205
No.206
No.207
No.208
No.209
No.210
No.211
No.212 No.202−No.212 Sidab の漁村 No.202 漁船の大部分は船外機の付いた和船型のFRP製である。数隻の huri(写真では黒い小舟)が見られる。 No.203 刺網 網丈は高い。茶色の小さい舟の型をしたものは、ヤシの葉で編んだイケス 漁獲物の 大部分は大型の表層魚で、このようなイケスでは活かしておけないだろうが、氷を使わない場合、船上に引上げて シートで被うよりは鮮度を保ちやすいと考えられる。 No.204 マストは夜間に灯火をつけるため(詳細はOman04のNo.406) No.205 刺網 浮子には発泡スチロールのままのもの(網の袋等で被っていない)と合成品とがある。 化学繊維は一般に紫外線に弱いが、ここ以外では蔭に置くように配慮されているのは少ない。波打ち際は赤く、 魚の血液とも考えられるが、それにしては広がりすぎている。きれいな海でも赤潮の可能性は捨てきれない。 No.206 舟の上にあるのはイケス No.207 ヤシの葉で編んだイケスには丸いものもある。 No.208 イケス・浮子・huri(丸木舟)・舟を引上げるための手動のキャプスン No.209 huri 油を塗ってあり、稼動している。 作業用の小屋 No.210 緑色の網は刺網、 網糸は太く、目合いは大きい。 白い網は投網 No.211−No.212 自家消費のために獲れた魚を煮ている。
No.213
No.214 No.213−No.214 Muscatの舟溜り
No.215
No.216
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No.218
No.219
No.220
No.221
No.222
No.223
No.224
No.225
No.226 No.215−No.226 Quriyat の舟溜り 漁法は大部分刺網であるが、延縄と投網も見られる。 No.217 huriは手入れが行き届いている。 No.218 漁獲物の氷蔵庫(電気がない)(政府が普及させた) No.219 huriはまだ稼動している。 No.220 刺網 浮子は発泡スチロール、沈子は石 No.221 刺網の漁獲物 コザで包んで鮮度を保つ。No.219の老人は写真をいやがっていたが、この老人は そうでなかった。 No.222 No.221と同じ漁船 石は魚をおどして、網に刺させるため No.223 延縄(500%に拡大すると、右手で釣針を握っているのが分かる) No.224 投網とその漁獲物 No.225 投網漁師 右手ではマグロ類の切り身を持っている。投網でマグロが獲れると考えられない。 マグロは買ったか、交換したか、一本釣を併用して漁獲したと考えられる。
No.227
No.228
No.229
No.230
No.231
No.232
No.233
No.234
No.235 No.227−No.235 Quriyat の南の漁村 No.227 作業用の仮設小屋と数隻の漁船が見られる。 No.228 大部分の漁船は船外機を付けた和船型のFRP船である。少数のhuri見られる。 No.229 huri 油を塗って手入れが行き届いていて、稼動している。 No.230 アルミニューム船 (アルミニューム船はOman03のNo.330以外では見られなかった。)左上の黒いものは Oman03のNo.303とNo.304で説明する。 No.231 陸路が不便なところなので、漁獲物は干物に加工される。刺網の目は荒い。政府が普及させた氷蔵庫 (電気がないので電気冷蔵庫は使えない)は放置されている。 No.232 小屋の影になる竿に刺網と投網が干してある。 No.233 刺網 網糸は太く目合いは大きい。 No.234 作業小屋 中には刺網が見られる。 No.235 刺網(網丈は高い)とhuri
No.236
No.236 Muscatのカツオ漁師 浜でヒレ・内臓・鰓蓋を切捨てていた。処理法は日本における方法と異なる。
波打ち際が赤いのは血液と考えられない。
No.301
No.302
No.303
No.304 No.301 Oman02のNo.235と同じ No.302 刺網 網丈が高く、浮子は少ない。 No.303−No.304 サメ延縄 黒い大きな浮球と四つ目イカリで止められる。釣針の近くはチェーンになっている (No.304の画面中央付近で、300%以上に拡大すると分かりやすい)。枝縄の構造はOman05のNo.533に見らる。
No.305
No.306
No.307
No.308
No.309
No.310
No.311
No.312
No.313
No.314
No.315
No.316
No.317
No.318
No.319
No.320 No.305−No.320 Seeb の魚市場 No.305 魚市場 ここでも高さ約1mのタイル張りの台の上に魚を並べ、売り手も台の上に座っている。 魚を洗う水道はない。 No.306 魚の輸送用トラック小型のトラックにFRP製の氷蔵庫を乗せただけである。これで近距離ばかりでなく、 アラブ首長国連合まで漁獲物を運ぶ。この氷蔵庫に入らないような大きなマグロは外に下げたままで運ばれる。 Oman07のNo.733は輸送中のトラック No.308 ここの市場の各売り場には水道の設備がない。 No.309 大型の魚は切り身で売られる。 No.310−No.312 市場の外でも魚が売られる。それぞれやや専門店化されている。 No.310 市場と波打ち際の間で地面にシートを敷いて魚を売る。 No.311−No.312 これらの店はマグロ類とキングフィッシだけ。売り手は蔭に入っているが、魚は直射日光に曝され、 水や氷を打っていない。扱っている魚はNo.310の店と違う。魚種と大きさで分けてある。魚の頭を買い手の方に 向けてある。他の市場でも魚を縦に並べて売るが、方向は一定していない。 No.313−No.319 加工品 これらの加工品があるので、魚を鮮魚以外の型で食べる習慣があるとみなせる。 No.313 マグロの切り身に荒塩をまぶしている。(これは塩蔵品とみなせない) No.314 サメ肉の塩水漬け No.316−No.319 小魚の乾物(品質によってバラ売りと袋詰がある) No.320 市場に隣接する野菜市場
No.321
No.322
No.323
No.324
No.325
No.326 No.321−No.326 Barka の魚市場
No.327
No.328
No.329
No.330
No.331 No.327 huriは手入れが行き届いている。地面には刺網が広げられている。 No.328 刺網の仕立て 網針は普通の型、(Oman04のNo.404では簡単な網針を使っている)、網地は浮子縄に 直接着けられる。浮子は浮子縄に通さない。沈子はセメント製の円板 No.329―No.331 金網で作ったかご かごは大きい。枠のように見える部分は金網を束ねただけで、他の太い 針金を入れていない。かごには種々の型がある。FRP船の上には刺網が乗せてある。No.330ではアルミニューム船が 見られる。
No.332
No.333
No.334
No.335
No.336 No.332―No.334 Masnasの漁村 漁船はFRP製であるが、ここでは船型が違う 角型船尾のhuriも見られる。 (和船の型の船はほとんど見られない) 刺網は主な漁法の1つである。網丈が高く、ネットホーラが使われて もよいと考えられるがこれまでは見られなかった。この船では手製の滑車が見られる。 No.335 金網製のかご
No.336 小魚の干物(原料の魚の品質は悪い) No.316―No.319で見られた干物は人間の食用であるが、
これらはニワトリを含む家畜の飼料用であると考えられる。 |